事業承継の事例9選!親族内・従業員・M&Aの成功事例を紹介!
「事業承継はどうやって行うのだろう?」「自分の会社はM&Aすべきなのだろうか?」という悩みを抱えていませんか?
過去に実施されてきた事業承継には、成功事例や失敗事例があります。成功事例をチェックしておけば、どのようなパターンなら事業承継がうまくいくのか参考になるでしょう。
そこで本記事では、親族内事業承継・従業員への事業承継・M&Aの3つに分けて、成功事例9選をご紹介します。これから事業承継を進めていく人は、ぜひチェックしてください。
事業承継の種類
事業承継には、主に以下3つの種類があります。
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- 親族内の事業承継
- 従業員への事業承継
- 第三者への事業承継(M&A)
それぞれの特徴、問題点、対策について解説していきます。
①親族内の事業承継
親族内の事業継承に関する特徴、問題点、対策は以下の通りです。
特徴
息子や娘、妻などを後継者とするのが親族内の事業承継であり、もっとも実施されている方法です。
経営面では従業員や取引先との関係を維持しやすく、安心感があるというメリットがあります。親族なので早い時期から後継者の教育ができる点も強みでしょう。
問題点と対策
複数の子どもがいる場合は、資産面で争いが発生することがあります。株価引下げ対策や資産整理など、後継者の相続税対策が必要です。
あらかじめ株式や財産の話を進めておき、争いが起きないように分配を決めておくとよいでしょう。
②従業員への事業承継
従業員への事業継承に関する特徴、問題点、対策は以下の通りです。
特徴
役員や従業員などが事業承継をするケースです。会社の事業内容を知り尽くしているため、事業承継後も運営や戦略の策定がスムーズなのが特徴です。
また、日常的に接している慣れ親しんだ人への承継となるため、他の従業員や取引先からも後継者として受け入れられやすいでしょう。
問題点と対策
問題点は、後継者候補に多くの資金が必要なことです。安定的な経営のためには、総議決権の過半数の株式を保有することがひとつの目安となるため、一般的には経営者から後継者に株式を引き継ぎます。
しかし、株式の買い取り資金が不足することがあります。その場合は株式を取得する資金として給与を増額したり、買い取り資金を分割で支払ってもらったりなど、あらかじめ対策を考えておきましょう。
③第三者への事業承継(M&A)
第三者への事業継承に関する特徴、問題点、対策は以下の通りです。
特徴
親族や社内に後継者の候補がいない場合は、第三者に会社を売却する「M&A」を実施することになります。
後継者がいない会社にとっては、事業継続の有力な選択肢となるでしょう。また、後継者に相続税等の負担をかけることがないため、金銭面でのメリットを得やすいです。
問題点と対策
一方、買手がいなければM&Aは成立しない点がデメリットです。依頼するM&A会社次第で、売却価格・条件などが不利になる場合もあります。
対策としては、自社の譲れない希望条件をきちんとまとめておくことが重要です。具体的な交渉が始まると新たな条件を追加しにくくなるため、事前の準備をして納得のいくM&Aにつなげましょう。
事業承継の成功事例9選
以下では、事業承継の成功事例をご紹介していきます。「親族内」「従業員」「M&A」の3種類を3つずつ合計9つの事例について解説するので、ぜひ参考にしてください。
親族内の事業承継の成功事例①
母から息子へ和菓子店を事業承継した事例です。先代の母は、先々代の逝去によって急遽、事業を受け継ぐことになった経緯から、自分は元気なうちに息子に託したいと考えていました。
後継者の息子は従業員として和菓子の製造を担当しており、結婚を期に事業を引き継ぎました。かつてパン職人だった妻に協力してもらいながら、手作りパンの販売もしています。
コロナ禍で贈答用の和菓子の売上が減少するも、パンの売上によって業績は回復。地域内にパンを提供するお店がないため、地元の人に喜ばれているようです。
成功のポイント
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- 先代の母親が余裕をもって事業承継を進めていた
- 後継者の息子も事業承継に向けた準備を少しずつ始めていた
- 息子のアイディアによりパンの販売も開始した
- 事業承継補助金の活用によって、資金面の負担を軽減できた
- 商工会のサポートを受けながら事業計画を策定し、手作りパンの販売開始ができた
親族内の事業承継の成功事例②
創業150年以上の老舗旅館を父から娘夫婦へ事業継承した事例です。借入金と保証人の問題により事業承継が遅れていましたが、事業承継引継ぎ支援センターがサポートすることになりました。
事業承継計画書の作成を支援する専門家派遣と、経営者保証業務を支援してもらうことで、無事、父から娘夫婦へ事業承継ができました。
娘婿のアイディアによって高級路線を打ち出し、2016年にはミシュランガイド富山石川版で評価もされています。
成功のポイント
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- 事業承継の悩みを外部機関に相談することで問題解決につながった
- 専門家の指導のもとで事業承継計画書を作成し、経営者保証解除に向けた金融機関への調整を行った
- 新しい代表者の経営戦略が成功した
親族内の事業承継の成功事例③
機械設備等の制御装置の製造業を、父から息子へ事業承継した事例です。後継者の息子は、工業高校の電気科を卒業し、他社や自社で技術を磨くところから始めていました。管理職としての仕事にも徐々に取り組むようになり、社長に就任する前までに多くの経験を積んでいました。
事業承継後は先代が経営に関して口出しすることはほとんどなく、新たな経営課題に挑みつつ、業績も右肩上がりという成果を出せています。
成功のポイント
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- 後継者の息子は事業承継の12年前に入社し、現場で技術を磨いていた
- 社長に就任する2年前頃からは、経営者に近い立場で経営全般に関わっていた
- 従業員や取引先との信頼関係を維持していくことに気をつかった
- 事業承継後、先代は後継者を信頼して経営を任せている
従業員への事業承継の成功事例①
入社30年の従業員に老舗居酒屋を事業承継した事例です。先代は、真摯に仕事に向き合う現経営者の姿を見て、店を継いで欲しいという想いを抱くようになり、元気なうちに事業承継を行いました。
3代目となる現経営者も、創業者から続くお店への想いを受け継ぎ、地域で親しまれてきた味が守られています。
成功のポイント
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- 従業員は、長年勤務する中で営業や経営ノウハウを習得していた
- 商工会議所を通して日本公庫からアドバイスをもらいながら資金調達をした
従業員への事業承継の成功事例②
表面処理加工業を営む企業が従業員の後継者を選定し、事業承継した事例です。親族内に適任の後継者候補がいなかったため、従業員アンケートによって後継者を抜擢しました。
候補者は3年間の準備期間で経営について学び、社長に就任。株式の承継にはメインバンクからアドバイスを受け、事業承継ファンドを活用しました。その結果、議決権のある株式の3分の2を後継者が保有できるように調整できました。
成功のポイント
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- 従業員が選んだ人が社長になることで、会社としての一体感が高まった
- 新社長も従業員から選ばれたことで、社内からの信頼を感じられた
- 金融機関からアドバイスを受けることで、株式の承継もスムーズに実行できた
従業員への事業承継の成功事例③
工業用機械や加工部品の卸売を行う企業が、従業員に事業承継した事例です。先代が顧問税理士に相談したことをきっかけに事業承継の話が動き出しました。
準備としては、後継者は事業承継計画を作成して2年の間で計画書に掲げた取り組みを実行しました。会計システムの導入や受注機会の拡大などの取り組みの末、無事に事業承継を実行しています。
成功のポイント
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- 顧問税理士のアドバイスの下、事業承継計画づくりに着手した
- 顧問税理士が事業承継の経験がない先代と後継者を仲立ちしたことで、協議をうまく進められた
M&Aの成功事例①
新分野進出と事業成長の時間短縮のためにM&Aを実施した事例です。広告を制作していく中で、価値あるプロダクトやサービスを届けたいという想いをきっかけにM&Aを検討。プロダクトやサービスを1から創り上げるのは時間も労力も必要なため、まずは経営者仲間から話を聞いていきました。
M&Aの仲介会社選びには苦労しましたが、M&A仲介比較窓口に相談することで2〜3社紹介してもらい、譲り受け企業を決めることができました。M&Aによって従業員規模が大きくなり、従業員の成長の機会を増やせています。
成功のポイント
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- M&A仲介会社が間に入ることで、直接だと聞きにくいことも相談できた
- 自社とカルチャーが合う譲り受け企業を選べた
- 従業員が喜ぶM&Aを意識し、従業員がステップアップしていける機会を作れた
M&Aの仲介会社については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひあわせてチェックしてください。
内部リンク:【M&A 仲介会社】
M&Aの成功事例②
深刻な人手不足を解消するためにM&Aを実施した事例です。採用活動も結果が伴わず、業績も低迷していく中でM&Aによって人材不足を解消しようとしました。
買手候補企業との面談が発生するまで無料で対応してもらえるM&A仲介比較窓口と面談を行い、仲介会社の紹介を依頼。相談してから1年という短い期間で成約できました。
M&Aによって、これまでの採用活動では獲得するのが難しい人材でも獲得しやすくなり、より技術者が活躍しやすい会社になっています。
成功のポイント
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- M&A仲介会社が二人三脚でM&Aをフォローしてくれたことで、譲り受け企業へ交渉がしやすかった
M&Aの成功事例③
後継者不足と売上不振によって廃業を検討していた印刷業のM&A事例です。十分な資金がなくてもM&Aが可能であることを知り、担当の税理士を通してM&A仲介比較窓口に相談することになりました。
譲り渡し先が決まらなかったら廃業することも考え、スピードを重視し、相談から約3ヶ月で成約に至りました。M&Aによって生活が変わり、妻の夢を叶えられる余裕ができたそうです。
成功のポイント
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- 早めに判断したことで譲渡し先を見つけることができた
- M&A仲介比較窓口に知識が豊富な仲介業者を紹介してもらったことにより、短期間でM&Aを実施できた
会社売却をした後の人生については、以下の記事で解説しています。他の事例が気になる人はぜひ読んでみてください。
内部リンク:【会社売却後の人生】
事業承継には何年かかる?
中小企業庁の「事業承継ガイドライン」によると、事業承継が完了するまでに3年以上を要する場合が全体の50%以上を占めています。後継者へ移行する期間が10年以上かかることも少なくありません。
平均引退年齢が70歳前後であることを考慮すると、60歳頃には事業承継に向けた準備をしたほうがよいでしょう。
事業承継の準備を先延ばしにすると、経営者が突然の病気で経営困難になったり、急逝してしまったりした場合に後継者は困ってしまいます。さらに、時間の余裕がないと選択肢も狭まります。
全員が納得できる最適な事業承継をするためにも、早めに準備をスタートしておくのがおすすめです。
M&Aをするタイミングについては、以下の記事をぜひご覧ください。
M&Aで事業や部署を売却!準備プロセスやタイミングを事業承継のプロ・税理士が解説
事例を参考にして事業承継の準備を始めよう
成功事例を見ていくと、事業承継に成功したポイントは以下のようにまとめられます。
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- 事業承継をする側もされる側も準備をするタイミングが早い
- 資金調達は専門家に相談している
- 従業員が納得する後継者を選定している
- 事業承継計画に掲げられた取り組みを実行して事業承継の準備をしている
事業承継には数年を要することがあるため、準備は早めにとりかかるとよいでしょう。資金調達や進め方については、専門家やM&A仲介業者などを頼ることで事業承継を成功に導けます。
ディスクリプション:
「事業承継はどうやって行うのだろう?」「自分の会社はM&Aすべきなのだろうか?」という悩みを抱えていませんか?本記事では、親族内事業承継・従業員への事業承継・M&Aに分けて、事業承継の成功事例9選をご紹介します。
▼監修者プロフィール

岩下 岳(S&G株式会社 代表取締役) S&G株式会社
新卒で日立Gr.に入社。同社の海外拠点立上げ業務等に従事。
その後、東証一部上場のM&A仲介業界最大手の日本M&Aセンターへ入社ディールマネージャーとして、複数社のM&A(株式譲渡・事業譲渡・業務提携等)支援に関与。IT、製造業、人材、小売、エンタメ、建設、飲食、ホテル、物流、不動産、サービス業、アパレル、産業廃棄物処分業等、様々な業界・業種でM&Aの支援実績を有する。現在はS&G代表として、M&Aアドバイザー、及び企業顧問に従事している。