ショートリストとは?ロングリストとの違いや意味、役割や作り方を解説
ショートリストとは、M&Aにおいて相手先候補を細かく絞り込み、選定するためのリストです。
M&Aでは、実施する相手を見つけなければ話を前に進められません。しかし、企業は無数にあるため、自社のニーズに合った企業を見つけることは困難です。
企業選定の際に必要不可欠なものがショートリストです。ショートリストを活用することで、効率的かつ正確に自社のニーズに合った企業を見つけられるでしょう。
本記事では、ショートリストの概要や作成方法、ショートリスト作成に欠かせないロングリストとの違いについても詳しく解説します。
目次
ショートリストとは?
ショートリストとは、M&Aにおいて相手先候補を選定するためのリストです。
M&Aの相手先の企業を細かな条件によって抽出したもので、おおよそ5社〜20社程度に絞り込まれたリストになっています。
M&Aの対象になりそうな企業は無数にあり、そこから選ぶには多くの時間と手間がかかります。しかし、ショートリストの作成により自社のニーズに適った企業を絞り込み、効率的にM&Aの交渉を実施していくことが可能です。
なお、ショートリストは、ロングリストと呼ばれるM&Aの相手先を緩い条件で抽出したリストから絞り込んで作成していくのが一般的です。
ショートリストとロングリストの4つの違い
ショートリストを作成するにはロングリストが欠かせません。
ロングリストは、自社の相手として有益になりそうな企業をざっと並べたリストです。ロングリストに詳細な条件を加え絞り込んだのがショートリストです。
ここでは、ショートリストとロングリストの違いを以下4つの項目から解説します。
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- 掲載企業数
- 作成目的
- 記載項目
- 作成タイミング
順番に見ていきましょう。
1.掲載企業数
ショートリストとロングリストの掲載企業数の相場は以下の通りです。
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- ショートリスト:5社〜20社程度
- ロングリスト:30社〜100社程度
ロングリストは、自社にとって有益な相手となりそうな企業を緩い条件で絞ったリストです。
業種や規模、立地などの外型的な条件で企業を抽出し、ショートリストでは詳細な条件を加えて10分の1程度まで絞り込みます。
2.作成目的
ロングリストの目的は適切でない企業を排除することで、ショートリストの目的は精度を高めて適切な企業を抽出することです。
ロングリストは、自社の相手になりそうな企業をできる限り多くピックアップし、少しでも自社にとって有益だと思われる要素があれば抽出します。
一方、ショートリストはロングリストで抽出した企業に、詳細な条件のフィルターをかけて適切な企業を絞り込みます。
3.記載項目
リストへ記載する項目の違いは以下の通りです。
ロングリスト |
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ショートリスト |
|
ロングリストは、ホームページからも調べられるような外型的な要素を中心に掲載しています。
一方ショートリストでは、専門家が分析しなければわからないような、シナジー効果やリスクまで掲載されることが一般的です。
4.作成タイミング
それぞれのリストを作成するタイミングは以下の通りです。
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- ロングリスト:M&Aを実施する方向性や戦略の策定後
- ショートリスト:ロングリスト作成後
ショートリストはロングリストがないと作成できないため、必ずロングリスト作成のあとに作られます。
内部リンク:ロングリスト
ショートリストの役割やメリット3つ
ショートリストには主に以下3つの役割があります。
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- 相手先を絞り込み理想の相手を見つけられる
- 理想の後継者・譲受先を具体化できる
- 相手に合わせたアピール戦略を策定できる
M&Aにおいてショートリストがどのような役割を果たすのか、詳しく解説します。
1.相手先を絞り込み理想の相手を見つけられる
ショートリストを作成することで、相手先の企業を絞り込み、自社にとって理想の相手を見つけられます。
企業数は無数にあるため、どの企業が自社に合っているのかはわかりません。
「同じ業種がいい」「自社と同じような規模の会社がいい」など、ある程度の希望はあっても、その希望をもっとも叶えられる企業はどこなのかを把握することは困難です。
そこで、ロングリストにさまざまな条件を加えることでショートリストを作成し、機械的に自社に合った企業を見つけられます。
2.理想の後継者・譲受先を具体化できる
ショートリストを作成することで、「自社の強みは何なのか」「自社が足りない部分はどこなのか」と強みと弱みを客観的に把握できます。
それにより、自社にとって理想のM&A相手先も具体化できます。
リストを抽出する過程で、他社の強みや弱みも分析していくため「ここは自社にはない部分」「ここは自社のほうが優れている」と、他社と自社の比較ができるためです。
ショートリストを作成することで自社にとって理想的な後継者や、譲受先を具体化させることが可能です。
3.相手に合わせたアピール戦略を策定できる
ショートリストを作成することで、相手企業の状態を詳細に把握できます。そのため、相手企業に合わせたアピール戦略を策定できます。
たとえば、相手先企業の資金繰りが苦しいのであれば、契約時に前金を支払うといった方法でM&Aを有利に進められるでしょう。
ショートリストで相手を詳細に理解できるため、相手先に合わせた精密な戦略が策定可能です。
ショートリストの7つの絞り込み基準
ショートリストはロングリストから対象企業を絞り込んだものであり、以下7つの基準で絞り込みをおこないます。
絞り込み基準 | 内容 |
相手先企業の概要 |
|
売却金額 | 買収に必要になると想定される金額 |
相手先企業の株主 | 相手先企業の主要株主の名簿 |
相手先企業の事業内容 | 相手先企業の事業内容や販売商品 |
相手先企業のM&Aに対する姿勢 | M&Aに対して前向きか否か |
相手先企業の株価 | 株価と株価の推移 |
M&A後に見込まれるシナジー効果 | M&Aによってどんなシナジー効果があるのかの分析 |
絞り込みをおこなう際に重要な点は、優先順位をつけることです。たとえば、シナジー効果を重視したいのであれば、シナジー効果が期待できない企業は抽出しません。
買収金額を重視したいのであれば、許容範囲外の金額になりそうな企業も抽出しないようにします。
このように、抽出項目に優先順位をつけることで、自然とロングリストからショートリストが出来上がります。
ショートリストの作り方4ステップ
ショートリストは以下4つのステップで作成すると効率的です。
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- 自社の長所や短所を明確化する
- 自社が相手に求めるニーズを分析する
- 候補先をニーズごとに分類する
- 候補先企業に優先順位をつける
それぞれの流れの中で重視する点について詳しく解説します。
1.自社の長所や短所を明確化する
まずは、自社の長所と短所を明確にしましょう。自社の強みと弱みを把握できなければ、自社に合った企業を探すのは困難なためです。
たとえば、客観的に「自社の営業力が弱い」と分析できれば、M&Aで営業力に強みのある企業を買収することで業績アップが期待できるでしょう。
よりよいM&Aを実施するためには、自社を客観的に把握することが欠かせません。
2.自社が相手に求めるニーズを分析する
次に、自社がM&Aで相手先企業に何を求めるのかを分析します。
強みと弱みを把握できれば、何を求めるのか自ずと明確になります。強みをさらに強化したいのであれば、自社と同じ強みを持っている企業がふさわしいでしょう。
また弱みを補完したい場合、自社の弱い部分に強みがある企業を買収すると、弱みを補えます。
M&Aによって相手に何を求めるのかを分析しましょう。
3.候補先をニーズごとに分類する
次に、候補先の企業を自社のニーズごとに分類していきます。
シナジー効果 |
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営業力 |
|
ブランド力 |
|
このように、自社がM&Aに何を求めるかの項目ごとに相手先企業を分類することで、ニーズに最適な企業はどこかを視覚的に把握できます。
4.候補先企業に優先順位をつける
最後に、候補先の企業に優先順位をつけます。
たとえば、3のフェーズで挙げた例でシナジー効果をもっとも重視するのであれば、優先されるのはA社、C社、F社です。
抽出された3社と個別に交渉して、自社にとってもっとも有利な条件で買収できる企業とM&Aを実施できます。
M&Aの手順や進め方、売手・買手が得られるメリットまで徹底解説
ショートリスト作成時の3つの注意点
ショートリストを作成する際には、以下の3点に注意が必要です。
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- 目的を明確にしてリストを作成する
- シナジー効果や自社との親和性を検討する
- 秘密保持契約を締結し情報漏洩を防ぐ
目標なしにリストは作成できませんし、相手先の分析だけでなく自社との相性も検討しなければなりません。順番に解説します。
1.目的を明確にしてリストを作成する
ショートリストを作成する際には、自社の目的を明確化する必要があります。
自社がM&Aに何を求めるのかを明確にしていない限り、ショートリストで抽出された企業が本当に自社の業績向上に寄与するものなのか不透明だからです。
たとえば「M&Aで同業他社を買収してスケールメリットを獲得したい」という目的があるなら、同業他社を抽出しなければM&Aの意味がありません。
M&Aを自社にとって有意義なものにするためにも、まずは自社の目的を明確にしてください。
2.シナジー効果や自社との親和性を検討する
ショートリストを作成する際には、相手先企業を分析するだけではなく、自社との相性も重要です。
具体的には、M&Aによって自社とどのようなシナジー効果が生まれるのか、企業がひとつになったとき業務運営は円滑に回るのかを検討する必要があります。
たとえば、買収する会社の取引先が自社の敵対企業の場合には、M&Aによって自社の情報が敵対企業に流れてしまう可能性があります。
また、自社がM&Aを実施したことによって、取引先が一方的に契約解除する可能性もあるでしょう。
相手先企業の外型的な条件は自社のニーズにマッチしていたとしても、M&A後に円滑に経営できるとは限りません。
ショートリスト作成時には、必ず自社とのシナジー効果や親和性がどの程度あるのかという点も考慮してください。
3.秘密保持契約を締結し情報漏洩を防ぐ
ショートリストには、候補となる企業のセンシティブな情報まで掲載されています。情報が漏洩したら、候補先企業から損害賠償請求されるリスクもあります。
ショートリスト作成をM&A仲介業者に依頼する場合、必ず秘密保持契約を締結しておくようにしましょう。
また、従業員にショートリストの作成依頼をする場合も、秘密保持契約を締結しておくことで、当該従業員が退職したあとも情報漏洩のリスクを軽減できます。
ショートリストは専門家と一緒に作成していこう
ショートリストは、自社に合ったM&Aの相手先企業を抽出するために必要不可欠なリストです。候補となる企業を洗い出すことで、自社の強みや弱みも把握できるため、より業績アップに寄与できる相手先を選定できます。
作成するための条件は多岐にわたり、できる限り多くの企業から抽出する必要があるため、専門的な知識のない方が精緻なショートリストを作成するのは困難です。
自社に最適な企業のリストを作りたいのであれば、まずはM&Aの専門家へ相談しましょう。
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【ディスクリプション】
ショートリストとは、M&A相手先候補となる企業を絞り込んだリストのことです。この記事では、ショートリストの意味や作り方、ロングリストとの違いなどを詳しく解説します。
▼監修者プロフィール
岩下 岳(S&G株式会社 代表取締役) S&G株式会社
新卒で日立Gr.に入社。同社の海外拠点立上げ業務等に従事。
その後、東証一部上場のM&A仲介業界最大手の日本M&Aセンターへ入社ディールマネージャーとして、複数社のM&A(株式譲渡・事業譲渡・業務提携等)支援に関与。IT、製造業、人材、小売、エンタメ、建設、飲食、ホテル、物流、不動産、サービス業、アパレル、産業廃棄物処分業等、様々な業界・業種でM&Aの支援実績を有する。現在はS&G代表として、M&Aアドバイザー、及び企業顧問に従事している。