【調査分析】鹿児島のM&A・事業承継の市場動向について徹底解説!
本記事では、鹿児島県におけるM&Aや事業承継の現状を詳しく解説しつつ、円滑な事業承継に向けた具体的な進め方や相談先などをご紹介します。

目次
- 地域・業種別の特徴
- 鹿児島の休廃業・解散の動向
- 鹿児島の人手不足状況
- 鹿児島でのM&A成約事例3選
- 鹿児島でのM&A・事業承継の進め方
- ステップ1:事業承継に向けた準備の必要性の認識
- ステップ2:経営状況・経営課題等の把握(見える化)
- ステップ3:事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)
- ステップ4:M&Aの工程の実施
- ステップ5:事業承継の実行
- よろず支援拠点
- 経営安定特別相談室
- 事業承継・引継ぎ支援センター
- 中小企業診断士
- 税理士
- 金融機関
- M&A仲介会社などの専門家
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構
- 鹿児島のM&A仲介会社選びのポイント
- M&Aの成約実績が豊富か
- 自社の業界に精通しているか
- M&Aの種類(買収、合併、事業譲渡など)に応じた専門性を持っているか
- 成功報酬以外の手数料体系が明確か
- 自社の規模や目的に合ったサービスを提供できるか
地域・業種別の特徴
鹿児島県の後継者不在率は43.8%で前年比2.6ポイント低下し、九州8県の中で3番目に低い水準となっています。後継者問題への対策が徐々に効果を上げている証拠と言えるでしょう。しかし、依然として4割以上の企業が後継者不在の状態にあり、事業承継は待ったなしの状況が続いています。
事業承継の形態は、「同族承継」が35.6%でトップですが過去最低を更新しました。親族内での承継が難しくなっている傾向が鮮明になっています。一方、役員・社員からの「内部昇格」が34.5%と僅差に迫っています。「同族承継」に代わる選択肢として、社内の有望人材を後継者に据える動きが広がっているようです。
M&Aなど、後継者問題解消に向けた取り組み
加えて、「M&A」などによる承継割合も上昇しており、「脱ファミリー化」の動きが加速しています。身内に後継者がいない場合でも、外部の力を借りて事業を引き継ぐ選択肢が増えてきました。家業の枠を超えて、事業の継続と発展を図る経営者が増えつつあります。
M&Aとは?買手・売手の目的やメリット・デメリット、手法、費用まで解説
後継者候補として「子ども」を選ぶ企業は37.0%と最多ですが前年から低下しています。「親子承継」の難しさが浮き彫りになる中、候補の幅を広げる必要性が高まっているのかもしれません。「創業者」「同族承継」企業でも「非同族」の候補割合が高まっており、事業承継に対する考え方が変化しつつあります。
鹿児島県を含む九州地方の「後継者難倒産」は2023年1-10月で35件発生しており、「後継者育成」に頓挫し承継完了が間に合わないケースも目立ちます。優秀な人材を見つけるだけでなく、承継までの道のりをサポートする体制の整備が急務と言えるでしょう。
「株式会社帝国データバンク」「特別企画 :九州企業の「後継者不在率」動向調査(2023 年)」https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/s231104_80.pdf(2024年3月28日閲覧)
鹿児島の休廃業・解散の動向
2023年の鹿児島県の休廃業・解散件数は592件で、前年比11.3%増加しました。休廃業・解散件数は九州8県中2番目に多く、増加率も大分県に次いで2番目に高い結果となりました。
また、鹿児島県の休廃業・解散率は3.38%で、九州8県中最も高い水準にあります。これは、鹿児島県の企業数に対する休廃業・解散件数の割合が相対的に高いことを示しています。景気回復の遅れが指摘される鹿児島県では、経営環境の厳しさが際立っている印象です。
鹿児島県では、休廃業・解散件数が前年から2桁の増加率となり、九州の中でも特に増加ペースが速いことがわかります。新型コロナの影響に加え、経営者の高齢化や後継者不在など、構造的な問題が重なった結果と言えるでしょう。また、休廃業・解散率が九州で最も高いことから、鹿児島県の企業は他県と比べて休廃業・解散のリスクが高い状況にあると言えます。
事業を継続したくても、様々な理由から断念せざるを得ないケースが増えているのが実情です。休廃業・解散を食い止めるには、経営改善や事業承継など、早め早めの手を打つことが欠かせません。特に、事業承継の準備は待ったなしの状況と言えるでしょう。
廃業のメリット・デメリットとは?経営者が取るべきアクションとは
一方、廃業を前提とした支援策の重要性も増しています。「第二の創業」に向けた施策など、前向きに廃業を捉える動きも広がりつつあります。「廃業=悪」というイメージを払拭し、新たなスタートに向けた選択肢として位置付ける必要があります。
事業継続を望む経営者にとって、事業承継への早期着手が重要性を増していると考えられます。優良企業を次世代に引き継ぐためにも、M&Aを含めた選択肢の検討が急がれます。行政や支援機関には、承継完了までの息の長いサポートが求められるでしょう。
「株式会社帝国データバンク」「九州企業「休廃業・解散」動向調査(2023 年) 」https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/s240102_80.pdf(2024年3月28日閲覧)
鹿児島の人手不足状況
正社員が不足していると回答した鹿児島県内企業は55.7%で、九州各県の中では比較的低い水準でした。非正社員の不足割合は34.1%でした。全国的に人手不足が叫ばれる中、鹿児島県では比較的マシな状況と言えるのかもしれません。しかし、業種別に見ると、偏りが大きいことがわかります。
鹿児島県を含む九州地方の業種別の正社員不足割合は、「金融」が77.8%でトップ、次いで「建設」69.6%、「サービス」58.2%と続きます。「金融」は、人材の高齢化が進む中、デジタル化への対応が遅れたことが人手不足に拍車をかけている可能性があります。「建設」は、2024年問題への警戒感から、人材の確保・育成に力を入れる企業が増えつつあります。「サービス」は、コロナ禍で大きな打撃を受けた業種の一つです。経験者の転職・退職などで人手不足に悩まされているのかもしれません。
非正社員は「サービス」が43.5%で最も高い結果となりました。飲食店や宿泊施設など、アルバイトやパートへの依存度が高い業種で不足感が強いようです。インバウンド需要の回復に伴い、外国人材の活用にも注目が集まっています。
2024年問題が懸念される建設業と物流業(道路貨物運送)の正社員不足割合は、それぞれ69.6%、69.7%と既に約7割に達しています。長時間労働の是正が急務とされる中、現場の人員確保が難しくなっているのが実情です。人材の「量」だけでなく、「質」の確保も大きな課題となっています。
しかし、人手不足企業の約8割で従業員数は増えておらず、今後も不足の長期化が予想されます。少子高齢化に伴う労働力人口の減少が、大きな壁として立ちはだかっているのが現状です。人手不足は一朝一夕には解消されません。
人手不足の解消にはマンパワーの増加か生産性の向上が求められますが、労働人口減少などにより従業員数の増加は見込みにくい状況です。外国人材の活用など、多様な人材の受け入れを検討する企業も増えつつあります。
「株式会社帝国データバンク」「人手不足に対する九州企業の動向調査(2023 年 10 月)」https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/s231201_80.pdf(2024年3月28日閲覧)
鹿児島でのM&A成約事例3選
以下は、鹿児島で起きたM&A事例3選を紹介いたします。
1. 西原商会による松山商店の買収
2020年6月、鹿児島市に本社を置く業務用食品卸大手「西原商会」は、香川県小豆島町に本拠を構える「松山商店」を買収しました。
西原商会は、業務用食品卸業界において全国トップクラスの企業であり、今回の買収によって松山商店の高い品質を誇る商品を自社の取扱い品に加えることで、商品の幅を広げるとともに、流通網を強化することを狙っています。
また、松山商店の強みである醤油や佃煮の分野における商品開発力や製品ノウハウを取り込むことで、さらなる競争力強化を目指しています。
参照元:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64232390V20C20A9LX0000/
2. ヤマシタヘルスケアホールディングスによる鹿児島オルソ・メディカルの譲り受け
2021年、東京に本社を置くヤマシタヘルスケアホールディングスは、鹿児島市に本社を持つ医療機器卸売業「鹿児島オルソ・メディカル」を買収しました。
ヤマシタヘルスケアホールディングスは、九州南部エリアでの事業基盤をさらに強化し、医療機器市場におけるプレゼンスを拡大する狙いで、この買収を進めました。
今回のM&Aにより、ヤマシタヘルスケアホールディングスは、鹿児島オルソ・メディカルの持つ既存の取引先やローカルネットワークを活用し、さらなる事業成長を見込んでいます。また、医療機器市場全体が成長する中、整形外科向けの専門性を活かし、特化したサービスや製品を提供することで、業界内での競争優位性を高める戦略を進めています。
参照元:https://www.yhchd.co.jp/ir/b70b2e1c5cf09ddc175248c2c767f1d5ddd2de6d.pdf
3. ショーゴルフによるさつまゴルフリゾートの買収
2021年、韓国の大手ゴルフ場運営会社「ショーゴルフ」は、大和証券グループから「さつまゴルフリゾート」(鹿児島県さつま町)の全株式を取得し、買収を完了しました。
ショーゴルフは、韓国国内でゴルフ練習場を運営する大手であり、今回の買収は日本市場への本格的な参入を目指した戦略の一環です。
ショーゴルフは、このリゾートの既存顧客基盤を活かしつつ、施設のさらなるアップグレードや運営の効率化を進め、リゾート事業の収益拡大を目指しています。
参照元:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM075WE0X01C23A2000000/
鹿児島でのM&A・事業承継の進め方

本項では、中小企業庁の事業承継ガイドライン第3版に記載されている事業承継の進め方を参考に、わかりやすく解説していきます。事業承継は、経営者にとって人生の一大イベントと言えるでしょう。会社の未来を託す相手を選び、バトンを渡すタイミングを見極めることは容易ではありません。特に、M&Aによる事業承継の場合、複雑な手続きが必要となり、専門的な知識が求められます。
ステップ1:事業承継に向けた準備の必要性の認識
事業承継は、早めの準備が成功の鍵を握ります。概ね60歳に達した頃には事業承継の準備に取りかかることが望ましいとされています。現経営者の年齢や健康状態、後継者候補の有無などを考慮し、スケジュールを立てることが重要です。
もし60歳を超えている場合は、一刻も早く行動に移すことをおすすめします。身近な支援機関に相談し、準備に着手すべきでしょう。事業承継は一朝一夕で完了するものではありません。計画的に進めることが成功の秘訣です。
特に、M&Aの場合は、買い手探しから交渉、契約締結まで、一定の時間を要します。早めに動き出すことで、最適な相手を見つけ、納得のいく条件で事業を引き継ぐことができるでしょう。時間的な余裕を持って取り組むことが何より大切です。
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ステップ2:経営状況・経営課題等の把握(見える化)
事業承継を円滑に進めるためには、会社の経営状況や経営資源、知的資産等を正確に把握し、見える化することが重要です。自社の強みや弱み、業界における位置づけなどを客観的に分析し、引き継ぐべき価値を明確にしておく必要があります。
具体的には、財務諸表や事業計画、顧客リストなど、経営に関する情報を整理することから始めましょう。「財務」「営業」「人材」など、切り口ごとに現状を整理し、課題を洗い出します。数字に表れない強み・弱みについても、経営者の視点から書き出してみることが大切です。
また、後継者候補の有無、親族内株主や取引先等の理解、将来の相続発生も見据えた準備状況等、事業承継上の課題を明確にしておくことも欠かせません。課題を正しく認識することで、適切な対策を講じることができるでしょう。
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M&Aの場合は、買い手候補の目線で自社を分析することも重要です。買収後のシナジー効果や、リスク要因などを洗い出し、交渉材料として準備しておくことが求められます。自社の「強み」を最大限にアピールできるよう、入念な準備を心がけましょう。
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ステップ3:事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)
事業承継を成功させるには、承継前から会社の経営改善に取り組むことが欠かせません。本業の競争力強化、経営体制の総点検、財務経営力の強化等により、より良い状態で後継者に引き継げるよう努めましょう。
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具体的には、売上拡大や利益率向上に向けた施策の実行、社内の権限委譲や情報共有の仕組み作り、資金調達力の強化などが挙げられます。特に、M&Aの場合は、買い手候補の求める水準を満たすことが重要です。
過剰債務等の課題がある場合は、事業再生に着手することも検討すべきでしょう。抜本的な事業の見直しを行い、承継後の成長基盤を整える必要があります。場合によっては、事業の一部売却や撤退も選択肢に入れる柔軟な姿勢が求められます。
磨き上げには一定の時間を要しますが、承継後の会社の発展につながる重要なプロセスです。経営改善の進捗状況を定期的に確認し、PDCAサイクルを回すことが大切です。社内の理解を得ながら、全社一丸となって取り組む体制を整えましょう。
ステップ4:M&Aの工程の実施
経営者がM&Aによる事業承継の意思を固めたら、いよいよ具体的な実行段階に入ります。まずは、M&Aに関する豊富な知識と経験を持つ仲介者を選定することが重要です。金融機関や専門家からの紹介を受けるなどして、信頼できる仲介者を見つけましょう。
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次に、企業価値評価を行い、自社の適正な売却価格を算定します。財務内容や事業の将来性、競合他社の動向などを総合的に勘案し、客観的な評価を得ることが欠かせません。この評価を基に、買い手候補への提案条件を決定します。
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マッチング段階では、買い手候補とのコンタクトを図り、双方の意向を確認します。事業の将来ビジョンや、従業員の処遇など、重要な論点について認識の擦り合わせを行います。条件面での折り合いがついたら、基本合意書を締結し、デューデリジェンス(買収監査)に進みます。
交渉では、買い手候補との面談を重ね、より具体的な条件を詰めていきます。価格はもちろん、役員の処遇、事業運営方針など、細部にわたって合意形成を図ることが求められます。必要に応じて条件を修正し、最終的な契約締結を目指します。
M&Aは専門性の高い分野であるため、経験豊富な専門家のサポートを受けながら進めることが成功の秘訣です。仲介者や士業専門家など、頼れる存在を見つけ、適切なアドバイスを得ることが重要です。各工程で求められる判断やスキルは多岐にわたります。専門家の知見を借りながら、着実に前進することが大切です。
ステップ5:事業承継の実行
いよいよ、事業承継を実行する段階です。M&A手続き等に沿って、資産移転や経営権移譲を進めていきます。具体的には、株式譲渡契約や事業譲渡契約の締結、必要な許認可の取得、従業員への説明などが含まれます。
特に、従業員への丁寧な説明と理解の取り付けは欠かせません。事業承継に伴う不安を払拭し、モチベーションを維持することが重要です。新経営体制への信頼を醸成し、円滑な引継ぎを実現することが求められます。
また、取引先や顧客への説明も重要なポイントです。事業の継続性を示し、安心感を与えることが大切です。必要に応じて、顧客や取引先を訪問し、直接説明することも検討しましょう。
事業承継を完了させるまでには様々な困難が予想されますが、周到な準備と専門家の助言があれば、必ず道は開けるはずです。粘り強く取り組み、新たなスタートを切ることができるでしょう。
承継後も、経営者としての学びは続きます。社内外の変化に対応しながら、会社を導いていく必要があります。支援機関等を活用し、経営力の向上に努めることが大切です。事業承継は、ゴールではなく新たな始まりです。次の世代に夢と希望を託し、前を向いて歩み続けましょう。
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鹿児島でのM&A・事業承継に関する相談先まとめ
よろず支援拠点
様々な経営課題に関する相談に対応するワンストップ相談窓口として、中小企業庁が各都道府県に「よろず支援拠点」を設置しています。鹿児島にも拠点があり、事業承継に関する悩みを気軽に相談できます。起業・創業から事業承継まで、幅広い相談に応じてくれるのが特徴です。
豊富な知識を持つコーディネーターが、経営者の立場に立って親身になってアドバイスをしてくれるでしょう。相談は無料で、秘密も厳守されます。事業承継の第一歩として、まずは気軽に足を運んでみることをおすすめします。
よろず支援拠点は、課題解決に向けた道筋を示してくれる心強い味方です。様々な支援機関や専門家とのネットワークを持っているので、必要に応じて適切な相談先を紹介してもらえます。「どこに相談すれば良いかわからない」という方は、ぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか。
経営安定特別相談室
商工会議所や鹿児島県商工会連合会が「経営安定特別相談室」を設置し、士業等専門家が各種法的手続きに関するアドバイスを行っています。事業承継の際に発生する法的問題について、専門家の見地から具体的な解決策を提示してもらえます。
経営安定特別相談室では、弁護士や公認会計士、税理士など、各分野のプロフェッショナルが在籍しています。M&Aに伴う契約書の作成や、株式評価など、専門性の高い課題についても相談できるでしょう。必要に応じて専門家を紹介してもらうこともできます。
面談だけでなく、電話やメールでの相談にも対応してくれるのが心強いポイントです。初回の相談は無料というケースが多いので、気軽に問い合わせてみましょう。専門家の視点から見た課題の整理は、事業承継の方向性を定める上で大いに参考になるはずです。
事業承継・引継ぎ支援センター
事業承継・引継ぎ支援センターでは、M&Aや経営資源引継ぎの可能性を探るほか、これらが困難と見込まれる場合には廃業についての相談対応を行っています。鹿児島にも拠点があり、事業承継の様々なニーズに対応してくれます。
センターでは、M&Aに関するマッチングサービスを提供しています。全国の民間のM&A仲介機関と連携し、最適な買い手候補の紹介を受けることができます。条件のすり合わせから交渉の進め方まで、経験豊富な担当者がサポートしてくれるでしょう。守秘義務契約を結んだ上で、安心して相談できるのが特徴です。
事業の引継ぎが難しい場合は、廃業支援にも力を入れています。債務整理や資産処分、従業員の再就職支援など、円満な廃業に向けたアドバイスが得られるでしょう。廃業を検討している経営者には心強い味方となってくれます。
事業の存続か廃業かの判断は、経営者にとって重大な岐路と言えます。様々な選択肢を提示してくれる事業承継・引継ぎ支援センターは、意思決定を後押ししてくれる存在です。早めに相談し、納得のいく道筋をつけることが何より大切と言えるでしょう。
中小企業診断士
中小企業診断士は、「中小企業支援法」に基づき、中小企業のホームドクターとして、様々な経営課題への対応や経営診断等に取り組んでいます。事業承継の際には、第三者の視点から会社の状況を分析し、適切な助言を行ってくれるでしょう。
診断士の強みは、経営全般に関する幅広い知見を持っていることです。事業承継に留まらず、販路拡大や生産性向上など、多角的な視点からアドバイスが得られます。SWOT分析等の手法を用いて、自社の強みと弱みを整理してくれるのも心強いポイントです。
また、事業計画の策定や補助金の申請など、具体的な支援にも定評があります。承継後の経営改善に向けて、目標設定や実行計画の策定を手伝ってもらえるでしょう。継続的なサポートを通じて、承継後の経営改善にも貢献してくれるはずです。
中小企業診断士は、全国各地に多数の登録者がいます。自社の業種や規模、目的に合った診断士を見つけることが大切です。信頼できる診断士を見つけ、伴走型の支援を受けることで、事業承継の成功確率は大きく高まるでしょう。
税理士
税理士は、顧問契約を通じて日常的に中小企業経営者との関わりが深く、決算支援等を通じ経営にも深く関与しています。事業承継に伴う税務問題について、専門的な立場から的確なアドバイスを期待できます。
株式の評価や譲渡、役員の交代など、事業承継には複雑な税務問題が伴います。適切な税務処理を行うには、税理士の助言が欠かせません。早い段階から相談し、タイムリーな対応を心がけることが重要です。
税理士は、事業承継に関する各種税制の活用方法についても助言してくれます。例えば、事業承継税制の適用を受けるための要件や手続きなどを、詳しく説明してもらえるでしょう。税負担の軽減は、円滑な事業承継の実現に直結します。
また、相続税の試算や納税資金の準備など、将来を見据えた提案も期待できます。経営者の高齢化が進む中、相続問題への備えは欠かせません。税理士と連携し、計画的に準備を進めることが大切です。
税務は事業承継の重要な要素の一つです。信頼できる税理士を見つけ、綿密な相談を重ねることが成功への近道と言えるでしょう。顧問税理士との日頃からの良好な関係が、スムーズな事業承継につながります。
金融機関
事業承継の際には、資金調達が大きな課題となることがあります。取引金融機関には、事業承継に関する豊富な知見とノウハウの蓄積があります。M&Aに必要な資金の融資や、株式の評価等について相談してみるのも良いでしょう。
金融機関は、地域経済の活性化に重要な役割を果たしています。事業承継の成功は、地域の雇用や産業を支える上で欠かせません。金融機関は、M&Aを通じた事業の継続・発展を後押ししてくれるはずです。
融資の判断には、事業の将来性や経営者の資質などが重視されます。承継前から経営改善に取り組み、金融機関の信頼を得ておくことが大切です。日頃からの情報共有や相談を通じて、良好な関係を築いておくことをおすすめします。
また、金融機関の持つネットワークを活用し、M&Aの買い手候補を探すことも可能です。地域の有力企業や、全国規模での候補先の紹介を受けられるかもしれません。秘密保持契約を結んだ上で、条件に合う候補先の紹介を受けられるでしょう。
金融機関は、事業承継に関する各種セミナーや相談会も開催しています。専門家を招いての勉強会など、有益な情報が得られる機会が多いのが特徴です。事業承継の基礎知識から実務に至るまで、幅広い内容を学べるでしょう。
事業承継には資金面でのサポートが欠かせません。普段からの金融機関とのコミュニケーションを大切にし、適切なアドバイスを得ることが重要です。金融の視点を取り入れることで、事業承継の選択肢は大きく広がるはずです。
M&A仲介会社などの専門家
M&Aを成功させるには、専門的な知識と経験が不可欠です。M&A仲介会社には、豊富な実績を持つ専門家が在籍しています。自社の状況に合わせて最適な業者を選ぶことが重要です。
M&A仲介会社は、買い手と売り手のマッチングを行うのが主な役割です。両者の条件を調整し、円滑な取引の実現を目指します。仲介報酬は成約時に発生するのが一般的で、成功報酬型の料金体系が主流です。
仲介会社の選定には、いくつかのポイントがあります。まず、M&Aの成約実績が豊富であること、自社の業界に精通していること、M&Aの種類に応じた専門性を持っていることなどが挙げられます。実績の多い会社であれば、様々なケースに柔軟に対応してくれるでしょう。
また、自社の業界動向や競合他社の情報に詳しいことも重要です。業界特有の商慣行やニーズを踏まえたアドバイスは、円滑なM&Aの実現に欠かせません。業界団体との太いパイプを持つ会社であれば、有力な買い手候補の紹介も期待できます。
M&Aには、買収や合併、事業譲渡など、様々な手法があります。自社の目的に合ったアプローチを提案してくれる会社を選ぶことが大切です。例えば、事業譲渡の場合は、雇用や許認可の承継など、特有の課題への対応が求められます。各分野のプロフェッショナルが在籍する会社であれば、ワンストップでサポートしてくれるでしょう。
M&A仲介会社とは?FAとの違いや選ぶ際のポイントなどを紹介
加えて、成功報酬以外の手数料体系が明確であること、自社の規模や目的に合ったサービスを提供できることも確認すべき点です。アドバイザリー費用や デューデリジェンス費用など、様々な費用が発生します。料金体系を事前にしっかりと確認し、納得した上で契約することが重要です。
M&A仲介手数料はどれくらいかかる?費用の内訳相場や会計処理を解説
自社の規模や業種、目的に合ったサービスを提供してくれる会社を選ぶことも大切なポイントです。例えば、小規模企業の場合は、大手仲介会社では手数料面での負担が大きくなる可能性があります。逆に、大企業の場合は、専門性の高いサービスを求めることになるでしょう。自社の実情を踏まえ、最適なパートナーを見つけることが重要です。
M&A仲介会社選びは、事業承継の成否を左右する重要な意思決定です。単に条件面だけでなく、担当者との相性なども考慮に入れたいところです。複数の会社に相見積もりを取るなどして、比較検討することをおすすめします。腰を据えて向き合うことで、必ずや信頼できるパートナーが見つかるはずです。
独立行政法人中小企業基盤整備機構
中小企業の支援機関が、事業承継の支援体制を構築していくにあたり、必要な助言や、支援機関の課題解決に資する講習会を開催しています。鹿児島にも拠点があり、支援機関に対する支援を通じて、中小企業の事業承継を後押ししています。
同機構では、事業引継ぎに関する各種情報提供を行うほか、事業引継ぎに取り組む企業に対して専門家を派遣するなどの支援を行っています。例えば、M&Aに関する専門的な助言を求めている企業に対し、経験豊富なアドバイザーを派遣するといった支援が挙げられます。
また、事業引継ぎに関心のある企業に対し、セミナーの開催やマニュアルの提供等を通じて、事業引継ぎの具体的な進め方等をアドバイスしています。経営者向けのセミナーでは、M&Aの基礎知識から、成功事例に至るまで、幅広い情報を得ることができるでしょう。
支援機関の支援力の向上は、中小企業の事業承継の推進に直結します。同機構の取り組みを通じて、支援体制の整備が進むことが期待されます。各種施策の活用により、円滑な事業承継の実現を目指したいものです。
経営者にとって、事業承継は未知の領域であることが少なくありません。身近な支援機関と連携し、専門的な知見を取り入れることが何より大切です。同機構の存在を心に留め、適切な支援を受けることをおすすめします。
鹿児島のM&A仲介会社選びのポイント

M&Aの成約実績が豊富か
M&A支援会社選びで重視したいのが、成約実績の豊富さです。数多くのM&A案件をまとめた経験のある会社なら、交渉術に長けているはずです。実績数だけでなく、取引規模や業種の広がりにも注目しましょう。
自社の事業規模や業界特性に合った案件の実績があるかを確認することが大切です。条件面などのノウハウが蓄積されているため、円滑な交渉が期待できます。
自社の業界に精通しているか
自社の業界事情に詳しい仲介会社を選ぶのも重要なポイントです。業界特有の商慣行や経営課題を理解している方が、スムーズにM&Aを進められるからです。
同業他社とのM&A案件の実績があれば申し分ありません。業界内のネットワークを活かし、最適な買い手候補を探してくれるはずです。自社の事業価値を適切に評価する目利き力も備わっているでしょう。
M&Aの種類(買収、合併、事業譲渡など)に応じた専門性を持っているか
M&Aには、株式譲渡や事業譲渡、合併など、様々な手法があります。取引の形態に応じた高度な専門性が求められるため、経験豊富な仲介会社を選ぶことが欠かせません。
自社の意向に合ったM&Aスキームを提案してくれる会社が望ましいでしょう。法務面や税務面の課題にも精通し、トータルなサポート力を備えているかどうかもチェックしたいポイントです。
成功報酬以外の手数料体系が明確か
M&A仲介会社の報酬体系は、成功報酬型が一般的です。つまり、案件が成立した場合にのみ報酬が発生する仕組みです。ただ、着手金など固定費用を設定している会社もあるため、契約前に手数料体系を確認しておくことが重要です。
料率の水準だけでなく、計算方法も含めて、明確な説明を受けましょう。専属契約を求められるケースもあるため、複数社への相談の可否も事前に確認しておくと安心です。
M&A仲介手数料はどれくらいかかる?費用の内訳相場や会計処理を解説
自社の規模や目的に合ったサービスを提供できるか
M&A支援会社の得意分野は多岐にわたります。大型案件に強みを持つ会社もあれば、中小企業のM&Aに特化したところもあるからです。自社の規模や目的に合った専門性を持つ会社を選ぶことが肝心です。
例えば、事業の一部を売却する場合は、部門売却の実績が豊富な会社がおすすめです。一方、完全子会社化を目指す場合は、PMIまで視野に入れた総合的な支援力を備えた会社を選ぶと安心でしょう。
M&Aは、オーナー企業にとって一大イベントです。信頼できるパートナーを見つけられるかどうかが、成否を分けると言っても過言ではありません。相性の良い仲介会社を選び、二人三脚で理想の事業承継の実現を目指しましょう。
まとめ
鹿児島の中小企業では、後継者不足が深刻化する一方で、M&Aによる事業承継が増加傾向にあります。人口減少や高齢化の進展を背景に、親族内での承継が難しいケースが増えており、第三者への承継が重要な選択肢となっています。
「企業は人なり」と言われるように、事業を支える人材の確保は経営の根幹をなす課題です。優秀な後継者を見つけ、バトンを渡すためには、早めの動き出しが重要です。M&Aは、経営資源の引継ぎを通じて、事業価値の毀損を防ぐ有力な手段と言えるでしょう。
M&Aを成功させるためには、計画的な準備と専門家のサポートが欠かせません。会社の現状分析、課題の抽出、経営改善の実行など、入念な下準備が求められます。自社の「強み」を最大限に生かせる買い手を見つけるには、早い段階からの情報収集と、綿密な計画の策定が重要です。
▼監修者プロフィール

岩下 岳(S&G株式会社 代表取締役) S&G株式会社
新卒で日立Gr.に入社。同社の海外拠点立上げ業務等に従事。
その後、東証一部上場のM&A仲介業界最大手の日本M&Aセンターへ入社ディールマネージャーとして、複数社のM&A(株式譲渡・事業譲渡・業務提携等)支援に関与。IT、製造業、人材、小売、エンタメ、建設、飲食、ホテル、物流、不動産、サービス業、アパレル、産業廃棄物処分業等、様々な業界・業種でM&Aの支援実績を有する。現在はS&G代表として、M&Aアドバイザー、及び企業顧問に従事している。