事業承継アドバイザーとは?業務内容や試験概要などを詳しく解説

事業承継アドバイザーとは、事業承継を考えている中小企業の経営者に対して、専門的なアドバイスを行う資格です。

近年多くの中小企業が抱える後継者問題の解決策として、事業継承を考える経営者が増加していることから注目が高まっています。

本記事では、事業承継アドバイザーの概要や業務内容を紹介したうえで、試験概要を紹介します。

資格を取得するメリットやおすすめの他の資格も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

事業承継アドバイザーとは

事業承継アドバイザーとは、事業承継を検討している中小企業にアドバイスを行う専門家のことです。

近年、中小企業の50%以上が後継者問題をはじめとした理由から、廃業や倒産を検討しています。

廃業や倒産を検討している企業に対し、M&Aを提案して支援をすることも事業承継アドバイザーの業務です。

経営者の中には自身で事業承継アドバイザーを取得し、事業承継をうまく進めようとする方もいます。

ここでは、以下の3つにわけて事業承継アドバイザーについて詳しく紹介します。

    • 業務内容
    • 事業承継士との違い
    • 事業承継アドバイザーの資格の種類

各項目を詳しく紹介するので、ぜひ参考にしてください。

業務内容

事業承継アドバイザーは、事業承継を目指す会社の企業価値や現状を把握し、事業承継計画の立案を行います。

事業承継先が未定の企業である場合は、後継者を探すことも業務のひとつです。

事業の後継者が個人であればヒアリングを行って状況確認をし、M&Aによる事業承継であれば企業の経営状況や財務状況の調査をします。

確認・調査した情報から承継者として適切であるかを判断し、依頼元企業へ伝えます。

依頼元企業が事業承継すると決めた場合は、後継者教育のサポートから事業引き継ぎまでの手続きのサポートを行うのも仕事のひとつです。

M&Aによる事業承継の場合は、手続きのサポートをしながら、M&A後の経営引き継ぎなどのフォローをしていきます。

事業承継士との違い

事業承継アドバイザーと事業承継士は、試験を実施している団体や取得する方の業種に違いがあります。

事業承継アドバイザーは、試験取得を通じて事業承継の基礎知識や親族内承継・親族外承継・M&Aの手法を学べる資格です。

一方、事業承継士は、事業承継の準備段階から実際の手続きまで総合的にサポートをする資格です。

事業承継士は税理士や中小企業診断士などが取得し、事業承継アドバイザーは金融機関の方が取得する資格となっています。

事業承継アドバイザーの資格の種類

事業承継アドバイザーの資格には、以下の3種類があります。

    • 事業承継アドバイザー(BSA)
    • 事業承継アドバイザー3級
    • 金融業務2級

それぞれ詳しく紹介するので、気になる資格がある方は取得してみてはいかがでしょうか。

事業承継アドバイザー(BSA)

事業承継アドバイザーはBSAとも呼ばれており、一般社団法人の金融検定協会が運営している資格です。

銀行員や金融機関の職員が中小企業経営者に対し、事業承継のアドバイスができるようになることを目的として取得されています。

そのため、銀行の支店長や役職のある行員をはじめ、金融機関の職員が取得する資格となっています。

事業承継アドバイザー3級

事業承継アドバイザー3級は、株式会社経済法令研究会が運営していて、銀行員が事業承継相談を受けた際の対応力を向上させる目的の資格です。

2016年に始まったばかりの比較的新しい資格なので、難易度は試験によってバラバラだといわれています。

資格を取得すると金融機関における渉外業務や窓口業務の際に増えている、事業承継の相談にも対応できます。

金融業務2級

金融業務2級は一般社団法人の金融財政事情研究会が認定している資格です。

金融財政事情研究会は、多様化する金融機関の役割に対応して、金融業務に関する多くの能力検定を実施しています。

金融業務2級(事業承継・M&Aコース)が事業承継アドバイザーに対応している資格となっています。

事業承継アドバイザーに関連する試験の概要

事業承継アドバイザーに関連する試験の概要を以下の3つにわけて紹介します。

    • 事業承継アドバイザー認定試験の概要
    • 事業承継アドバイザー3級の概要
    • 金融業務2級の概要

それぞれ詳しく紹介するので、受験を検討している方や試験概要を知りたい方は参考にしてください。

事業承継アドバイザー認定試験の概要

ここでは、事業承継アドバイザー認定試験の概要を以下の2つにわけて紹介します。

    • 試験概要
    • 出題範囲

試験概要

事業承継アドバイザー認定試験の概要は以下の通りです。

試験概要詳細
出題数50問(全問5択問題・各2点)
合格基準100点中60点以上
試験時間150分
受験費用8,400円(税込)
試験日年2回(5月と11月)

事業承継アドバイザー認定試験は全50問で構成されており、各2点となっています。

60点以上で合格となっていますが、「試験結果を踏まえて試験委員会で最終決定される」と但し書きがあるため、点数だけでは合格できない場合もあるようです。

合格に向けた講座学習は3ヵ月程度に設定されていることが多いため、短期間での学習で合格も狙える試験です。

出題範囲

事業承継アドバイザー認定試験の出題範囲は以下の通りです。

設問詳細
事業承継の基礎知識・中小企業の事業承継と金融機関の関与
・事業承継の類型と対応策の概要
・事業承継の進め方
・企業の価値評価
・事業承継と金融機関のコンプライアンス
親族内承継・親族内承継の概説
・自社株承継の法務
・自社株承継の税務
・自社株承継対策の方法
・戦略的承継の方法
従業員・役員・外部への承継とM&A・事業承継M&Aの概要
・事業承継M&Aの基本的な手順
・役員・従業員への承継
・事業承継M&Aへの金融機関の取組み
・事業承継M&Aニーズへの対応

このように、事業承継アドバイザー認定試験の学習を行えば、事業承継やM&Aの基礎知識や業務を理解できます。

基礎知識だけでなく、親族内承継や第三者承継に対する知識も身に付けられるため、取得後に自社の事業承継にも活かせます。

事業承継アドバイザー3級の概要

ここでは、事業承継アドバイザー3級を以下の2つにわけて紹介します。

    • 試験概要
    • 出題範囲

試験概要

事業承継アドバイザー3級の試験概要は以下の通りです。

試験概要詳細
出題数50問(全問4択問題・各2点)
合格基準100点中60点以上
試験時間120分
受験費用5,500円(税込)
試験日年1回(10月)

事業承継アドバイザー3級は全50問で構成されており、全問4択問題ですが、一部事例問題が出題されます。

年に1度しか試験が行われていないため、受験を検討している方は申し込み忘れのないようにしましょう。

出題範囲

事業承継アドバイザー3級の出題範囲は以下の通りです。

設問詳細
事業承継の基本知識・事業承継対策の基本と必要性
・承継方法の決定と計画の立案
・後継者教育
事業承継と金融実務・取引先の現状把握と課題の認識
・各承継方法共通の基本知識
・親族内承継に係る基本知識
・親族外承継(従業員)に関わる基本知識
・親族外承継(第三者)に関わる基本知識
その他関連知識・他の金融機関の事業継承関連の制度等
・事業承継に関わるコンプライアンス

このように、事業承継アドバイザー3級でも事業承継の基礎知識を身に付けることが可能です。

基礎知識に加えて、従業員や第三者承継の知識や取引先の分析方法なども身に付けられます。

金融業務2級の概要

ここでは、金融業務2級の試験概要を以下の2つにわけて紹介します。

    • 試験概要
    • 出題範囲

試験概要

金融業務2級の試験概要は以下の通りです。

試験概要詳細
出題数4択問題:30問
総合問題:10問(正誤解答)
合格基準100点中70点以上
試験時間120分
受験費用7,700円(税込)
試験日通年実施

このように、金融業務2級は4択問題だけでなく事例を用いた正誤解答問題が出題されます。

基礎知識を求められる問題が多く、他の2資格よりも難易度が低い試験です。

金融業務2級はWeb上で申し込みをし、自分で日時や受験するテストセンターを予約し、受験します。

出題範囲

金融業務2級の出題範囲は以下の通りです。

    • 事業承継関連税制
    • 事業承継関連法制
    • M&A基礎知識・関連会計 
    • M&A関連法制
    • 総合問題など

金融業務2級は、対策問題集と似たような問題が多く出題されるため、専門用語が理解できていれば対策がしやすい試験となっています。

暗記だけをしていると専門用語が理解できず問題文が理解できない可能性があるので、知らない用語が出てきたら調べるようにしましょう。

事業承継アドバイザーになるメリット

事業承継アドバイザーになるメリットには、以下の2つがあります。

    • 肩書きが得られる
    • 自社の事業承継にも活かせる

2つのメリットを詳しく紹介するので、資格取得を悩んでいる方は参考にしてください。

肩書きが得られる

事業承継アドバイザーを取得すれば、事業承継のプロとしての肩書きがつくというメリットがあります。

事業承継を専門に扱う国家資格は存在しないものの、ニーズが高まっている仕事なので、注目を集めている資格です。

M&A仲介業者だけでなく、金融機関や税理士・会計士事務所などに事業承継のアドバイスを求める企業も増えています。

相談された際に信用度を高めたいと考える方は、資格取得を目指しましょう。

自社の事業承継にも活かせる

事業承継アドバイザーを取得すれば、税務や法務、M&Aの戦略など幅広い知識を身に付けられる点もメリットです。

近年の後継者問題によって金融機関や税理士・会計士事務所などでも、事業承継の相談が増加しています。

資格を取得しておくことで、相談された際にも適格なアドバイスやサポートができるでしょう。

M&Aアドバイザーや事業承継アドバイザーの資格取得を目指し、自社の事業承継に活かしている経営者も増えてきています。

自社でもスムーズな事業承継を行いたいと考えている方には、事業承継アドバイザーの取得がおすすめです。

事業承継アドバイザー以外のおすすめ資格

事業承継に活かせる資格は以下の3つです。

    • ファイナンシャルプランナー
    • 相続手続カウンセラー
    • 事業承継士

それぞれの資格について詳しく紹介していくので、ぜひ参考にしてください。

ファイナンシャルプランナー

ファイナンシャルプランナーとは、相談者の目標や夢を実現させるために経済環境や収支状況などを踏まえた資金計画を立てていく専門家です。

3級、2級、1級の3種類があり、金融業界で働く方の取得率が高い資格です。

ファイナンシャルプランナーでは、相続や事業承継に関する知識も求められます。

贈与税や相続税などに関する知識も深められるので、事業承継時の金銭トラブルにも対処できるでしょう。

相続手続カウンセラー

相続手続カウンセラーとは、相続に関する専門家のことです。

資格取得後は、士業の方と協力しながら相続の手続きを行ったり、生前対策のアドバイスを行ったりします。

主に不動産や金融、生命保険といった相続に関する問題が発生しやすい業界で勤務する方が多いです。

1度相続手続カウンセラーになれば、知識を深めながら相続に関する観点から事業承継に携わることも可能です。

事業承継士

事業承継士とは、専門的な知識を持ち事業承継の手続きを総合的にサポートする専門家のことです。

資格の取得条件は「一般社団法人事業承継協会が認定した国家資格を保有している人もしくは同等の知識を有する人」となっています。

上記の条件を満たしている国家資格は、弁護士や公認会計士、司法書士などに限られているので注意が必要です。

事業承継を行うために各種の専門家と調整を行いながら、スムーズに手続きができるようにサポートします。

講座の受講によって資格の取得ができるので、資格の取得条件を満たしている方はぜひ取得してみてください。

事業承継アドバイザーを取得して自社の事業承継に活かそう

事業承継アドバイザーとは、中小企業の事業承継について専門的なアドバイスを行う専門家です。

後継者問題をはじめ、事業承継に悩んでいる企業が増えてきているため、注目度が高まってきている資格です。

資格を取得して自社の事業承継を円滑に進めたいと考える経営者も増えています。

ただし、事業承継アドバイザーを取得したからといって、自社の事業承継がスムーズにいくとは限りません。

そのため、事業承継に悩んでいる方は、「TSUNAGU」に相談してみてはいかがでしょうか。

戦略立案や適切なパートナーの選定などを無料で実施しているので、お気軽にご相談ください。

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事業承継アドバイザーとは、中小企業の事業承継に関するプロです。本記事では、事業承継アドバイザーの概要や試験内容、取得するメリットなどを紹介します。

▼監修者プロフィール

岩下 岳

岩下 岳(S&G株式会社 代表取締役) S&G株式会社

新卒で日立Gr.に入社。同社の海外拠点立上げ業務等に従事。
その後、東証一部上場のM&A仲介業界最大手の日本M&Aセンターへ入社ディールマネージャーとして、複数社のM&A(株式譲渡・事業譲渡・業務提携等)支援に関与。IT、製造業、人材、小売、エンタメ、建設、飲食、ホテル、物流、不動産、サービス業、アパレル、産業廃棄物処分業等、様々な業界・業種でM&Aの支援実績を有する。現在はS&G代表として、M&Aアドバイザー、及び企業顧問に従事している。