会社をなるべく高く売る方法とは?注意点や価格の算出方法などを解説
「充分働いたので今後は少しゆったり過ごしたい」、
「経営に限界が見えはじめたのでそろそろ引退したい」
「一度利益を確定させて次の事業を考えたい…」
このような理由から、自分の会社を売りたいと考えている人も多いのではたことはないでしょうか。
そもそも「会社を売却する」とは、自身の会社を第三者である個人や法人に譲ることです。どういうことなのでしょうか。そしてどのような点に気をつければ、よりよ良い条件で会社を売却することができるのでしょうか。中小企業のM&Aに詳しいクレジオ・パートナーズ株式会社の土井一真さんに、会社売却の基本について教えていただきました。
目次
会社の売却とは
会社の売却とは、会社の株式や事業を第三者に売却し、対価を受け取ることです。
会社の後継者不足の問題が深刻化するなかで、会社売却は大手企業だけではなく、中小企業においても増加傾向にあるのが実情です。
本章では、世間の会社売却動向を解説するので、読み進めてみてください。
世間の会社売却動向
中小企業庁が発表した「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会取りまとめ~中小M&A推進計画~ 」を確認してみてください。
出典:中小企業庁|中小企業の経営資源集約化等に関する検討会取りまとめ~中小M&A推進計画~ P.6
グラフを確認すると、2013年には215件だったのが、2020年にはおよそ10倍の2,139件に増加しており、中小企業のM&Aの実施件数が年々増加しているのがわかります。
会社を売却する理由
「会社を売却する」とは、会社の所有権を他者に渡して対価を得ることです。会社の売買に関する一連の流れには、従業員の雇用や取引先の維持、事業承継対策など多くの要素が関わってきます。現在、多くの中小企業がM&Aによって会社を売却しているおり、その理由には、以下のとおりです。さまざまなものがあります。
-
- 親族や従業員のなかに後継者がいない
- 不採算事業と採算事業を売却したい
- 事業成長を加速させたい
それぞれ詳しく解説します。
親族や従業員のなかに後継者がいない
経営意欲が減退する高齢の経営者には、後継者がいないことに悩んで会社の売却を検討することがあります。後継者に指名できる子どもがいない、子息が都心の大企業に勤めていたり地元で公務員を務めていたりする、従業員に「社長はできない」、「株は買い取れない」と断られた、などのケースが多くを占めています。
不採算事業と採算事業を売却したい
複数の事業を展開していると、採算が取れない事業や今後は売上高が下降していきそうな不採算事業を抱えていることがあります。逆に、今は採算が取れていても将来的な事業発展には不安がある事業を抱えていたり、経営者がより注力したい事業を選択したいと考えたりしたときに、採算事業の一部を売却することもあります。
事業成長を加速させたい
企業が急激に事業を拡大した場合、組織の管理体制が不十分だったり、会社の成長に与信が追い付かなかったりすることがあります。経営者が孤軍奮闘するだけでは企業を成長させることに限界があるとき、より資金力の大きな企業の傘下に入ったり一部を売却したりすることで、その後の事業成長を加速させる準備ができるのです。
会社売却の種類
会社を売却のする方法には、主に以下の4三つがあります。
-
- 株式譲渡
- 事業譲渡
- 会社分割
- 合併
、それぞれの特徴とメリット・デメリットを解説します。にメリットとデメリットが存在します。
(1)株式譲渡
株式譲渡とは、株式を譲渡することで会社の経営権(支配権)を買手に移転するものです。事業承継に伴う株式譲渡の場合は経営権のすべ全てを譲渡することになるため、売手は株式の100%を譲渡することになります。中小企業の事業承継型M&Aは、このケースを指すことが多いです。
・メリット
株式譲渡契約書(SPA)締結後に、買手が売手の株式に対して契約書で定めた対価を支払い、株主名簿の書き換えなど会社法等に定められた手続きを行えば譲渡・譲受が完了します。ほかの手続きと比べ、、手続きを簡単かつ短期間に行えうことができます。
・デメリット
会社の事業とは関係なく賃貸マンションや太陽光等を保有しているなど、売手の経営者のプライベートな資産が売手企業に含まれている場合、会社分割等をしないのであれば当該資産を買い戻す必要がさなくてはならないことがあります。その場合、買い戻し時に当該資産の含み益に対して法人税等が課税されたり、登録免許税等がかかったりと、追加コストを負担する必要があります。
(2)事業譲渡
事業譲渡とは、売手の特定事業について、一部またはすべ全てを譲渡する取引行為のことです。事業譲渡を選択する場合、売手は譲渡対象とした事業についての経営権をなくしますが、譲渡しなかった事業については引き続き経営権を保持することができます。
・メリット
譲渡範囲は、契約書等に定めれば有形や無形を問わず、資産・、負債・、従業員・、取引関係など含めて、どの事業を譲渡するかを選べぶことができます。
・デメリット
譲渡する権利や義務について個別に引き継ぎをする必要があるため、ほかの手法に比べて手続きが煩雑で長期間かかる場合が多いです。たと例えば、従業員の雇用契約書や土地建物の賃貸借契約書なども買手が再度締結しなお直す必要があり、その際には今までの不満などが噴出することもあります。また許認可事業では、許認可の取り直しが必要になる場合が多いです。
(3)会社分割
会社分割とは、売手が経営している特定の事業に関して、権利義務の一部またはすべ全てを包括的に買手に承継してもらう組織再編行為のことです。非事業資産と事業資産の分割または再生のための手段として利用されることが多いといえます。M&Aのスキームとして選択する場合には、ある程度長期の検討期間や実施期間が必要です。昨今の税制改正でメリットが出るケースもあるので、一考の価値はあるといえるでしょう。
・メリット
事業を移転させるという点では事業譲渡と似ていますが、会社分割では事業を包括的に移転させられないることができるため、事業譲渡のデメリットで挙げたような譲渡する権利義務について個別に引き継ぐ手間はかかりません。分割の仕方や許認可の種類にもよりますが、許認可も引き続き使用できるケースもあります。
・デメリット
債権者保護手続きのための期間が最低でも1ヵ1カ月はかかるなど、株式譲渡よりも長期にわたる検討期間と実施期間が必要です。また、組織再編行為は法律等が複雑で、適切な論点をすぐに整理できる仲介会社は少ないのが現状です。とく特に、組織再編行為と仲介業務の両方を提案する専門会社・担当者は限られているといえます。
(4)合併
会社の経営権を譲る売却ではなく、2二つの会社がひと一つになる「合併」があります。会社の合併には「対等合併」や「吸収合併」などがあり、両者の規模や経営状態によってスタイルも異なります。実質的には会社売却であっても、世間へのイメージ戦略から「合併」と公表されるパターンも少なくありません。
会社を売るメリット
売手が会社を売却して得られるメリットには、次のような事柄が挙げられます。
-
- 売却益を獲得できる
- 個人保証を解除できる
- 事業を承継できる
- 会社経営から解放される
それぞれ詳しく解説します。
売却益を獲得できる
廃業では11円の収入も得られませんが、売却ならば売却益が発生するので売手の大きなメリットといえまするでしょう。会社(株式)売却益の税金は個人で約20%%、法人で約30%%となっています。合併の場合は約56%%と売却形式によって計算式が異なるので、M&A仲介会社などに事前相談するのが賢明でしょう。
個人保証を解除できる
事業運営に必要な運転資金の調達に腐心している経営者は多いものです。会社を売却する際には、経営者が金融機関からの借入に対するれていた金銭の個人保証や連帯保証から解放されるのはメリットのひとつです。ることを意味します。
経営する会社が金融機関からお金を借りる場合には、連帯保証を求められます。その場合に、経営者は金融機関から個人保証を設定されるのです。
個人保証がある状態では、新規事業をはじめられなかったり、自身の生活にリスクを及ぼしたりする可能性もあるため、経営者にとっての大きな負担になります。
会社を売却すると、個人保証は買手企業に引き継がれるため、売手企業の経営者は個人保証から解放されます。
事業を承継できる
廃業を回避し、これまでの事業の存続が可能となる売買契約では、従業員の雇用もそのまま継続できます。また、取引先との関係も維持できるので、誰にも迷惑をかけることがありません。ることなく、むしろ、経営が安定することで、周囲から歓迎される可能性が高いことが多いでしょう。
さらに会社を売却すると会社の経営権を手放しますが、事業自体を継続するケースでは、買手の傘下に入って事業基盤を強化できるというシナジー効果が見込まれます。
会社経営から解放される
会社の維持・運営が困難となっている経営いた経営者にとっては、売却によって会社経営という重荷を下ろすことが可能です。
になり、会社に残るにせよ離れるにせよ、第二の人生の再出発となります。
会社経営でのために疲弊していた状態から、売却後はの元経営者は心身ともにそれまでの疲れを心身ともに癒せすことができます。休息期間に今後の身の振り方を家族とともにじっくり考えられるることができるでしょう。
会社に残るにせよ離れるにせよ、第二の人生の再出発となります。
会社を売るデメリット
会社売却には多くのメリットがありますが、同時にデメリットについても知っておかねばなりません。会社売却のデメリットは、以下の4つです。
-
- ロックアップが発生する
- 会社売却後は事業領域を制限される
- 従業員のモチベーション低下につながる
- 会社を手放すことへの寂しさがある
それぞれ詳しく解説します。
ロックアップが発生する
会社売却のデメリットのひとつにロックアップが発生することで、自由が制限される点が挙げられます。
ロックアップとは、売手企業の経営者が株式を売却したあとも、数年間は新しい会社の経営に関わる制度のことです。
売却後は、会社経営から身を引いてじっくり休みたいと願う経営者は多いと思いますが、ロックアップ制度があるため難しいです。、売却買手が買収後のトラブルを避けるために、売買契約成立後も数年間は旧経営者が新会社の経営に関わる必要があります。
ロックアップの制度は、引退したい場合や新たな事業展開をしたい場合にネックになるでしょう。
会社売却後は事業領域を制限される
売却後も売手が事業を存続させる場合、買手が売手に「競業避止義務」を課すケースがあります。
競業避止義務とは、売手が売却益を元手にはじ始める事業が、買手の事業のライバル的存在になることを防ぐためのものです。会社法21条にも「事業譲渡時の競業避止義務」が明文化されているので、注意が必要です。
従業員のモチベーション低下につながる
会社の売却は、従業員のモチベーション低下につながる可能性があります。
売却するとにより経営が安定しすれば従業員の待遇もよくなることが多いものです。が、しかし、売却前の会社の業務体制や仕事の手順に慣れていた従業員から新体制に不満の声が挙がり、モチベーションが低下するしてしまうケースも少なくありません。
これを回避するためには、売却後の環境について従業員の意見をじっくり聴いておく姿勢が重要肝要でしょう。
会社を手放すことへの寂しさがある
会社を手放すことへの寂しさがある点も、会社売却のデメリットのひとつです。
創業オーナーにとってやむを得ないこととはいえ、会社の売却は身を切られるような思いでしょう。売却後には深い寂寥感に襲われ、気力を失くしてしまう経営者も少なくありません。売却後に自身の身をどうするかについては、家族や知人を交えてじっくり相談しておくことが大切です。
会社を売るときの注意点
会社を売るときの注意点は、以下の4つです。
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- 売却先を探すのに時間を要する
- 希望の条件で買ってもらえない可能性がある
- 従業員の雇用条件が悪化する可能性がある
- 既存顧客との信頼関係が悪化する可能性がある
それぞれ詳しく解説します。
売却先を探すのに時間を要する
会社を売却する際の注意点として、売却先探しに時間がかかる点が挙げられます。
会社売買において希望する条件にあう相手を探すのは簡単ではなく、売却までに1年以上かかることも珍しくありません。また、買手が見つかっても、売却価格が折り合わず交渉が難航し時間がかかるケースもあります。
会社の売却を検討する場合は、数ヵ月で簡単に会社を手放せると考えず、長期になることを想定しておきましょう。
希望の条件で買ってもらえない可能性がある
会社売却は、売手と買手の双方が合意できる条件でなければ成立しないため、希望の条件で買ってもらえない可能性があります。
譲渡価格や従業員の待遇が希望通りにならず、売却が進まないことも珍しくありません。
そのため、売却をする際は、売却条件に優先順位をつけておくことも大切です。たとえば、従業員の雇用を守りたい場合は、従業員の考えを尊重する会社や従業員の働きやすさを重要視する会社を探すのがいいでしょう。
このように、売却前には、売却条件に優先順位をつけて、なるべく希望の条件で買ってくれる会社を探すことが大切です。
従業員の雇用条件が悪化する可能性がある
会社を売却することによって、従業員の雇用条件が悪化する可能性があります。
会社そのものを売却する株式譲渡の場合は、契約関係も含めたすべてが買手に引き継がれるため、雇用契約は変化しません。しかし、会社の一部を売却する事業譲渡では、会社と従業員の契約は解消されるため、従業員は買手と新しく雇用契約を結びなおす必要があります。
会社売却後の従業員の処遇については、以下の記事で詳しく解説しています。
既存顧客との信頼関係が悪化する可能性がある
会社を売却することで、取引先や顧客との信頼関係に影響を与える可能性がある点にも注意しなければなりません。
経営体制が変わることで、事業内容や契約条件が変わると顧客に混乱を招いたり、担当者が変わると今まで築いてきた信頼関係が崩れたりする可能性もあります。会社売却の際は、既存顧客に対して説明を行うほか、買手企業と相談しておくなどの対応が必要です。
不安がある場合は、株式譲渡の経験が豊富なM&Aアドバイザーに相談してみましょう。
会社の売却価格の算出方法
「会社売却時の価格相場はどうなっているのか」という疑問を抱く売手企業のオーナーは多いことでしょう。しかしながら、会社売買契約に価格相場というものはありません。それは、売却の際の環境や状況が会社によって千差万別で、一律に相場化できないからです。
ただし、会社売却における売却価格の算定方法はいくつかあるので、その種類を以下に紹介しますしょう。
会社の売却相場
会社売却における相場の計算方法のひとつに、年倍法と呼ばれる以下の計算式があります。
純資産+営業利益の3~5年分=会社の売却相場 |
より正確な売買価格を算出する際は、株式の価格を参考にする必要があります。
株価の算定においては、上場している会社の場合、株式市場で明らかになっている価格を参考にして問題ありません。しかし、非上場の場合は株価がわからないため、会社の価値を正しく算定できないのです。
そこで活用されている手法が以下の3つです。
-
- コストアプローチ
- インカムアプローチ
- マーケットアプローチ
それぞれの手法も詳しく解説するので参考にしてください。
コストアプローチ
コストアプローチとは、売手の株式を評価して売却額を算出する産出する算定方式です。売手の貸借対照表をもとに純資産を正確に割り出すことで、売却後にかかるコストがわ分かるという買手のメリットがあります。
インカムアプローチ
フリーキャッシュフローを割引くDCF法、平均収益をもとに計算する収益還元法、配当をもとに計算する配当還元法の33種類からなる算定法がインカムアプローチです。売却後のシナジー効果など数値に表れない要素も盛り込めるので、柔軟性がある算定法といえるでしょう。
マーケットアプローチ
売手の決算書にもとづいて算出する「類似企業比較法」と「類似業種比較法」の22種類があるのがマーケットアプローチです。いずれも売手と類似する企業や業種を参考に、一定の数値を乗じて企業の価値を数値化して売却価格を割り出す方法です。
会社の売却を成功させるポイント
会社の売却を成功させるポイントには、以下の4つがあります。
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- 売却の目的を明確にする
- 事業が好調のタイミングで売却する
- 自社の強み・弱みを明確にする
- 株式を集めておく
それぞれ詳しく解説します。
売却の目的を明確にする
売却を成功させるポイントとして、売却の目的を明確にすることが挙げられます。
会社売買に大切なのは、売手と買手がお互いにメリットを享受することですにあります。一方が得をして、もう一方が損をするようなことは避けなければなりません。
そのためには、両者の目的を明確にすることが第一です。当事者同士の交渉では本音が出にくいこともあるので、売買契約にはM&A仲介会社などの第三者を仲介にするのことが望ましいでしょう。
事業が好調のタイミングで売却する
事業が好調のタイミングで売却するのも、会社売却を成功させるポイントのひとつです。
「旬のもの」ほど商品価値が上がります。会社も同様で、売手企業は自社の「売りどき」を見極める必要があります。業種や業態によって売却に適した時期は異なりますが、買手が「今なら大金を積んでも買収したい」と思うタイミングに合わせることで売却価格が高くなる可能性があるのです。
自社の強み・弱みを明確にする
会社売却を成功させるには、自社の強みと弱みを明確にしておくことも大切です。
売却金額を少しでも上げるには、自社の強みをアピールする必要があります。すなわち、買手が「この会社を買収することで当社にはこのような利益が生じる」と思ってくれるような「買収のポイント」を的確に伝えるのです。そのためには自社の弱点も把握した上で、買収によってその弱みが打ち消されるという点をアピールするのが効果的でしょう。
株式を集めておく
株主が分散している場合には、売却前に株式を集約させておくことが、会社売却を成功させるポイントになります。
たくさんの株主がいる会社では、「売却する・売却しない」の意思決定が分散してしまいます。結果的に譲り受け企業が必要とする議決権が集まらない可能性もあるのです。
株券発行会社の場合は、現物の株券を集める必要があるため、とくに注意が必要です。
高い金額で売却できる会社の特徴
会社の売却を考えるときに、以下のような要素を満たしていると売却額が高くなることがあります。
高い金額で売却できる会社の特徴は、以下の4つです。
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- 財務状況が健全である
- 買手がシナジー効果を見込める
- 法務・管理体制が健全である
- 経営者に事業が依存していない
それぞれ詳しく解説します。
財務状況が健全である
高い金額で売却できる会社の特徴として、財務状況の健全さが挙げられます。
会社を売却する上で、買手が最初にみ見るのが売手の財務状況です。現状が赤字か黒字かかという点も重要ですが、財務諸表などが正しい数値と計算式によって記載されているか、という点が非常に重要です。
専門家による細かいチェックで粉飾かそれに近い内容が発覚すると、売手にとって大きな不安材料となりまするからです。あくまでも財務状況が正しく健全でなければ、売買契約自体が成立しないと思ってよいでしょう。
買手がシナジー効果を見込める
買手がシナジー効果を見込めるかどうかも、会社を高く売る上で重要なポイントです。
会社の購入が、売手を買ったことが買手の業績向上の要因となることを「会社売買のシナジー効果」と呼びます。たと例えば、会社売買で11社を自社の傘下に編入したことでによって未開拓のエリアに進出が果たせたり、未知の分野の技能や技術を入手できたり、新たな取引先との商談が成立したりするケースなどです。
したがって、「シナジー効果あり」と見込まれた企業の売却額は必然的に高くなる傾向がありまするのです。
シナジー効果が見込める買手を早く見つけるには、未開拓エリアへの販路拡大を積極的に行っている同業他社や、他業種であっても自社を傘下に収めることで業績向上が期待できる企業などを広範囲にリサーチしてみることです。
買収によってシナジー効果が見込める買手を早く見つけられるかもしれません。
法務・管理体制が健全である
会社売却の際は、法務・管理体制が整っているかも確認しましょう。
人事労務や企業法務など、企業運営に重要な社内管理体制が確立されていない売手は、売買後にそれらの業務と組織改革をゼロから構築しなおさなければなりません。
組織改革は時間と経費がかかる作業なので、売買額が低くなったり、場合によっては売買交渉自体が破談となったりするケースも少なくありません。中小企業が大企業並みの社内管理体制を構築するのは大変です。コンプライアンスと人権擁護の現代に適合した最低限のレベルは必要でしょう。
経営者に事業が依存していない
オーナーによるワンマン体制の会社によくみられる傾向として、売手の組織体制が過度にオーナーに依存し過ぎているケースがあります。
それまで事業の決定事項の大半をオーナーの独断で採決していたため、売却後の正常な会社運営に時間がかかり、業務に支障が生じることになりかねません。したがって、企業売買においては売手が経営者依存の体質にある企業は敬遠される傾向があり、売却額にマイナスの影響を及ぼします。
赤字の会社でも売却できるのか
赤字や債務超過であると、会社を売却するのは難しいと思うかもしれません。しかし、実際のところはどうなのでしょうか。
一般的には、赤字や債務超過の場合は売却しにくいといわれています。その理由と赤字でも売却可能な会社の特徴を解説します。
赤字や債務超過だと売却が成立しにくい
赤字の会社でも売却は可能です。ただし実際の現場では、黒字企業の7〜7割が売却できるのに対し、赤字企業で売却に成功するのは11〜22割程度です。赤字企業の買収は負債を抱え込むことを意味するので、これは仕方ないことでしょう。損切のために部分売却をしたいと考えている場合、それまでの投資額に見合わない金額でも、M&Aを検討しているのであれば売却が成立する可能性があります。
赤字でも売却可能な会社の特徴
赤字企業だからといって、売却できないというわけではありません。とく特に、計画的な設備投資を直近でしていたり、不慮の事故などで瞬間的に赤字に陥ったりしている場合など、合理的な説明がつきそうな企業については充分可能性があるといえるでしょう。
以下のような条件を備えている会社は、赤字でも売却の可能性を模索できます。
魅力的な資産や技術がある
土地建物や特許など、魅力的で他社にはない資産を保有しているなどの事実があれば、買収によって買手の事業の販路拡大や新規事業展開などが見込まれる見込めるので、売手が見つかる可能性が大きくなります。また、都心のベンチャー企業などでは、エンジニアなど優秀な人材やチームなどのもマンパワーを獲得し、事業拡大を図る目論見で売買が成立するケースもあります。
特徴のある仕入先・販売先がある
魅力的な仕入先や安定した豊富な販売先などがあり、この先収益を増やすことに目途がつきそうであれば、売買契約の可能性が高まります。新規顧客の獲得につながったり、未知の取引先企業が今後の得意先になったり、今よりもよい条件での仕入れ先になるケースが期待できるからです。この場合は、顧客管理の方法や取引先との関係性の深さなどを調査する必要があるでしょう。
収益性のいい事業がある
会社全体では赤字であっても収益性の高い事業を経営していれば、事業譲渡や会社分割によってその事業のみを売却することが可能です。利益率の高い事業や発展性が見込める部門を切り離して傘下に収めることで、買手の事業拡大が図れるからです。
会社を売る場合の手続き・流れ
会社の売買は、どのような手順で実行されるのでしょうか。会社が売買契約に至るまでの流れや各段階の項目とその内容について、順を追って解説しましょう。
会社を売る場合の手続き・流れは、以下の通りです。
-
- 企業価値評価
- M&Aの専門会社を選定
- 必要な書類の準備
- 買手の募集・選定
- 秘密保持契約の締結
- 案件概要書の提示
- トップ面談
- 基本合意の締結
- 買手によるデューデリジェンスの実施
- 条件交渉
- 最終契約の締結
- 売却実行
流れを詳しく解説します。
⑴企業価値評価
売手企業は自社の企業価値をできるだけ正確に評価し、買手に提示することが重要です。自社の弱みも含め、会社の実態をさらけ出すことで真の企業価値がM&A市場に上がるといってよいでしょう。
⑵M&Aの専門会社を選定
自社の業種・業態に強い、実績のあるM&A仲介会社を仲介業者として選定しましょう。仲介手数料が高額であるからといって避けるよりも、売却契約に腐心してくれる業者に依頼するほうが後悔しないでしょう。
⑶必要な書類の準備
会社売却には、さまざまな書類な必要書類が必要です。業種によっては、公官庁への申請と許認可が必要な場合もあります。事前にM&A仲介会社の担当者によく相談し、必要書類は早めに揃えるようにしましょう。
⑷買手の募集・選定
種類などの準備が整ったならば、買手の募集と選定に移ります。交渉はM&A仲介会社が売手と買手との間に入って行われます。条件面などは事前に整理してまとめておくことが重要です。
⑸秘密保持契約の締結
売買契約では、業種によって多くの秘密事項があります。また顧客情報などの漏洩にも配慮しなければならないので、売買契約には「秘密保持」に関わる条項を盛り込んでおく必要があります。
⑹案件概要書の提示
売買を仲介するM&A仲介会社に提出する「案件概要書」を作成します。売手の「会社沿革・事業内容・組織図・財務状況・主要取引先」など、いわば「企業の経歴書」となる書類です。これをもとにM&A仲介会社は売手の「売却ポイント」をまとめます。
⑺トップ面談
商談が合意点に近づいた時点で、M&A仲介会社の仲介によって売手と買手の経営者が顔を合わせるトップ会談が行われます。お互いの信頼関係について最終確認しあう重要な局面です。
⑻基本合意の締結
売手と買手の要望を出し合って商談し、基本合意が締結されます。男女間の結婚でい言えば婚約にあたる段階であり、正式な売買契約に至る前の時点で第三者企業の介入を防ぐために「覚書」を取り交わすことも必要でしょう。両者は契約成立後に必要となる項目を確認しあ合い、障壁となる課題を取り除いて制約に向けた作業を確認します。
⑼買手によるデューデリジェンスの実施
買手は、デューデリジェンス(売手の企業価値を正確に把握するための作業)を実施します。いわば買収後のリスクを回避するための「与信調査」といってよいでしょう。
デューデリジェンスについては、以下の記事で詳しく解説しています。
⑽条件交渉
売手・買手ともに最終的な条件交渉を行います。デューデリジェンスの結果を踏まえ、買手から新たな条件が提示されることも少なくありません。売手としても安易に妥協せず、譲れない要望はこの時点で明確にしておくことも大切です。
⑾最終契約の締結
売手・買手両者の条件が最終的に合意に至ると、会社の売買契約がの締結となります。売買契約の締結後は契約内容に異議を申し立てることはできないので、両者は慎重に慎重を重ねて契約する必要があります。ことが必要です。
⑿売却実行
最終契約が締結されると、売却作業が実行となります。契約前に売却後の具体的作業をシミュレーションしておき、現場で混乱が生じない準備をしておきましょう。
会社売った際の税金について
会社を売った際は、株式の売却によって得た譲渡益に税金が課せられます。
譲渡益は以下の計算式で算出されます。
売却価格-(取得価格と譲渡時にかかった費用の合算)=譲渡益 |
また、株式保有者が個人なのか法人なのかによって計算が異なるため注意が必要です。それぞれの場合の計算方法を解説します。
個人が保有する株式を売却する場合
個人が保有する株式を売却する場合の計算方法は、以下の通りです。
譲渡益×20.315%(所得税15%・住民税5%・復興特別所得税0.315%) |
譲渡益は、売却価格から取引価格と譲渡時にかかった費用の合算を引いて求めます。また個人の場合に注意が必要なのが、「分離課税制度」を用いる点です。分離課税制度とは、株式譲渡によって得た利益を単体で考えて、それ以外の所得や損失を合算しない課税方式のことです。
つまり、株式譲渡以外に、高額な所得があっても株式譲渡益には影響しません。
法人が保有する株式を売却する場合
法人が保有する株式を売却する場合は、個人の売却方法とは異なります。
法人では、個人の売却に適用される分離課税制度ではなく、「総合課税制度」が適用されるのです。つまり、法人の事業全体としての利益に対して、法人税として税金が課されます。
会社売却する際の相談先
会社のを売却することが決まったあとはならば、信頼できるアドバイザーを探すことが大切です。探すことが先決です。複数の専門会社に相談して、後悔のないように進めることが無難です。
会社売却の相談先として、以下が挙げられます。
-
- M&A仲介会社
- 金融機関(銀行・証券会社)
- 各種専門家(税務・会計・法律事務所)
- マッチングサイト
- M&Aアドバイザリー(FA)
自社に適合した方法や注意点を踏まえつつ、適切な仲介業者や専門家を選びましょうばなければなりません。以下にM&Aの仲介会社や専門家を挙げてみましょう。
M&A仲介会社
売手と買手の間に入り、中立的な立場で双方の条件を詰めながら成約までの手助けをしてくれる会社です。
売手と買手の双方と契約を結び、M&Aを成約させたら双方から手数料を受け取ります。中小企業がM&Aを実行する際には、最もよく利用される方法です。されます。最近は、さまざまなM&A仲介会社が出てきているため、選択が難しい状況にあるかもしれません。仲介会社を選ぶ際は、各社の特徴や担当者の姿勢を見極めることが大切ですが、もっと最も重要なのは「M&Aをする目的」について、その目的意識を共有して行動してくれるかどうかです。という点に集約されます。その観点をもって、よ良きパートナーとしてのM&A仲介会社を選択することが重要なポイントといえるでしょう。
金融機関(銀行・証券会社)
売却したい会社のことをよく知っている銀行や証券会社など、金融機関などが相談にのってくれることがあります。しかし、自行内でマッチングやM&Aの手続きを行えるのは、先進的にM&Aに取り組んでいる一部の大手地銀までです。、大方の場合は多くの場合は、ビジネスパートナーであるM&A専門会社を通して買手を探すことになります。現場をみ見ていると、委託先のM&Aコンサルタントは営業面でアグレッシブな方が多く、対して優しそうな雰囲気の金融機関の担当者とは印象が大きく異なり、そのことに戸惑う経営者も散見されます。
各種専門家(税務・会計・法律事務所)
売却したい会社に詳しく、付き合い付あき合いの長い顧問税理士や顧問弁護士に相談するケースがあります。しかし、候補先探しから手伝ってくれるケースは少なく、(2)と同様にビジネスパートナーであるM&A専門会社を通して買手を探すことが多い傾向にあります。です。場合によっては、顧問先にM&Aを進めることを理由なく止められることもあるでしょう。があります。
マッチングサイト
マッチングサイトを利用すれば、より多くの買手候補を探すことが可能です。ができます。マッチングサイトであれば、手数料を低く抑えられる可能性もこともあるでしょう。しかし、条件交渉を自力で行わなくてはならなかったり、自社の価値について客観的な視点を持てなかったりします。、さらには、信頼関係をうまく構築できずに最終契約・決済まで進められないかったりするケースもあります。情報漏えいが起きやすいことと、長期間譲渡案件として候補に出されている案件は、値踏みされやすい点いことなどに注意が必要です。
M&Aアドバイザリー(FA)
M&Aにおける一連のサポートを行ってくれる点では、M&A仲介業者と同じですが、M&A仲介業者が売手と買手の中立的な立場でマッチングを行うのに対し、M&Aアドバイザリーは売手か買手のどちらか一方の立場から契約締結をサポートします。黒字の中小企業の事業承継型M&Aで利用されるケースはあまりなく、上場企業のM&Aや再生型M&Aに用いられるのが一般的です。れます。
M&AにおけるFAについては、以下の記事で詳しく解説しています。
まとめ:会社売却は早めに専門家に相談しよう
本記事では、会社の売却について、売却の概要からメリット・デメリット、売却の流れなどを解説しました。
会社を売却する理由は経営者によってさまざまですが、売却することで得られるメリットは大きいといえます。
一方で、希望の条件で購入してもらえなかったり、そもそも買手が見つからなかったりするケースも珍しくありません。大きなお金が動きますし、大切な従業員や取引先との関係性もあるため、M&Aや事業承継において信頼できる専門家に依頼するのが大切です。
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会社の売却とは、第三者である法人や個人に会社を譲り渡すことです。本記事では、会社売却の概要からメリット・デメリット、売却価格の算出方法、売却を成功させるポイントなどを詳しく解説します。
▼監修者プロフィール
岩下 岳(S&G株式会社 代表取締役) S&G株式会社
新卒で日立Gr.に入社。同社の海外拠点立上げ業務等に従事。
その後、東証一部上場のM&A仲介業界最大手の日本M&Aセンターへ入社ディールマネージャーとして、複数社のM&A(株式譲渡・事業譲渡・業務提携等)支援に関与。IT、製造業、人材、小売、エンタメ、建設、飲食、ホテル、物流、不動産、サービス業、アパレル、産業廃棄物処分業等、様々な業界・業種でM&Aの支援実績を有する。現在はS&G代表として、M&Aアドバイザー、及び企業顧問に従事している。