会社統合すると株はどうなる?合併した場合との違いや注意点まで徹底解説

会社統合をすると、企業の成長が期待できる一方で、株や株価へ及ぼす影響は大きくなります。

本記事では、「会社統合で株がどうなるのか」について徹底解説していきます。

合併と統合の違いについても触れているので、どちらを実施すべきか迷っている経営者の方はぜひ参考にしてください。

会社統合とは

経営手段のひとつに「会社統合」や「会社合併」を行うことがあります。似ている手段ですが明確な違いがあるため、それぞれの定義について解説していきます。

    • 会社統合の定義
    • 会社合併の定義

会社統合の定義

会社統合とは、複数の企業の株式を取りまとめて既存の株式会社を子会社とし、「持株会社」を新設する手続きのことです。

統合した全企業の株式を保有・管理することで、グループとして一体的な経営を実現することを目的に実施されます。

たとえば、A社とB社が統合してC社を新設すると、既存のA社とB社は100%子会社となります。そして、新設したC社はA社とB社を管理する体制になるのです。

既存の企業は消滅することなく存続し、双方の法人格が残るのが特徴です。

会社合併の定義

会社合併とは、2つ以上の企業をひとつにまとめることで、吸収する会社を「存続会社」、吸収される会社を「消滅会社」と呼びます。

ひとつの企業が他の企業を取り込む「吸収合併」では、取り込まれた消滅会社は業務・権利・資産・負債などすべてを存続会社に承継します。

一方、新しく会社を設立する「新設合併」は、2つ以上の企業がそれぞれ資産や負債を新設会社へ移す方法です。

新設合併と会社統合は似ていますが、新設合併では法的構造に直接影響を与え、既存会社の法人格は残りません。内部運営の効率化やシナジー効果の実現を目指すのであれば、会社統合を選択するといいでしょう。

会社統合や会社合併については以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひあわせてご覧ください。

内部リンク: No.14_【会社統合】 No.31_合併 リライト

会社の合併とは何か?種類や成功事例、手続きの流れをわかりやすく解説

会社統合の種類

会社統合には以下2つの種類があります。

    • 株式移転方式
    • 株式交換方式

どんな目的で会社統合をしたいのかを踏まえたうえで種類を選びましょう。

株式移転方式

株式移転方式とは、複数の企業が新たに設立する持株会社に、発行済み株式を移転させる方式です。持株会社が完全親会社となり、既存会社が完全子会社となって親会社・子会社の関係が作られます。

持株会社を大株主として傘下に入るホールディングス化を選ぶのであれば、株式移転方式を用いることが多いです。グループとしての組織編成を重視する場合にも選択されます。

株式移転方式では、子会社になる既存会社同士が対等な立場で統合ができます。会社統合後も法人格が維持されるため、従業員の心理的負担も少なく済むでしょう。

株式交換方式

株式交換方式は、既存会社のうち「完全子会社となる企業の株式」を、別の既存会社で「完全親会社となる企業」に取得させる方式です。新設会社を親会社とするのが株式移転方式であるのに対し、株式交換方式では既存の企業を親会社とします。

親会社は子会社となるべき企業の全株式を取得して、子会社となるべき企業を100%子会社化できます。つまり、グループとしての組織編成よりも他社の買収を目的に実行されることが多い方式です。

株式移転と株式交換については、以下の記事も参照してみてください。それぞれの違いについてより詳しく解説しています。

内部リンク:No.68【株式移転】記事要項シート No.67_【株式交換】

会社統合・会社合併すると「株」はどうなる?

以下では、会社統合と会社合併にわけて、それぞれ株がどうなるのかについて解説します。

会社統合すると株はどうなる?

会社統合をした場合「株式移転方式」を用いて、株式を移行させる場合が多いです。つまり、新設した持株会社(親会社)が、既存の会社(子会社)の株式を保有することになります。

また、子会社となった既存会社の株主は、新設された親会社の株主になります。

たとえば、A社とB社が会社統合してC社が新設された場合、A社の株主は自動的にC社の株主にされるのです。株が消滅することはなく、新設した持株会社に移行された株を保有し続けられます。

会社合併すると株はどうなる?

会社合併では、吸収合併と新設合併で株の交付方法が異なります。

吸収合併の場合、吸収された消滅会社は上場廃止となり、株主には合併後に存続する企業の株式が交付されます。一方、新設合併の場合は既存会社が上場廃止となり、株主には新会社の株式が交付されるのです。

合併すると株式がなくなるので、消滅会社は株式買取請求や新株予約権買取請求などの株主への対策を取る必要があります。

会社統合すると「株価」はどうなる?

会社統合をすると株価はどうなるのかについて、以下3パターンにわけてそれぞれ解説します。

    • 株式移転をすると株価はどうなる?【完全親会社】
    • 株式移転をすると株価はどうなる?【完全子会社】
    • 株式交換をすると株価はどうなる?

株式移転をすると株価はどうなる?【完全親会社】

株式移転をした場合、「完全親会社」の株価は完全子会社の業績と子会社同士のシナジー効果によって変動します。

子会社のうち1社でも業績が悪ければ、持株会社となる完全親会社の株価も下がります。業績改善のために会社統合する場合では、とくに子会社の業績が株価に影響するでしょう。

また、株主が様子見をすることで、株価はじわじわと下がり続けるケースもあります。株式移転によるシナジー効果が出始めるには少し時間がかかります。

グループの組織編成を目的に株式移転をする場合が多いですが、株価の上昇については長い目で見て期待するといいでしょう。

株式移転をすると株価はどうなる?【完全子会社】

「完全子会社」の株価は、ともに株式移転を行う企業との関係性に影響されます。

たとえば、不安材料を抱えたまま株式移転を行った場合、株式移転後に株価が下がりやすいです。反対に、株式移転によって企業に明らかなメリットがある場合は、株価が上がる傾向があります。また、長年深い協力関係にある企業同士の株式移転の場合も株価が上昇しやすいです。

子会社は経営をこれまで通り存続するため、株価に影響がないようにも思えますが、株式移転を行った背景によって変動することを把握しておきましょう。

株式交換をすると株価はどうなる?

既存の会社を親会社とする「株式交換方式」を用いた場合、親会社にブランド力があると子会社側の株価が上がりやすいです。業界に成長性があったり、経営状況が好調であったりするとブランド力が評価され、投資家の期待値も高まるためです。

反対に、業績不振が続く企業を子会社化してしまった親会社の株価は、業績が同時に下がることを懸念されて株価も下がる可能性があります。業界の成長見込みも影響するため、株式交換するタイミングも重要となるでしょう。

会社統合による株価の変動要因

前項の通り、会社統合によって株価が大きく変動することがあります。以下では、「株式移転」と「株式交換」にわけて、それぞれ変動要因を詳しく解説していきます。

    • 株式移転による株価の変動要因
    • 株式交換による株価の変動要因

株式移転による株価の変動要因

株式移転をする場合、持株会社という新しい会社ができ、新株が発行されることで株価が変動しやすくなります。

持株会社は子会社の株式を保有しつつ、新株を発行します。発行株式の総数は増えても、事業が増えて営業利益などが急増するわけではありません。その結果、1株あたりの利益は減少して、株価は下落しやすくなるのです。

また、会社統合する前の各企業の業績や成長性、会社統合した後の事業拡大の見込みも変動要因となります。投資家の評価に大きな影響を受ける部分は、株価の変動要因となるので注意しましょう。

株式交換による株価の変動要因

株式交換による株価の変動要因は、大きくわけて以下2つがあります。

    • 上場企業なら株式市場で上場廃止となる
    • プレミアムの支払いにより株価が上昇する

完全子会社が上場企業の場合は株式市場の上場が廃止されるので、株式を売却する株主が増えて株価が下落するのが一般的です。

また、「プレミアム」支払いが認識されると株価上昇の要因となります。プレミアムとは、買収価格と株式評価額に差があるときに、差額の対価として現金で支払われるものです。、株式交換が公表されると、投資家はプレミアムを期待するため市場株価もあわせて上昇します。

ほかにも取引の発表や株取引の中止、効力の発生などにあわせて株価に影響があります。とくに子会社は、親会社の株価に連動して上昇したり下落したりします。

会社統合をする際の株に関する注意点

会社統合をする際、株について注意すべきことをまとめました。株式移転する場合と、株式交換する場合でそれぞれ解説するので、参考にしてください。

    • 株式移転をする場合
    • 株式交換をする場合

株式移転をする場合

株式移転を行う場合、「単元未満株」の取り扱いに注意が必要です。単元未満株とは、最低売買単位である1単元の株数に満たない株式のことです。

公開取引市場で売買ができないため、株主が株式を買い増すか株式移転する企業が単元未満株を買い取る必要があります。

株主が単元未満株を買い増すリスクや、企業自身が買い取る可能性を踏まえて準備しておくことが重要です。

また税制適格・非適格の適用、株主の保護など注意すべき点は複数あるため、専門家のサポートが必要でしょう。

「TSUNAGU」では、M&Aの品質基準を満たすM&A仲介会社をご紹介しています。着手金なしの成果報酬型で対応しているため、まずはお気軽に無料相談からご利用ください。

株式交換をする場合

株式交換をする場合は、売り手側の株式と買い手側の株式の価値が異なるため、どのような比率で交換するかが問題になります。

両社の企業価値は、時価の純資産額を企業価値とする方法や、将来の予想収益力をもとに企業価値を計算する方法などがあり、適切な方法で算出することも重要です。

最終的には交渉によって株式交換比率が確定しますが、企業価値評価をもとにした適正価からあまりに外れていると、株主の権利を侵害することにもなりかねません。株式の価値は専門家に相談したうえで算出したほうがトラブルを回避しやすくなるでしょう。

株がどうなるのか把握したうえで会社統合を進めよう

会社統合では既存の企業の法人格は残るものの、主に株式移転方式によって、新設した持株会社が株式を保有することになります。

親会社は子会社の業績によって株価が変動し、子会社はともに株式移転をする企業との関係性によって株価が変動します。

新設した親会社と既存の子会社のシナジー効果による株価上昇は、すぐには期待できないため、株主が様子見をすることも踏まえて長い目で見ておくといいでしょう。

株がどうなるのか把握したうえで進められると、会社統合を成功に導くことにつながります。ただし、会社統合をする際の株については、株式の企業価値を考慮するといったように社内だけでは難しい対応も多数存在します。

会社統合に関する相談は、「TSUNAGU」で受け付けております。無料で相談ができるので、ぜひお気軽にご利用ください。

ディスクリプション:

会社統合をすると、株や株価へ大きな影響を及ぼすことがあります。本記事では、「会社統合で株がどうなるのか」について徹底解説するので、会社統合を考えている経営者の方はぜひ参考にしてください。

▼監修者プロフィール

岩下 岳

岩下 岳(S&G株式会社 代表取締役) S&G株式会社

新卒で日立Gr.に入社。同社の海外拠点立上げ業務等に従事。
その後、東証一部上場のM&A仲介業界最大手の日本M&Aセンターへ入社ディールマネージャーとして、複数社のM&A(株式譲渡・事業譲渡・業務提携等)支援に関与。IT、製造業、人材、小売、エンタメ、建設、飲食、ホテル、物流、不動産、サービス業、アパレル、産業廃棄物処分業等、様々な業界・業種でM&Aの支援実績を有する。現在はS&G代表として、M&Aアドバイザー、及び企業顧問に従事している。