会社売却後の人生はどうなる?役職別の選択肢やメリット、成功のポイントを解説

会社売却後の人生は人それぞれです。悠々自適な人生を送る人もいれば、第二創業や顧問になって現役バリバリで働く人もいます。

しかし、経営者が会社を売却すると、会社や従業員の将来も大きく左右することになります。

会社売却が経営者本人や従業員、会社にとってどのような影響を与えるのか、しっかりと理解しておきましょう。

本記事では、会社売却後の人生やメリット・デメリットを役職別に解説します。会社売却を成功させるためのポイントも紹介するので、ぜひ最後までお読みください。

会社売却後の人生はどうなる?

会社売却後の人生は、以下のように会社に関わる立場によって異なります。

    • 経営者
    • 役員
    • 従業員
    • 株主
    • 取引先

会社に関わるこれらの人が、売却によってどのように変化するのか確認しましょう。

経営者

経営者は、会社売却後に自分が送りたい人生を選択できます。引退後の経営者が選択するのは、主に以下のような人生です。

    • 別の会社や事業を始める
    • 顧問やコンサルタント業を始める
    • 売却資金で自由な人生を過ごす
    • 売却後も役員や相談役として会社に残る

経営者として培った知見や人脈を生かして、新たな会社を立ち上げる人もいれば、顧問やコンサルタントとして若い経営者のサポート側に回る人も存在します。

会社売却によってまとまった資金を手にできるため、海外へ移住するといった悠々自適な生活を送る人も多数います。

また、売却後も会社に相談役の立場で残り、新たな経営陣をサポートするケースも少なくありません。M&Aの条件によっては、売却後一定期間はサポートが必要になるケースも多いので注意しましょう。

役員

役員が会社売却後に送る人生は、主に以下のようなものです。

    • コンサルや顧問になる
    • 他社へ転職する
    • 自分で創業する
    • 会社に残る

役員は会社のオーナーではないため、売却しても多額の現金を手にできません。そのため、海外移住といった自由な人生を歩むことは難しいでしょう。

基本的には、人脈や知見を生かしてコンサルや顧問になるか、他社へ転職するのが一般的です。退職金が高額の場合は、自分で創業する人もいるでしょう。

なお、買収企業に手腕を認められた場合には、買収後に社長へ昇進する可能性もあります。

従業員

会社売却後の従業員の人生は、買収企業の方針によって大きく異なります。

会社が買収されても、基本的に雇用契約自体は引き継がれるため、すぐに仕事が無くなることはありません。

しかし、買収企業の方針によって、これまでとは異なる部署へ配属され、労働環境が変わる可能性はあります。

会社はM&Aの前に「買収後どのような労働条件になるのか」を従業員に丁寧に説明し、動揺しないようにしましょう。

株主

買収後も会社が存続するかどうかは、M&Aの形態によって異なります。吸収合併や新設合併の場合、会社は存続しません。

そのため、株主の立場も以下のように変化します。

    • 吸収合併:買収企業の株主になるか株式の売却代金を現金で受け取る
    • 新設合併:新たに設立する会社の株主になる

一方、事業譲渡であれば譲渡していない事業は確実に存続しますし、株式交換の場合も買収企業の子会社の株主になるか、親会社の株式と交換して親会社の株主になります。

内部リンク:吸収合併

取引先

取引先との契約は譲渡の形態によって異なります。

    • 包括承継:買収後も契約はそのまま継続する
    • 特定承継:再契約の必要性がある

事業譲渡の場合は特定承継に該当するため、取引先との契約も新たに締結しなおさなければなりません。

なお、包括譲渡であっても、取引先との契約にチェンジオブコントロール(COC)条項がある場合、取引先はM&Aを理由に一方的に契約解除できるため契約を継続しない可能性があります。

内部リンク:チェンジオブコントロール条項

【役職別】会社売却のメリット・デメリット

会社売却のメリット・デメリットは、それぞれの役職にとって以下のような内容が考えられます。

 メリットデメリット
経営者
  • 多額の資金が手に入る
  • 従業員や技術やブランドを残せる
  • 個人保証から解放される
  • 心理的不安やプレッシャーから解放される
会社に関与できない
従業員
  • 雇用が存続する
  • 労働条件が改善される可能性がある
  • キャリアアップが期待できる
  • 雇用条件が悪化するリスクがある
  • モチベーションが低下するかもしれない
株主
  • 親会社の株主になれる
  • 現金を受け取れる
  • 会社へ関与できない

順番に詳しく見ていきましょう。

会社売却における経営者のメリット・デメリット

メリット
  • 多額の資金が手に入る
  • 従業員や技術やブランドを残せる
  • 個人保証から解放される
  • 心理的不安やプレッシャーから解放される
デメリット会社に関与できない

経営者にとってのメリットは、売却資金を手にできるだけでなく、長年守ってきた従業員の雇用や技術を承継できることです。

中小企業の経営者は、会社の借金の連帯保証人になっているケースがよくあります。会社を売却すると連帯保証人から外れるため、経営者個人の保証から解放される点はメリットです。

また、経営者としての責任やプレッシャー、責任から解放され、ストレスの少ない生活を送れる人もいるでしょう。

しかし、長年育ててきた会社に関与できなくなるため、寂しさを感じたり生きがいを失ったりするかもしれません。

会社売却における従業員のメリット・デメリット

メリット
  • 雇用が存続する
  • 労働条件が改善される可能性がある
  • キャリアアップが期待できる
デメリット
  • 雇用条件が悪化するリスクがある
  • モチベーションが低下するかもしれない

従業員にとってのメリットは、より大きな会社の一員となることで雇用が継続する点です。買収企業が大きければ、基本給の増加といった雇用条件の改善も期待できるでしょう。

M&Aを契機に新たな部署へ配属になれば、キャリアアップ・スキルアップにつながることもあります。

一方で、買収によって給料が下がるケースもあります。

また、希望して働いた会社が買収されたことで、モチベーションが下がってしまうリスクもあるため、M&A実施前に目的や買収後の労働条件などを丁寧に説明しましょう。

会社売却における株主のメリット・デメリット

メリット
  • 親会社の株主になれる
  • 現金を受け取れる
  •  
デメリット
  • 会社へ関与できないい

株主にとっては、M&Aで他社に事業を承継してもらうことで、親会社の株主になれるか、売却代金を取得できます。

後継者を見つけられずに廃業する企業や、資金繰りが悪化して倒産する企業は多いです。しかし、自社の買収先を見つけられれば、株主は現金や親会社の株式という新たな資産を手に入れられます。

一方、会社の経営や買収企業がおこなうので、株主は経営に関与できなくなります。、

M&Aによって得られるメリット・デメリットを比較したうえで、会社売却を進めていきましょう。

会社売却を成功させる3つのポイント

会社売却を成功させるには、以下3つのポイントを押さえることが大切です。

    • 売却の目的を明確にする
    • 適正価格を把握する
    • 専門家へ相談する

会社売却を成功させられれば、売却後に心置きなく残りの人生を謳歌できます。順番に詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

1.売却の目的を明確にする

まずは「なぜ会社を売却するのか」という目的を明確にすることが重要です。

目的によって、最適な買い手は以下のように異なるためです。

目的最適な買い手
事業承継自社と同じような企業文化をもつ企業
規模拡大大手企業
シナジー効果自社と異なる文化をもつ企業
多額の資金獲得自社をもっとも高く評価する企業

たとえば、シナジー効果を目的として会社売却を検討しているのに、自社と同じ企業文化をもつ企業に買収されると最大限の成果を得られません。

2.適正価格を把握する

M&Aの際、適正価格を把握しておきましょう。相場を把握していないと、購入希望の企業が提示する価格について高いのか安いのかの判断ができません。

自社にとってもっとも有利な条件で会社を売却するためには、自社の資産価格や収益から、いくらが売却価格として適正なのか把握しておきましょう。

なお、中小企業の企業価値を算定する方法として、もっとも簡易でよく使用される方法が年倍法です。

年倍法とは、営業利益の3年から5年分を企業価値として算定する方法です。たとえば、営業利益が2,000万円であれば、6,000万円から1億円程度がM&Aにおける企業価値になります。

まずは自社で企業価値を算定し、その価格を基準として、自社にとってもっとも有利な条件を提示する買収企業を選択しましょう。

M&Aの成功報酬の相場や報酬体系を解説!M&A仲介会社の選別ポイントとは?

3.専門家へ相談する

M&Aの相談は専門家へおこないましょう。

M&Aは、以下のような専門知識が必要な分野が多数あります。

    • 戦略の策定
    • 自社にマッチした相手先企業の選定
    • デューデリジェンスの実施
    • 契約書の作成
    • クロージング
    • PMI
    • 税金の支払い

自社で相手先の選定やデューデリジェンスなどを実施するのは困難です。

また、専門家に依頼したほうがより自社にニーズにマッチした企業を見つけられますし、詳細なリスクを把握できるため安心です。

M&Aの目的やおおよその売却相場を把握したら、M&Aの専門家へ相談してください。

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会社売却する際の注意点3つ

会社を売却するときには、以下3つの点に注意が必要です。

    • ロックアップ期間が設定される
    • 競業避止義務が設けられる
    • 情報漏洩のリスクがある

順番に詳しく解説します。

1.ロックアップ期間が設定される

会社を売却すると、元の所有者である経営者に対し、ロックアップ期間が設定されることがあります。

ロックアップ期間とは、売却も一定期間は会社に留まらなければならない期間のことです。

M&Aを円滑に進めるために、売却後もある程度の期間は元の経営者が会社に残り、買収企業の経営者とともに会社の統合を進めることがあります。

ロックアップ期間が設定されるかどうかについては、M&Aの契約内容によって異なります。

2.競業避止義務が設けられる

会社を売却したあとは、競業避止義務が課されるのが一般的です。

競業避止義務とは「売却した会社の事業と競業する行為をおこなわない義務」のことです。

経営者は、売却した事業に必要なノウハウや人脈をもっているため、競業避止義務がないと買い手企業と競業する事業をおこなう可能性があります。

買い手企業と競業する事業を売り手の経営者がおこなうと、買い手企業のM&Aによる経済的なメリットが少なくなる可能性があります。

買い手企業の権利を守るため、M&Aから一定期間は競業避止義務が課され、特定の業種にはつけません。

3.情報漏洩のリスクがある

会社を売却する話は、社内でもトップシークレットとしましょう。

情報が漏れてしまうと、ライバル企業から妨害が入り売却そのものが進まない可能性があります。

また、従業員に会社売却が知られてしまうと「会社が倒産するかもしれない」と不安になり、退職者が増加するリスクがあります。

取引金融機関の中には、融資金の一括返済を求めるところもあるかもしれません。

会社売却を広く通知するのは、相手との交渉がまとまったあとにし、事前に話をするのはごく近しい一部の役員のみとしましょう。

会社売却後の人生をイメージしながらM&Aを進めよう

会社売却後にどのような人生を送るのかは、経営者や役員、従業員など置かれている立場によって異なります。そして、売却後に得られるものは「何を目的として会社を売却するのか」に大きく左右されます。

まずは売却の目的を明確にし、実現できる可能性が高い相手に会社を買収するのがもっとも良い選択です。

知識のない人が目的に合った買い手企業を見つけることは困難であるため、相手先探しはM&Aの専門家に任せるのがおすすめです。

「TSUNAGU」では、連携M&A仲介会社の買い手企業リストを元に、客観的に売主様に適したM&A仲介会社を選定いたします。売主様の目的に見合った売却先を見つけられ、豊富な買手リストから最短3ヶ月でM&Aが実現できるでしょう。

【ディスクリプション】
会社売却後の人生は役職によって異なり、たとえば経営者の場合は別の事業を始めるといった選択肢があります。本記事では、役職別の会社売却後の人生やメリット・デメリット、成功のポイントや注意点を解説します。

▼監修者プロフィール

岩下 岳

岩下 岳(S&G株式会社 代表取締役) S&G株式会社

新卒で日立Gr.に入社。同社の海外拠点立上げ業務等に従事。
その後、東証一部上場のM&A仲介業界最大手の日本M&Aセンターへ入社ディールマネージャーとして、複数社のM&A(株式譲渡・事業譲渡・業務提携等)支援に関与。IT、製造業、人材、小売、エンタメ、建設、飲食、ホテル、物流、不動産、サービス業、アパレル、産業廃棄物処分業等、様々な業界・業種でM&Aの支援実績を有する。現在はS&G代表として、M&Aアドバイザー、及び企業顧問に従事している。