事業承継の失敗事例7選!うまくいかない理由や対策法を徹底解説

事業承継は、会社を存続していくために行う重要な工程です。しかし、後継者不足や資金問題などさまざまなトラブルが発生することが多く、事業承継が失敗してしまうケースがあります。

場合によっては倒産や廃業を招いてしまうこともあるため、過去の失敗事例からうまくいかない理由をチェックしておくことが大切です。

そこで本記事では、どんな対策が必要なのか気になっている経営者の方へ向けて、「事業承継の失敗事例7選」をご紹介します。

失敗を回避するための対策法まで解説しているので、ぜひ参考にしてください。

事業承継が失敗した場合のリスク

事業承継に失敗してしまうと、以下のような事態が発生します。

    • 業績が悪化する
    • 資金繰りが悪化する
    • 退職者が増加する
    • 廃業に追い込まれる

どんな影響が出るのかについて、詳しく解説していきます。

また、事業承継のトラブルについては以下の記事でも解説しているので、ぜひあわせてご覧ください。

事業承継時に起こり得るトラブルは?|具体例や対策方法などを紹介

業績が悪化する

業績改善を目的に事業承継をする場合もありますが、勢いで進めてしまうと業績改善どころか、悪化の一途をたどることになります。

たとえば後継者の力量が足りていなかったり、承継のタイミングが悪かったりして、取引先との契約が打ち切られて経営がうまくいかなくなるケースがあります。

業績が悪化してしまう要因の多くは準備不足です。早い段階から後継者の教育などの準備を進め、事業承継できる状態に整ったあとで承継しましょう。

資金繰りが悪化する

事業承継がうまくいかず業績が悪化してしまうと、金融機関からの融資を受けられず資金繰りが難しくなります。

また、融資を受けようとするタイミングで、「事業内容をきちんと説明できない」という後継者の準備不足も資金繰り悪化の要因となります。

資金繰りができなくなると、最悪の場合は廃業に追い込まれるケースもあるので注意しましょう。

退職者が増加する

経営者が変わると急な変化を求めすぎた結果、従業員が納得できずに退職してしまうケースがあります。新しい経営方針に賛同できない人や、事業承継自体に納得できない人が出ることもあるでしょう。

また、業績悪化によって人件費を削る必要があり、やむなく退職者を出す決断に迫られることもあります。

会社にとって人材は重要な財産なので、従業員も納得するような後継者選びや、事業成長し続けられるような事業承継計画を立てることが重要です。

廃業に追い込まれる

事業承継で失敗して巻き返せなくなると、廃業を余儀なくされてしまいます。長期にわたって成長させてきた会社が廃業してしまうのは、経営者にとっては避けたいことです。

事業が継続するよう、入念な準備をすることや最適な承継先を見つけることが大切です。

事業承継の失敗事例7選

事業承継で失敗してしまった事例を7つご紹介します。それぞれの失敗要因と対策法まで解説していくので、ぜひ参考にしてください。

    • ワンマン社長による準備不足
    • 親子トラブルによる事業承継の破綻
    • 派閥争いによる企業資金の流出
    • 後継者が見つからないことによる廃業
    • 先代が経営に干渉したことによって起きた経営悪化
    • 議決権が確保できないことによる後継者の不安定化
    • 古参従業員の反発によって起きた経営陣とのトラブル

また、事業承継の成功事例については以下の記事でご紹介しています。失敗事例とあわせてチェックすることで、より対策しやすくなるので参考にしてくださいね。

事業承継の事例9選!親族内・従業員・M&Aの成功事例を紹介!

事例①ワンマン社長による準備不足

ワンマン経営で事業を大きく伸ばしてきた社長が、急逝してしまったことによる失敗事例です。何も準備していないまま経営者が死亡してしまったため、後継者が決まらない事態に陥りました。

会社の事業に関わってこなかった妻が否応なしに承継したものの、経営がうまくいかず、廃業に追い込まれてしまいました。

要因

    • ワンマン社長が後継者を育てておらず、引き継いでくれる人がいなかった
    • ワンマン社長は自分が退くことを考えておらず、家族と事業承継について話し合っていなかった

対策法

    • 長い期間をかけて従業員を育てつつ、後継者候補の目星をつけておく
    • 家族と事業承継はどうするのか話し合っておく

事例②親子トラブルによる事業承継の破綻

突然、息子を後継者にしようとして失敗した事例です。息子が会社を辞めようとしているタイミングで、父親から事業承継の話を提案しました。

しかし、新しいやり方で会社を成長させようとする息子と、これまで築き上げてきたやり方を否定されることをよく思わない父親で衝突。他に後継者候補もいなかったため、父親は慌てて息子を育てようとしてしまったのです。

結局、息子は他の会社で再就職することになり、事業承継は失敗に終わってしまいました。

要因

    • 息子は父親の気持ちを考慮しておらず、意見を聞き入れていなかった
    • 父親は息子を子ども扱いし、自分のやりたいようにやらせようとしていた
    • 息子に、経営者としての自覚を持たせるための教育をしてこなかった

対策法

    • 前もって家族で事業承継の話をし、息子にはいずれ会社を継ぐという認識を持たせておく
    • 引退した経営者は、後継者の意思決定にあまり口出ししないようにする

事例③派閥争いによる企業資金の流出

子どもが2人いる中で、経営者の父親が強引に後継者を決めたことで起きた失敗事例です。次男の方が会社に貢献する働きをしていたものの、父親は強引に長男を社長に就任させてしまいました。

長男を社長にしたことに対して次男が反発し派閥争いの末、次男は退職することになります。専務に就任予定だった次男は株式の40%を保有しており、退職金として保有株式の買取を求め、数億円の企業資金を流出してしまったのです。

要因

    • 後継者候補が2人いるにも関わらず、強引に後継者を決めてしまった
    • 後継者候補の本人たちが納得いくように協議ができていなかった

対策法

    • 関係者が納得できる後継者選びをする
    • 後継者を誰にしようとしているかの話をしておく

事例④後継者が見つからないことによる廃業

最後まで後継者が見つからず、廃業に追い込まれてしまった失敗事例です。家族には後継者になる意思がなく、後継者探しをしていくことになりました。知人や従業員など幅広く後継者となる人材を探したものの、結局見つかりませんでした。

最終的には経営者本人が年齢を重ねてきたこともあり、体力的に限界を迎えて廃業に追い込まれてしまったのです。

要因

    • 自力のみで後継者探しをしていた

対策法

    • 家族に後継の意思がないことがわかった時点で、後継者を探す方法を考える
    • 専門家に相談して人材を探す

家族や従業員の中に後継者になってくれる人がいないと、後継者探しは難航します。経営者ひとりで後継者探しをするのには限界があるため、事業承継のプロに相談するのがおすすめです。

「TSUNAGU」では後継者探しのお手伝いをしています。相談・着手金は無料なので、まずはどんな状況で悩んでいるのか、お気軽にご相談ください。

事例⑤先代が経営に干渉したことによって起きた経営悪化

引退した先代が経営に関わり続けたことで、失敗してしまった事例です。先代が大きな影響力を保持し続けた結果、従業員は「決定権は先代にある」と判断し、後継者は発言力を失ってしまいました。

やがて先代が完全に退くと、従業員は新しい経営者のやり方に違和感を覚えるようになります。最終的には大量の離職者が発生し、経営不振に陥ってしまいました。

要因

    • 先代が引退後も経営に干渉してしまった
    • 企業のリーダーが誰なのかわからず、従業員が混乱してしまった

対策法

    • 先代は引退したら後継者に経営を任せ、発言はアドバイスをする程度に抑える

事例⑥議決権が確保できないことによる後継者の不安定化

株式の相続にともなって起きた失敗事例です。経営者の死後、遺産分割によって複数人が株式を相続し、そのうちのひとりが後継者になりました。

しかし、後継者に反発する他の相続人が議決権を行使し、後継者に非協力的な態度を取るようになります。後継者は自分の意思を経営に反映しづらくなり、経営者としての地位が不安定になってしまいました。

要因

    • 後継者に株式を集中させられなかった

対策法

    • 買取や贈与・相続といった方法で後継者に株式を集約する

事例⑦古参従業員の反発によって起きた経営陣とのトラブル

後継者に納得しない従業員がいたことで起きた失敗事例です。経営者の息子が後継者として社長に就任したものの反発する意見が多く、派閥争いに発展してしまいました。

経営陣と従業員との間に亀裂が生まれ、和解金を支払うまでのトラブルになってしまいまいました。

要因

    • 従業員に、後継者についての話をしていなかった

対策法

    • 従業員の賛同を得て、全員が納得したうえで事業承継をする

事業承継で失敗しないための対策

事業承継に失敗してしまうのには必ず理由があり、対策することで成功に近づけられます。以下5つの対策を実践することで、失敗を回避しましょう。

    • 後継者に意思確認をする
    • 経営者は早めに引退予告をする
    • 後継者に経営経験を積ませる
    • 事業承継計画書を作成する
    • 税金対策をしておく

後継者に意思確認をする

まずは、後継者候補が事業を承継する意思があるのかどうかを確認しておきましょう。経営者には、創業者が成長させてきた事業を今後も存続させ、従業員の生活を守っていく責任があります。

生半可な決意で任せることはできないため、会社をより良くしようという意思があるかの確認は重要です。

後継者の育成には長ければ10年程度の期間を要し、もし後継の意思がなければ他の候補者を探す時間も必要です。できるだけ早めのタイミングで、後継者候補には意思確認をしましょう。

経営者は早めに引退予告をする

経営者が早めに引退予告をしておくことも対策のひとつです。もし、経営者が限界まで働き病気や急死などに至ると、残された家族や従業員は苦労します。

その点、「5年後には社長を交代する」などと伝えておけば、従業員一人ひとりが後継者問題に向き合ってくれたり、後継者がやる気を持って事業や経営に関する知識習得をしてくれたりするでしょう。

後継者との並走期間を設け、着実に事業承継を進められると安心です。

後継者に経営経験を積ませる

後継者が決まったら、早い段階で経営経験を積ませましょう。会社経営の経験がないまま経営者になると、うまく運営できず業績を悪化させる可能性が高まります。

身近で経営を体感させることで、事業承継後の経営の安定性も高められるようにしましょう。

事業承継計画書を作成する

事業承継計画書とは、スムーズな事業承継を実現させるための計画書です。中長期の経営計画の中に事業承継の時期や課題と対策などを盛り込み、経営者と後継者が認識をすり合わせるために活用します。

事業承継計画書があることで、後継者が経営状況をきちんと把握できるようになったり、取引先や金融期間などの関係者に共有し、理解を得やすくなるというメリットもあります。

突然、事業承継が必要になったとしても、計画書をあらかじめ作成しておけば混乱を抑えてスムーズに進めやすくなるでしょう。

税金対策をしておく

事業承継には贈与税や相続税が必要になることがあります。とくに親族間の事業承継であれば、相続税対策が必要です。

たとえば小規模の企業であっても株価総額が1億円以上になることはよくあり、株式を後継者が相続すると1,000万円以上の相続税が発生します。

納税で資金が底をついてしまったり、税金支払いに関するトラブルに巻き込まれたりするリスクが高まるため、承継前にきちんと税金対策をしておきましょう。

失敗事例から学んで事業承継を成功させよう

事業承継に失敗すると、「業績が悪化する→資金繰りが悪化する→退職者が増加する→廃業に追い込まれる」という負の連鎖が起こります。失敗事例から要因を分析し、きちんと対策しておくと失敗を未然に防げるでしょう。

対策法としては、後継者への意思確認や事業承継計画書の作成などが有効ですが、いずれも早めの準備をしておくことがポイントです。

長期間で計画的に進めていき、事業承継の成功を目指しましょう。

事業承継をするにあたり、つまづいたタイミングでは専門家に相談することも大切です。「TSUNAGU」では、事業承継型M&Aに関する問題解決のサポートをしています。気になることがあれば、まずは無料相談から利用してみてください。

ディスクリプション:

事業承継を成功させるために、どんな対策が必要なのか気になっている経営者の方も多いでしょう。本記事では、事業承継の失敗事例を7選ご紹介します。事例から学ぶ「失敗を回避するための対策法」まで解説しているので、ぜひ参考にしてください。

▼監修者プロフィール

岩下 岳

岩下 岳(S&G株式会社 代表取締役) S&G株式会社

新卒で日立Gr.に入社。同社の海外拠点立上げ業務等に従事。
その後、東証一部上場のM&A仲介業界最大手の日本M&Aセンターへ入社ディールマネージャーとして、複数社のM&A(株式譲渡・事業譲渡・業務提携等)支援に関与。IT、製造業、人材、小売、エンタメ、建設、飲食、ホテル、物流、不動産、サービス業、アパレル、産業廃棄物処分業等、様々な業界・業種でM&Aの支援実績を有する。現在はS&G代表として、M&Aアドバイザー、及び企業顧問に従事している。