【調査分析】北海道のM&A・事業承継の市場動向について徹底解説!

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会社を次の世代へバトンタッチする際、後継者不在に頭を悩ませている経営者は少なくないでしょう。特に、北海道では後継者不在率が全国で4番目に高く、喫緊の課題となっています。多くの経営者が「事業を守り、さらに発展させたい」と願っていますが、一方で「後継者がいない」「適切な引き継ぎ方法がわからない」といった不安を抱えているのが実情ではないでしょうか。

この記事では、M&Aという選択肢に焦点を当て、北海道の企業の実情に即した形で、課題解決のヒントをご提供します。

この記事では、そうした疑問や不安にもお答えしながら、北海道におけるM&Aの現状と、取り組み方のポイントを丁寧に解説していきます。

北海道のM&A・事業承継の状況

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地域・業種別の特徴

北海道の後継者不足の状況は深刻です。中小企業庁の調査によると、北海道の後継者不在率は66.5%に上り、全国平均の53.9%を大きく上回っています。実に3社に2社が後継者問題を抱えていることになります。業種別で見ると、建設業や運輸業で後継者問題が顕著であり、地域的には道東や道北での課題が目立ちます。

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建設業界では、職人の高齢化と若手の入職率の低下が問題となっています。技術の伝承が難しくなっており、廃業を選択せざるを得ないケースも出てきています。運輸業界でも、ドライバー不足が深刻化する中、後継者問題に直面する企業が増えています。地域的には、人口減少や若者の都市部流出が進む道東・道北で、後継者不在率が特に高くなっています。

「株式会社帝国データバンク」「特別企画:全国「後継者不在率」動向調査(2023 年) 」https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p231108.pdf(2024年3月28日閲覧)

M&Aなど、後継者問題解消に向けた取り組み

ただし、後継者の育成が上手くいかずに頓挫するケースも散見されます。後継者教育に時間をかけず、急ピッチで権限委譲を進めたことで、経営が立ち行かなくなる例もあります。事業を円滑に引き継ぐためには、後継者の着実な育成が欠かせません。特に北海道では、深刻な後継者不足を踏まえ、M&Aの選択肢も視野に入れつつ、計画的に後継者を育てていく必要があるでしょう。

事業承継は一朝一夕には進みません。早めの問題意識を持ち、腰を据えて取り組むことが何より重要です。北海道の経営者には、自社の状況を冷静に見つめ直し、事業承継の選択肢を広げる柔軟な姿勢が求められています。

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北海道の休廃業・解散の動向

後継者問題が深刻化する中、北海道では休廃業・解散件数も高止まりしています。2023年の北海道における企業の休廃業・解散件数は2,252件で、前年比5.9%増加しました。2年連続で前年を上回る結果となり、休廃業・解散のペースが加速していることがわかります。

興味深いのは、休廃業企業の52.4%が黒字だったという点です。一般的に、「休廃業=経営不振」というイメージがありますが、実際には黒字企業の休廃業も多いのです。ただし、この割合は2016年以降で2番目に低い水準でした。黒字でも休廃業に追い込まれるケースが増えているのは、後継者問題が大きく影響していると考えられます。

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休廃業時の経営者の平均年齢は71.3歳で、4年連続で上昇しています。高齢の経営者ほど事業承継の準備が進んでいない傾向があり、「わが社には後継者がいない」と悩む経営者が多いのが実情です。円滑な事業承継ができないまま、高齢化に伴う休廃業に追い込まれるケースが目立ちます。

業界別では、小売業の休廃業が前年比18.7%増と最も増加率が高く、製造業は26.4%減少しました。小売業は、人手不足や後継者問題に加え、EC化の進展やコロナ禍による消費行動の変化など、事業環境の変化に直面しています。一方、製造業は事業承継の取り組みが比較的進んでおり、休廃業件数は減少傾向にあります。

全国47都道府県の中で、北海道の休廃業件数は6番目に多い状況です。道内の休廃業・解散の背景には、物価高や人手不足などの経営環境の変化があります。原材料費の高騰や販売不振などから、「あきらめ廃業」に追い込まれたケースが目立ちます。「あきらめ廃業」とは、事業継続の意欲があっても、経営環境の悪化により休廃業を余儀なくされることを指します。

廃業のメリット・デメリットとは?経営者が取るべきアクションとは

「株式会社帝国データバンク」「道内企業「休廃業・解散」動向調査(2023 年)」https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/s240201_01.pdf(2024年3月28日閲覧)

北海道の人手不足状況

北海道の正社員の人手不足企業の割合は58.5%に上ります。運輸・倉庫業では約6割の企業が人手不足に直面しており、「2024年問題」への懸念が強まっています。

「2024年問題」とは、いわゆる「団塊の世代」の大量退職が見込まれる2024年前後に、人手不足がさらに加速するのではないかという懸念です。熟練技術者の引退により、技術継承が困難になることも予想されます。特に、労働力の高齢化が進む北海道では、「2024年問題」への対応が喫緊の課題となっています。

「株式会社帝国データバンク」「人手不足に対する道内企業の動向調査(2023 年 10 月) 」https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/s231101_01.pdf(2024年3月28日閲覧)

北海道でのM&A成約事例5選

以下は、北海道で起きたM&A事例5選を紹介いたします。

1. ツルハホールディングスによるハーティウォンツの買収

2013年11月、北海道を拠点とするドラッグストア業界大手「ツルハホールディングス」は、広島県に本社を置く調剤薬局運営会社「ハーティウォンツ」を買収しました。

この買収は、ツルハが医薬品販売の強化を目的に行ったもので、ハーティウォンツが持つ高い顧客基盤と調剤事業のノウハウを取り込むことで、調剤薬局事業を拡大し、全国展開を加速させました。ツルハは、この買収によりマツモトキヨシホールディングスやサンドラッグに続き、業界3位の地位を確立しました。

参照元:https://www.nikkei.com/article/DGXNASDD210OW_R21C13A1TJ2000/

2. アークスによるユニバースの買収

2011年6月、北海道の食品スーパー大手「アークス」は、青森県を拠点とする同業の食品スーパー「ユニバース」を買収し、完全子会社化しました。

アークスは、北海道と青森県を中心に事業を展開しており、ユニバースの買収により、両社の売上高は合計で4000億円を超え、国内の食品スーパー業界において上位2位の規模に拡大しました。このM&Aは、地域に根付いた営業スタイルを活かしつつ、規模のメリットを最大限に活用することで、仕入れコストの削減や物流の効率化を目指しました。

参照元:https://www.nikkei.com/article/DGXNASDD290GZ_Z20C11A6TJ1000/

3. ホーマックによるカーマ、ダイキとの経営統合

2005年、ホームセンター業界の再編が進む中、北海道を拠点とする「ホーマック」は、愛知県を拠点とする「カーマ」と「ダイキ」と経営統合を実施しました。

この統合により、3社の売上高は業界最大手の規模に達し、全国的な展開力を強化しました。ホーマックは、北海道を基盤としながら、全国に展開する店舗ネットワークを強化し、仕入れや物流の効率化を図りました。

この統合は、業界全体の競争力向上に寄与し、ホームセンター市場での影響力を高めました。

参照元:https://www.dcm-hldgs.co.jp/grp/pdf/grp/about/history/20050711.pdf

4. ニッポンレンタカー北海道の買収

2020年、ニッポンレンタカーサービス(東京都)は、「ニッポンレンタカー北海道」を買収しました。ニッポンレンタカー北海道は、北海道全域でレンタカー事業を展開しており、観光需要の高まりを受けて、買収後も観光業界との連携を強化しています。

このM&Aにより、同社は北海道での事業基盤を強化し、観光客向けサービスの充実を図りました。また、インバウンド需要にも対応するため、多言語対応のシステムを導入し、外国人観光客にも対応できる体制を整えています。

参照元:https://www.nikkei.com/compass/company/aco8guJtBpLyRQcwYpnmxj

5. メディカルシステムネットワークによるアポテックの買収

2020年、札幌市に本社を置く「メディカルシステムネットワーク」は、青森県の調剤薬局「アポテック」を買収しました。

メディカルシステムネットワークは、全国に調剤薬局ネットワークを広げており、この買収によって東北エリアでのシェアを拡大しました。アポテックの買収により、既存の店舗ネットワークを強化し、薬局事業の統合と効率化を進めることで、収益の最大化を図りました。

参照元:https://www.cb-p.co.jp/info/1759/

北海道でのM&A・事業承継の進め方

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ここからは、中小企業庁の事業承継ガイドライン第3版を参考に、事業承継の進め方を解説していきます。事業承継には、親族内承継、役員・従業員承継、M&Aなど、様々な方法があります。自社の状況に合った承継方法を選択することが重要ですが、どのような手順で進めればよいのでしょうか。

ステップ1:事業承継に向けた準備の必要性の認識

事業承継の準備は、早めに始めることが重要です。中小企業庁は、「概ね60歳に達した頃には事業承継の準備に取りかかることが望ましい」と提言しています。60歳を目前に控えた経営者は、今すぐにでも事業承継に向けた行動を起こすべきでしょう。

事業承継は、一朝一夕には進みません。後継者の育成には最低でも5年、M&Aの準備にも数年の時間がかかるのが一般的です。早めの問題意識を持つことで、余裕を持って事業承継に取り組むことができます。特に、北海道のように後継者不在率が高い地域では、より計画的な準備が求められます。

もし60歳を超えている場合は、すぐにでも身近な支援機関に相談し、準備に着手すべきでしょう。商工会議所や金融機関など、事業承継をサポートする機関は各地にあります。「うちはまだ先の話」と先延ばしにせず、一歩踏み出すことが重要です。

事業承継は、経営者の人生の集大成とも言えます。「会社を次世代につなぐ」という強い意志を持つことが、円滑な承継の第一歩となるでしょう。

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ステップ2:経営状況・経営課題等の把握(見える化)

事業承継を円滑に進めるためには、会社の経営状況や経営資源、知的資産等を正確に把握し、「見える化」することが重要です。自社の実力を客観的に把握することで、承継に向けた課題が明確になります。

経営状況の見える化では、財務諸表の分析が欠かせません。売上高、利益率、キャッシュフローなどの推移を把握し、自社の強みと弱みを洗い出します。また、自社の商品・サービスの競争力や、顧客基盤の状況なども整理しましょう。自社の「稼ぐ力」を可視化することが、承継先の選定にも役立ちます。

事業承継課題の見える化では、後継者候補の有無、親族内株主や取引先等の理解、将来の相続発生も見据えた準備状況等、事業承継上の課題を明確にしておくことが求められます。特に、後継者候補の有無は、事業承継の方向性を大きく左右します。社内に後継者候補がいる場合は、育成計画を立てることが急務です。一方、後継者不在の場合は、M&Aや廃業も視野に入れた検討が必要でしょう。

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事業承継は、経営者個人の問題ではありません。親族内株主や取引先など、ステークホルダーの理解と協力が不可欠です。早い段階から関係者に事業承継の方針を伝え、理解を得ておくことが円滑な承継につながります。将来の相続発生も見据え、株式の集約や遺言の作成など、法的な準備も怠りなく進めましょう。

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自社の強みと弱みを客観的に認識することが、事業承継の成功の鍵を握ります。「見える化」によって浮かび上がった課題を一つひとつ解決していくことで、承継への道筋が見えてくるはずです。

ステップ3:事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)

事業承継を控えた企業には、本業の競争力強化、経営体制の総点検、財務経営力の強化等により、より良い状態で後継者に引き継げるよう経営改善に取り組むことが欠かせません。承継までの限られた時間を有効に活用し、「磨き上げ」を行うことが重要です。

本業の競争力強化では、自社の商品・サービスの差別化、新規事業の立ち上げ、生産性の向上などに取り組みます。後継者が安定的な収益基盤を引き継げるよう、本業の筋肉質化を図ることが目的です。また、事業承継を機に、不採算事業の整理や業務の効率化にメスを入れることも検討しましょう。

経営体制の総点検では、組織体制や社内規程の見直し、人事制度の再構築などを行います。後継者が円滑に経営を引き継げるよう、組織基盤を整備することが狙いです。特に、北海道のように人手不足感が強い地域では、従業員の定着率向上に向けた取り組みが欠かせません。

財務経営力の強化では、資金繰りの安定化、設備投資の実行、借入金の圧縮などに取り組みます。引き継ぐ資産と負債のバランスを整え、後継者が経営の舵取りに集中できる環境を整備することが目的です。過剰債務等の課題がある場合は、早めに金融機関と相談し、事業再生に着手することも必要でしょう。

「磨き上げ」には時間がかかります。早めに着手し、一つひとつ課題を解決していくことが重要です。専門家の助言を得ながら、できることから着実に進めていきましょう。

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ステップ4:M&Aのプランニング実施

事業承継の選択肢としてM&Aを検討する場合、譲渡意思決定後は、仲介者選定、企業価値評価、マッチング、交渉等のプロセスを着実に進めていくことになります。M&Aは、多岐にわたる専門的な知識が求められる難易度の高い取引です。綿密なプランニングと実行が成否を分けると言っても過言ではありません。

仲介者の選定では、M&Aの実績や専門性、手数料体系などを総合的に評価します。自社の業界に精通し、譲渡条件のマッチングまで一貫してサポートしてくれる仲介者を見つけることが理想です。複数の仲介者に相談し、比較検討することをおすすめします。信頼できるパートナーを見つけることが、M&A成功の大前提となります。

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企業価値評価では、自社の資産価値や収益力を客観的に算定します。企業価値は、譲渡価格の基準となる重要な指標です。公正な評価を得るために、公認会計士や税理士など、専門家の助言を参考にすることが不可欠です。また、無形資産や将来の成長可能性なども適切に評価することで、より有利な条件を引き出すことができます。

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マッチングでは、自社の条件に合う譲渡先候補を探索します。仲介者のネットワークを活用しつつ、自社の業界動向や競合他社の動きなども分析します。譲渡先の経営方針や企業文化なども考慮に入れ、従業員の雇用や取引関係の継続など、譲渡後の事業運営もイメージしておくことが大切です。

交渉では、譲渡条件の細部を詰めていきます。価格はもちろん、譲渡時期や譲渡資産の範囲、表明保証事項など、多岐にわたる条件を取り決めます。専門家の助言を得ながら、自社の利益を最大化する条件を粘り強く交渉することが求められます。交渉の進捗に応じて、デューデリジェンス(資産査定)や契約書の作成など、法的手続きも並行して進めていきます。

M&Aは、スピード感を持って進めることが重要です。情報の機密性を保ちながら、関係者の理解と協力を得つつ、スケジュールを管理することが成功の鍵となります。プロセス全体を通して、専門家の助言を仰ぎながら、一つひとつ着実に進めていきましょう。

ステップ5:M&Aの実行

いよいよM&Aの実行段階です。譲渡契約の締結、資産移転や経営権移譲など、M&Aに関する一連の手続きを、士業専門家等の協力を得ながら進めていきます。細部に宿る不測のリスクを見落とさぬよう、慎重かつ迅速に手続きを進めることが求められます。

譲渡契約の締結では、事前の交渉で取り決めた譲渡条件を契約書に落とし込みます。契約書には、譲渡資産の範囲、譲渡価格、表明保証事項、債務の取扱いなど、取引の詳細を明記します。弁護士等の専門家に内容を精査してもらい、リーガルチェックを徹底することが重要です。

契約締結後は、いよいよ資産移転の実務に入ります。不動産や動産、知的財産権など、譲渡対象の資産を漏れなく移転します。債務の移転や従業員の承継手続きなども、関係各所と連携しながら進めていきます。手続きの完了には相応の時間を要するため、関係者への説明を丁寧に行い、理解と協力を得ることが欠かせません。

経営権の移譲では、株式の名義変更や役員の交代など、法的手続きを進めます。同時に、経営方針や組織体制の移行など、実質的な経営権の移譲も行います。譲渡先との連携を密にし、移行期間中の業務に支障が出ないよう配慮することが重要です。従業員への説明会の開催など、社内コミュニケーションにも十分に注力しましょう。

M&Aの実行では、スケジュール管理が鍵を握ります。関係者が多岐にわたるため、手続きの進捗管理を徹底し、遅延を防ぐことが重要です。また、情報管理の徹底も欠かせません。関係者外への情報漏洩を防ぎ、経営の安定性を保つことが求められます。

M&Aのゴールは、譲渡先への円滑な事業引継ぎです。事業の継続性を損なわぬよう、譲渡先との連携を密にし、一つひとつ課題を解決していくことが何より重要です。専門家の助言を仰ぎながら、トラブルを未然に防ぎ、スムーズなM&Aの完遂を目指しましょう。

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北海道でのM&A・事業承継に関する相談先まとめ

事業承継やM&Aは、専門的な知識が求められる難易度の高い取り組みです。専門家の助言を得ながら進めることが何より重要ですが、一体どこに相談すればよいのでしょうか。ここでは、北海道での事業承継・M&Aに関する相談先をご紹介します。

よろず支援拠点

様々な経営課題に関する相談に対応するワンストップ相談窓口として、北海道にも設置されています。事業承継やM&Aに関する基礎的な情報提供や、専門家の紹介などを行っています。気軽に相談できる身近な窓口として、活用することをおすすめします。初めての相談先として最適です。

経営安定特別相談室

商工会議所や北海道商工会連合会が設置し、士業等専門家が各種法的手続きに関するアドバイスを行っています。事業承継やM&Aに関する専門的な相談に応じており、必要に応じて専門家を紹介してくれます。地域の商工会議所に相談窓口があるため、アクセスしやすいのが特徴です。

事業承継・引継ぎ支援センター

M&Aや経営資源引継ぎの可能性を探るほか、これらが困難な場合には廃業についての相談対応を行っています。M&Aに関する専門的な助言やマッチング支援を行うほか、事業承継計画の策定支援なども行っています。札幌、函館、旭川、帯広、北見に拠点があり、道内各地の企業をサポートしています。

中小企業診断士

「中小企業支援法」に基づき、中小企業のホームドクターとして、様々な経営課題への対応や経営診断等に取り組んでいます。事業承継やM&Aに関する豊富な知見を持ち、経営改善から承継実行まで、一貫した支援を行ってくれます。地域の金融機関や商工会議所などを通じて紹介してもらうことができます。

税理士

顧問契約を通じて日常的に中小企業経営者との関わりが深く、決算支援等を通じ経営にも深く関与しています。事業承継やM&Aに関する税務面での助言を行うほか、財務デューデリジェンスや株価算定などの専門的な支援も行います。日頃から顧問税理士に相談することで、スムーズに事業承継を進められます。

金融機関

取引先企業の事業承継を金融面からサポートしています。M&Aに関する情報提供や、買収資金の融資等を行うことがあります。事業承継計画の策定や、M&A仲介会社の紹介など、様々な支援メニューを用意しているところも多いため、早めに相談するのがおすすめです。

M&A専門会社

M&Aの実務に特化した専門家集団です。案件のマッチングから交渉、締結まで一貫したサービスを提供しています。案件の規模や業種、譲渡条件等に応じて、最適な仲介会社を選ぶことが重要です。金融機関や士業等の専門家から紹介してもらうことをおすすめします。

M&A仲介会社とは?FAとの違いや選ぶ際のポイントなどを紹介

中小企業基盤整備機構

事業承継の支援体制構築に向けた助言や、支援機関向けの講習会を開催しています。北海道にも地方拠点があります。事業承継やM&Aに関する最新の情報を入手でき、専門家とのネットワーク構築にも役立ちます。セミナーへの参加等を通じて、支援機関の知見を得ることをおすすめします。

事業承継やM&Aは、オーナー企業にとって極めて重要な経営課題です。早めに専門家に相談し、適切な助言を得ることが成功の鍵となります。各機関の特徴を理解し、自社の状況に合った相談先を選ぶことが重要です。ワンストップ相談窓口から士業専門家まで、支援機関を上手に活用し、円滑な事業承継の実現を目指しましょう。

北海道のM&A仲介会社選びのポイント

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M&Aを実行する際、仲介会社の選定は極めて重要な意思決定となります。M&Aは、多岐にわたる専門的な知識と経験が求められる難易度の高い取引です。案件の成否は、仲介会社の力量に大きく左右されると言っても過言ではありません。それでは、数あるM&A仲介会社の中から、どのようにして自社に合ったパートナーを選べばよいのでしょうか。ここでは、北海道でM&A仲介会社を選ぶ際のポイントを解説します。

M&Aの成約実績が豊富か

M&A仲介会社の選定では、まず成約実績を確認することが重要です。豊富な成約実績は、仲介会社の専門性の高さを示す重要な指標となります。特に、自社と同規模、同業種のM&A実績があるかどうかを確認しましょう。同種案件の経験が豊富な仲介会社なら、業界特有の譲渡条件の設定や、マッチング先の選定など、案件の各フェーズで的確な助言を得られるはずです。

成約実績の確認には、仲介会社のホームページや企業パンフレットを活用するのが一般的です。ただし、守秘義務の関係で、公表されている案件情報は限定的なことが多いため、実績の詳細は直接問い合わせる必要があります。面談の際に、具体的な案件事例について説明を求めることをおすすめします。

自社の業界に精通しているか

M&Aは、業界ごとに譲渡条件や交渉の進め方が大きく異なります。自社の業界に精通した仲介会社を選ぶことで、スムーズな案件進行が期待できます。業界特有の商慣行や規制、市場動向などに通じた仲介会社なら、譲渡条件の設定や交渉戦略の立案などで、的確なアドバイスを得られるはずです。

仲介会社の業界専門性は、担当者の経歴や実績から判断することができます。自社の業界出身の担当者がいる仲介会社なら、業界事情に精通しているため、安心して案件を任せられるでしょう。面談の際は、担当者の業界知識を確認するため、自社の事業内容について質問してみるのも一案です。

M&Aの種類(買収、合併、事業譲渡など)に応じた専門性を持っているか

M&Aには、買収、合併、事業譲渡など、様々な取引形態があります。案件の種類によって、必要な専門知識やノウハウは大きく異なります。自社の目的に合ったM&Aの種類に、専門性を持つ仲介会社を選ぶことが重要です。

例えば、事業譲渡の場合は、譲渡資産の選定や評価、従業員の承継手続きなど、専門的な実務が発生します。事業譲渡の経験が豊富な仲介会社なら、実務面での的確なサポートが期待できます。一方、合併の場合は、両社の経営統合に向けた調整が重要なポイントとなります。PMIの経験が豊富な仲介会社を選ぶことで、統合プロセスを円滑に進められるでしょう。

成功報酬以外の手数料体系が明確か

M&A仲介会社の報酬体系は、成功報酬型が一般的です。案件が成約した場合にのみ、一定の報酬が発生する仕組みです。成功報酬の水準は、案件の規模や難易度によって異なりますが、おおむね数%から10%程度が相場と言われています。

ただし、成功報酬以外にも、様々な名目の手数料が発生するケースがあります。例えば、着手金、マッチング手数料、デューデリジェンス費用など、案件の進行に応じて徴収される手数料があります。これらの手数料体系が不明瞭な場合、想定外のコストが発生するリスクがあります。仲介会社選定の際は、成功報酬以外の手数料体系を明確に確認し、トータルコストを見積もることが重要です。

M&A仲介手数料はどれくらいかかる?費用の内訳相場や会計処理を解説

自社の規模や目的に合ったサービスを提供できるか

M&A仲介会社の中には、大企業向けの案件に特化したところもあれば、中小企業専門のところもあります。自社の規模や目的に合ったサービスを提供できる仲介会社を選ぶことが重要です。

例えば、中小企業のM&Aでは、スピード感を持った対応が求められます。大企業向けの仲介会社では、意思決定に時間がかかり、スケジュール管理がずれ込むリスクがあります。一方、中小企業専門の仲介会社なら、機動力を生かした柔軟な対応が期待できます。

また、自社の目的に合ったサービスメニューを提供できる仲介会社を選ぶことも重要です。例えば、事業承継を目的とするM&Aでは、譲渡後の経営サポートが重要なポイントとなります。経営支援サービスを提供する仲介会社を選ぶことで、円滑な事業引継ぎが期待できます。

仲介会社選びは、M&Aの成否を大きく左右する重要な意思決定です。自社の規模や業種、M&Aの目的等を踏まえ、最適なパートナーを見極めることが重要です。単に手数料の安さだけでなく、専門性や経験、サービス内容など、総合的な視点から仲介会社を評価することをおすすめします。信頼できる仲介会社を選ぶことで、円滑なM&Aの実現に大きく近づくはずです。

おわりに

北海道では、事業承継が差し迫った経営課題となっています。後継者不在に悩む経営者にとって、M&Aは有力な選択肢の一つです。一方で、M&Aのプロセスは複雑で専門的な知識が求められます。事業引継ぎ支援センターなどの公的機関や、士業専門家等の支援を上手に活用することが何より重要でしょう。

本記事で解説した通り、事業承継の各ステップを着実に進め、必要に応じて専門家の助言を仰ぎながら取り組むことで、円滑なM&Aの実現が期待できます。自社の将来ビジョンをしっかりと描き、早めに行動を起こすことが重要です。

▼監修者プロフィール

岩下 岳

岩下 岳(S&G株式会社 代表取締役) S&G株式会社

新卒で日立Gr.に入社。同社の海外拠点立上げ業務等に従事。
その後、東証一部上場のM&A仲介業界最大手の日本M&Aセンターへ入社ディールマネージャーとして、複数社のM&A(株式譲渡・事業譲渡・業務提携等)支援に関与。IT、製造業、人材、小売、エンタメ、建設、飲食、ホテル、物流、不動産、サービス業、アパレル、産業廃棄物処分業等、様々な業界・業種でM&Aの支援実績を有する。現在はS&G代表として、M&Aアドバイザー、及び企業顧問に従事している。