業務提携の進め方とは?手順と注意点を解説!

「業務提携はどうやって進めればよいのか」、「業務提携の手順には何があるのか」、「業務提携を進める場合にはどのような点に注意すればよいのか」、など、疑問に感じているのではないでしょうか。
本記事では、業務提携を検討している法人に向けて、業務提携の進め方と業務提携を進める上での注意点について解説します。
目次
業務提携の進め方の全体像
業務提携とは、自社と他の企業が持つ技術やノウハウ、設備、販路、資金、人材といった経営資源を相互に提供し合う、協力体制を構築することです。自社だけでは困難なプロジェクトを低コスト・低リスクで実現することが、業務提携を行う目的です。
業務提携の主な種類は、以下の3つです。
販売提携 | 自社露地も広い販路を持つ企業と提携し、自社の商品やサービスの販売を委託する契約。 主な販売提携として、販売店契約や代理店契約、フランチャイズ契約などがある。 |
技術提携 | 他の企業が持つ技術を提供してもらうことで、自社の開発・研究を進める。 お互いの企業が持つ技術を相互に提供し合い、共同で開発・研究を進めるケースもある。 |
生産提携 | 他社から生産設備を提供してもらい、自社の商品やサービスを生産する。 主な生産提携として、OEMとODMなどがある。 |
上記以外にも、資本提携や流通提携、包括提携などがあります。
業務提携では、自社の目的に合わせた業務提携の種類を選択することが重要です。
業務提携のメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット |
必要な経営資源を必要な分だけ確保できる 設備投資に大きな予算をかける必要がない 失敗した場合の損失を最小限に抑えられる | 自社が持つ経営資源が流出する恐れがある 業務提携先との関係が希薄化しやすい 法的なトラブルが発生する恐れがある |
業務提携の進め方
業務提携を進める手順は以下のとおりです。
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- 業務提携の準備
- 提携相手を選定する
- 交渉と機密保持契約の締結
- 基本条件の交渉
- 基本合意締結
- 提携先企業・対象業務に関する調査
- プロジェクトチームの立ち上げ
- 最終交渉・提携契約の締結
- 業務提携のスタート
それぞれの手順について解説します。
1.業務提携の準備
業務提携を進める手順の1つ目は、業務提携の準備です。
業務提携の準備で行う手順は、以下の2つです。
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- 業務提携の目的を明確にする
- 業務提携を実現するためのアプローチ方法を決定する
業務提携の目的を明確にする
業務提携は自社の目的を達成するための手段であり、業務提携すること自体を目的としてしまうと、業務提携以外の手段を見逃すことになるかもしれません。他社と業務提携することでどのようなことが実現できるのか、本当に業務提携が必要なのか、業務提携せずに自社だけでプロジェクトを進められないのかなど、業務提携の必要性を明確にすることが重要です。
業務提携の意味や目的とは?メリット・デメリットや進め方、注意点も解説
業務提携を実現するためのアプローチ方法を決定する
業務提携をしたいと考えているだけでは、自社とマッチする企業がみつかることはありません。業務提携を進めるには、自社とマッチする企業をどうやってみつけるのか、どのような方法でアプローチするのかを検討する必要があります。
自力で業務提携先を見つけられない場合は、M&A仲介会社などの専門家に依頼してみるのもよいでしょう。
2.提携相手を選定する
業務提携の効果を高めるためには、高いシナジー効果が見込める企業と業務提携する必要があります。提携相手の選定が不十分なまま業務提携してしまうと、提携相手とトラブルになったり、思ったようなシナジー効果を生み出せなかったりするかもしれません。
業務提携を進めるには、高いシナジー効果が見込める提携相手を選定することが重要です。
3.交渉と機密保持契約の締結
業務提携を進める手順の3つ目は、交渉相手との機密保持契約の締結です。
業務提携の提携先候補企業との話し合いを進める前に、交渉相手と機密保持契約を締結する必要があります。機密保持契約とは、自社が他社に対して開示した機密情報の保持方法や使用目的、試用期間、返還方法などを定める契約です。密保持契約を意味するNon-Disclosure Agreementの頭文字をとり、NDAと呼ばれることもあります。
機密保持契約を締結することで、自社が開示した機密情報を他社が第三者へ漏らしたりするなど、情報漏えいのリスクを低減できます。業務提携の交渉段階においては、自社の内部情報や個人情報、機密情報、技術、ノウハウなどを提示するため、機密保持契約を締結しておかなければ自社の情報が流出するかもしれません。
自社が業務提携を検討していること自体も自社にとっての重要な機密情報のため、業務提携を見据えた話し合いの段階においても、機密保持契約の締結が必要です。
4.基本条件の交渉
基本条件の交渉で行う手順は、以下の4つです。
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- それぞれの役割や分担を決める(提携の範囲と形態の決定)
- 共通の目標やビジョンの設定
- 費用に関する負担・収益の分配についての取り決め
- 知的財産権の帰属先の決定
それぞれの役割や分担を決める(提携の範囲と形態の決定)
業務提携においてそれぞれの企業が果たす役割や、業務提携の範囲・形態を含めた基本条件を交渉します。基本事項の交渉段階のため、具体的に何かを決めたり決定したりするわけではありません。どのような役割や分担で業務提携を進めたいと考えているのか、双方の意見を交換します。
共通の目標やビジョンの設定
業務提携契約を締結することで達成したい目標は何か、どのようなビジョンで業務提携を進めるのか、双方の意見を交換します。
費用に関する負担・収益の分配についての取り決め
業務提携によって発生する費用に関して双方がどのくらいの割合で負担するのか、業務提携によって発生する利益をどのくらいの割合で分配するのか、双方の意見を交換します。
知的財産権の帰属先の決定
業務提携により発生する知的財産権の帰属先をどちらにするのか、双方の意見を交換します。業務提携では知的財産権をはじめとした権利問題のトラブルが発生するケースが多いため、円滑に業務提携を進めるためにも、知的財産権の帰属先に関する取り決めは重要な要素です。
5.基本合意締結
業務提携における基本合意書とは、業務提携の基本的な事項について双方が合意したことを確認するための書類です。基本合意書を意味するMemorandum Of Understandingの頭文字をとり、MOUと表記されることもあります。業務提携に関する交渉が行われ、業務提携の基本的な事項について合意ができたあとに基本合意書を締結します。
ただし、基本合意書に書かれた内容には原則法的拘束力はありません。ただし、例外的に秘密保持や裁判所管轄など、法的拘束力を持たす項目も存在する場合があります。
6.提携先企業・対象業務に関する調査
提携先企業・対象業務に関する調査方法には、以下の2つがあります。
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- フィージビリティースタディ
- DD(デューディリジェンス)
フィージビリティースタディ
フィージビリティースタディとは、プロジェクトが実現可能なものなのか、プロジェクトの実行によってどのくらいの利益が見込めるのか、自社にとってどの程度有益なプロジェクトなのかを調査することです。
業務提携においては、提携先企業が持つ技術やノウハウ、設備、販路、資金、人材といった経営資源を、多角的に調査します。
DD(デューディリジェンス)
デューディリジェンスとは、自社が契約する相手企業の経営状況や財務状況を調査することです。デューディリジェンスを意味するDue Diligenceの頭文字を取って、DDと呼ばれることもあります。
業務提携では、提携先企業の価値や財務面、事業運営状況、労務管理、法的リスクなどを調査します。
デューデリジェンスでの主な調査ポイントは以下のとおりです。
デューデリジェンスの種類 | 調査ポイント |
ビジネスデューデリジェンス | 市場の動向や市場での立ち位置、競合企業、自社とのシナジー効果 |
財務デューデリジェンス | 業績や収益性、簿外債務の有無 |
法務デューデリジェンス | 法令違反や訴訟の有無 |
人事デューデリジェンス | 従業員数や人件費、人事制度、労使関係、採用状況 |
ITデューデリジェンス | 採用している情報管理システムの構成と活用状況 |
デューディリジェンスは、基本的に自社が行います。しかし、自社の調査だけでは得られる情報に限界があるため、提携先企業の協力を得てデューディリジェンスを実施するケースもあります。
7.プロジェクトチームの立ち上げ
提携契約を締結する前にプロジェクトチームを立ち上げておくことで、最終交渉や業務提携契約の提携に向けて、業務提携の具体的なイメージを共有できます。
8.最終交渉・提携契約の締結
最終交渉で双方が業務提携に合意したら、業務提携契約書を作成し、署名捺印することで、業務提携契約を締結します。
9.業務提携のスタート
業務提携契約の締結ができたら、実際に業務提携を進められます。業務提携を進めるうえでの注意点について解説します。
業務提携を進める上での注意点
業務提携を進めるうえでの注意点は、以下の3つです。
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- 契約内容については詳細に検討する
- 積極的にコミュニケーション・情報交換をおこなう
- 一方的に契約を解除できない
契約内容については詳細に検討する
業務提携を進めるうえでの注意点の一つは、契約内容について詳細に検討することです。業務提携では相手企業と契約を締結するため、どのような内容であっても契約内容を守る義務が発生します。自社にとって不利な内容の契約内容だったとしても、契約が締結されれば契約に従わなければいけません。
契約書の内容に間違いはないか、自社にとって不利な内容が盛り込まれていないか、契約解除・更新に関する記載はあるかなど、記載された内容を詳細にチェックしたうえで、業務提携を進めるかどうかを検討しましょう。
積極的にコミュニケーション・情報交換をおこなう
業務提携を進めるうえでは、積極的にコミュニケーション・情報交換をおこなうことも重要です。自社の業務を委託する業務委託やアウトソーシングとは異なり、業務提携では相手企業と密接な協力関係を構築する必要があります。
相手企業とのコミュニケーションや情報交換が不足すれば、業務提携を進めるメリットが失われてしまうかもしれません。相手企業からの連絡や情報提供を待つのではなく、自社からも積極的にコミュニケーションや情報交換を行いましょう。
一方的に契約を解除できない
一方的に契約を解除できないことも、業務提携を進めるうえで注意したい点です。一般的な業務提携では契約の解除に関する項目が記載されており、自社の都合だけで一方的に契約を解除したり、正当な理由がなく契約を解除したりすることはできません。契約期間が満了する前に業務提携の契約を解除するためには、お互いの合意が必要になります。
また、契約期間が設定されている場合も、相手から解約解除の申請がなければ、契約が自動的に更新されてしまう契約もあります。
まとめ
今回は、業務提携の進め方と業務提携を進める上での注意点について解説しました。本記事で解説した手順と注意点を参考に、業務提携を成功させましょう。
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▼監修者プロフィール

岩下 岳(S&G株式会社 代表取締役) S&G株式会社
新卒で日立Gr.に入社。同社の海外拠点立上げ業務等に従事。
その後、東証一部上場のM&A仲介業界最大手の日本M&Aセンターへ入社ディールマネージャーとして、複数社のM&A(株式譲渡・事業譲渡・業務提携等)支援に関与。IT、製造業、人材、小売、エンタメ、建設、飲食、ホテル、物流、不動産、サービス業、アパレル、産業廃棄物処分業等、様々な業界・業種でM&Aの支援実績を有する。現在はS&G代表として、M&Aアドバイザー、及び企業顧問に従事している。