M&Aで用いられるオリジネーションとは?目的や手順、依頼する仲介会社の選定方法などを紹介
M&Aを検討しているとよく聞くオリジネーションとは、M&Aを進める際の前半部分を行う業務のことです。
本記事では、オリジネーションの概要や目的を紹介したうえで、M&Aの仲介会社を選ぶ方法などを紹介します。
オリジネーションを実施する手順や、M&A仲介会社に依頼する際のポイントなども紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
オリジネーションとは
オリジネーションとは、企業買収を考えている企業との交渉から、基本合意書の締結するまでに発生する仲介者が行う業務のことを指します。
具体的には、交渉用の資料作成やM&A手法の選定、買収企業との交渉など、M&Aに必要な手続きの前半部分を行う業務です。
ここでは、以下の3つにわけてオリジネーションについて紹介します。
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- オリジネーションを行う目的
- ソーシングとの違い
- エグゼキューションとの違い
M&Aを行う際の流れを理解したい方は、参考にしながら重要な項目であるオリジネーションについて理解しましょう。
オリジネーションを行う目的
オリジネーションの最大の目的は、買い手と売り手をマッチングさせることです。
売り手と買い手の目的が一致し、その他の条件が合っていないとM&Aは成立しません。
そのため、M&Aを進める前にオリジネーションを行い、両社の目的や条件を精査することで適切なマッチングを行います。
たとえば、債務超過に陥ってしまったものの、事業や従業員の仕事を残したいから売却を考えている方がいるとします。
債務超過の事業が買収候補の場合、返済義務の発生を避けるために買収したくないと考える企業も多いでしょう。
しかし、中には資金に余裕があるため、技術力やノウハウを手に入れるためにM&Aによって買収をしたいと考えている企業もいます。
そのため、債務超過企業と資金に余裕があり技術力やノウハウを手に入れたい企業をマッチングさせれば、M&Aが成立する可能性が高くなります。
このように、両社にメリットが生まれるように情報収集をし、企業同士とマッチをすることがオリジネーションの目的です。
ソーシングとの違い
ソーシングは、オリジネーションの前に行う業務であり、買い手となる企業の選定をすることです。
M&Aの担当者は売り手企業の情報に興味を持ち、買い手候補を30社程度リストアップします。
さらに、両社にメリットが生まれるかを精査し、5社程度に絞り込む作業を行います。
交渉や基本合意書の締結までの業務がスムーズに行えるように、買い手企業を絞り込む作業がソーシングです。
ただし、M&Aの仲介会社や担当企業によっては、ソーシングとオリジネーションをまとめてひとつの業務として扱うこともあります。
エグゼキューションとの違い
エグゼキューションとは、ソーシングやオリジネーションが終わり、M&Aの最終段階の業務を指す言葉です。
具体的には、基本合意書の締結後の業務である、デューデリジェンスや最終契約書の締結などの業務を行います。
デューデリジェンスでは、買い手企業が負債を背負うリスクやM&A後の利益向上の見通しなどの判断をします。
デューデリジェンス完了後、経営権の移転や書類の引き渡し、代金決済などを行うため、法的な書類が必要です。
そのため、エグゼキューションではM&A仲介会社だけでなく、弁護士や会計士などの専門家によるサポートを受けながら進める業務となります。
オリジネーションの手順
オリジネーションを行う際の手順は以下の通りです。
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- 目標設定と戦略の策定
- 業者選定
- マッチング
- 提案
- 調査・分析
各手順を詳しく紹介するので、M&Aを行う際に自社がすべき対応を理解しておきたい方はぜひ参考にしてください。
1.目標設定と戦略の策定
オリジネーションでは、最初に目標設定と戦略の策定を行います。
目標設定と戦略の策定を行うために、売り手企業はM&Aの目的や理由を明確にしておかなければなりません。
「今のままでは経営が難しいから事業を継続してくれること」を理由にするだけでなく、条件も明確にしておきましょう。
たとえば、以下のような条件を検討してもよいでしょう。
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- 従業員の雇用継続を約束してくれる
- 企業理念を理解してくれる
- 既存取引先との取引を継続してくれる
すべての条件を許容してくれる企業があるとは限らないため、優先順位をつけながら明確にしていきましょう。
2.業者選定
M&Aの目的や理由が明確になったら、利用する業者の選定を行いましょう。
M&Aを依頼できる業者は、M&A仲介会社や各士業、銀行や事業承継センターなど多岐に渡ります。
それぞれ業種や企業規模などによって得意不得意があるため、業者の選定が重要です。
たとえば、M&A仲介会社は中小企業を得意としている企業が多く、銀行は大手企業を得意としている場合が多いです。
企業規模や業種などから自社に適している業者を選定し、スムーズにM&Aが進められるようにしましょう。
M&Aの相談先については以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてチェックしてみてください。
M&Aの相談はどこにすればいい?相談の内容や相手、選定方法などを紹介
3.マッチング
利用する業者の選定が終わると、M&Aを進める企業のマッチングが行われます。
候補の買い手・売り手企業から、M&Aを進めるのに最適な企業同士を探し、交渉を持ちかける業務がマッチングです。
買い手と売り手のどちらかだけでなく、両社にメリットが生まれるマッチングをしなければならないため、交渉が難航することもあります。
両社から提示されている条件をすべて叶えようとするとマッチングが難しい場合があるので、妥協点を探し納得してもらえる交渉力が求められるフェーズです。
4.提案
オリジネーションにおける提案とは、買い手と売り手がM&Aを進める際に利用する戦略や手法を伝える業務です。
提案した戦略に納得してもらえるように、経営者へ説明を行う必要もあります。
M&Aでは株式譲渡や事業譲渡、合併などのさまざまな手法があるので、手法を選んだうえで提案する理由を明確にしなければなりません。
5.調査・分析
提案後は調査や分析などの業務を行います。
マッチングや提案し成約しただけではM&Aの成功とは言えず、買い手と売り手企業が想定通りのメリットを享受できるようにしなければなりません。
オリジネーションの段階で買い手と売り手企業だけでなく、業界動向の調査や分析を行う必要があります。
調査や分析を通して、業態・経営状況を把握し、M&Aを通して想定されるリスクを明確にしておくことが重要です。
M&A仲介会社の4つの選定方法
M&A仲介会社を選定する方法には、以下の4つがあります。
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- コスト
- 担当者の質
- 過去の実績
- 得意な業種・企業規模
4つの選定方法を紹介するので、M&A仲介会社の利用を検討している方は、参考にしながら選んでみてください。
1.コスト
M&A仲介会社を選ぶ際には、必要となるコストを確認しましょう。
コストが発生するタイミングはM&A仲介会社によって異なり、費用総額が変わる可能性もあります。
たとえば、成功報酬型のM&A仲介会社を利用すれば、M&Aが成立するまでコストは発生せず、失敗に終わった際には支払う必要がありません。
一方、契約時やM&Aの途中でコストが発生する場合、結果に関わらず支払いが必要となります。
支払いができない場合はM&Aの交渉が途中で終了してしまうので、譲渡や事業承継ができず廃業を選ぶしかなくなってしまいます。
自社の資金を考慮したうえで、コストの総額や発生タイミングをあらかじめ確認しておきましょう。
事業承継の方法や選択肢について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
関連記事:事業承継
2.担当者の質
M&A仲介会社を選ぶ際には、担当者の質や相性も確認しておきましょう。
担当者の質が悪いとソーシングやオリジネーションがスムーズに行われず、M&Aの成立までに多くの時間がかかってしまう恐れがあります。
また、担当者との相性が悪いと面談や連絡がうまくいかず、M&Aを進めること自体が苦痛になってしまうこともあります。
M&Aをトラブルなくスムーズに進めるためにも、まずは無料相談を行って担当者の質や自社との相性を見極めましょう。
3.過去の実績
M&A仲介会社は多数あるので、過去の実績を確認して適切な業者を選びましょう。
担当者の実績も確認しておくと、手続きを進めていく際のトラブルを避けられます。
M&Aでは専門的な知識を必要とする業務が多いため、実績の有無が信頼に影響します。
実績がないM&A仲介会社や担当者に依頼すると、M&A成立までスムーズに進まず時間だけが過ぎてしまう恐れもあることを理解しておきましょう。
4.得意な業種・企業規模
M&A仲介会社を選ぶ際には、得意業種や企業規模の確認も行いましょう。
M&A仲介会社だけでなく担当者が得意としている分野を確認しておくと、自社に適している業者を選びやすいです。
M&Aの企業マッチングは、仲介会社や担当者が保有しているネットワークの中で行われるため、得意な業種や企業規模は重要なポイントです。
ストレスなくM&Aを進めるためにも、得意な業種や企業規模を確認したうえで依頼する仲介会社を選びましょう。
M&A仲介会社については以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてチェックしてみてください。
M&A仲介会社とは?FAとの違いや選ぶ際のポイントなどを紹介
オリジネーションを業者に依頼する際のポイント3選
オリジネーションを業者に依頼する際のポイントには以下の3つがあります。
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- M&Aを依頼する目的を明確にする
- 資料を用意する
- 優先する条件を伝える
3つのポイントについて紹介するので、自社で準備しておくことを知りたい方は参考にしながら実行してみてください。
1.M&Aを依頼する目的を明確にする
オリジネーションを業者に依頼する際には、M&Aを行う目的や理由を明確にしておきましょう。
M&Aアドバイザーに明確な目的や理由が伝わらないと、M&Aの成立が難航し望んでいる結果を得られない可能性があります。
M&A仲介会社や銀行などにM&Aの相談をする前段階として、依頼をする目的や理由を明確に伝えられるようにしておきましょう。
M&Aの目的について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
関連記事:M&A 目的
2.資料を用意する
オリジネーションを業者に依頼する前に、自社に関する資料を用意しておきましょう。
自社の資料は、M&Aアドバイザーに理解してもらうために使うだけでなく、M&Aの相手にも見てもらうものです。
そのため、M&Aに必要となる情報をまとめた自社資料を用意しておくと、オリジネーションをスムーズに進められます。
自社を客観視しM&Aの条件を再考するきっかけにもなるため、依頼前に準備しておきましょう。
3.優先する条件を伝える
オリジネーションを依頼する前に、M&Aを行う際の条件に優先順位をつけておきましょう。
たとえば、以下のような条件を考えている売り手企業があったとします。
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- 従業員の雇用は継続
- 売却額は〇億以上
2つの条件を必須事項にするのではなく「従業員の雇用を守ってもらうことを最優先事項にし、売却額は可能であれば満たしてほしい」というように優先順位をつけましょう。
すべての条件を満たせることがベストですが、条件数が多いとM&Aの相手が見つからない可能性があります。
そのため、条件には優先順位をつけ、M&Aを進める障壁とならないようにしましょう。
オリジネーションを依頼する際の2つの注意点
オリジネーションを依頼する際には、以下の2点に注意しましょう。
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- 情報漏えいの対策をする
- 秘密保持契約を結ぶ
M&Aを進めている際にトラブルが発生しないように、依頼前から注意点について理解しておきましょう。
1.情報漏えいの対策をする
オリジネーションを依頼する際には、情報漏えいの対策を行いましょう。
たとえば、社内で公表する前に従業員に知られた場合、離職を検討する方が現れM&Aの成立に影響が出る恐れがあります。
取引先に知られてしまった場合、経営難を疑われて取引内容の変更や取引停止といった対応をされてしまうことも想定できます。
M&Aを公表するタイミングよりも前に従業員や取引先に伝わり、トラブルが発生しないようにするためにも情報漏えい対策が必要です。
2.秘密保持契約を結ぶ
オリジネーションを依頼する前に、秘密保持契約を結びましょう。
M&Aを行うためには自社の情報を細かく伝えるため、機密情報も公開しなければならないこともあります。
秘密保持契約を結んでいない場合、機密情報が退社に漏れてしまい損害を被ってしまう恐れがあります。
トラブルの発生を避けるためにも、公開する情報に関する秘密保持契約は必ず結んでからM&Aを進めましょう。
自社でできる準備をしてからオリジネーションの相談をしよう
オリジネーションとは、M&Aを行う際の業務であり、企業の選定やマッチングを行い交渉を持ちかけてM&Aを提案することです。
M&Aの契約を行う準備段階であり、最終交渉の成功に影響を与える重要な業務を指します。
M&Aを成功させるためには、オリジネーション業務が優れている業者を選定するだけでなく、自社資料の作成やM&Aを行う理由・目的の明確化などの準備も必要です。
自社でできる準備をしたうえで、適切な業者を選定し、M&Aの相談から始めましょう。
M&Aに関する相談を検討している方は、当社が運営する「TSUNAGU」に問い合わせてみてはいかがでしょうか。
M&Aの戦略や手法の提案、パートナーの選定などを無料で実施しているので、お気軽にご相談ください。
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M&Aを検討し調べている方の中にはオリジネーションとは何か気になっている方もいるでしょう。本記事では、オリジネーションの概要や目的を紹介したうえで、M&A仲介会社の選び方や注意点などを紹介します。
▼監修者プロフィール

岩下 岳(S&G株式会社 代表取締役) S&G株式会社
新卒で日立Gr.に入社。同社の海外拠点立上げ業務等に従事。
その後、東証一部上場のM&A仲介業界最大手の日本M&Aセンターへ入社ディールマネージャーとして、複数社のM&A(株式譲渡・事業譲渡・業務提携等)支援に関与。IT、製造業、人材、小売、エンタメ、建設、飲食、ホテル、物流、不動産、サービス業、アパレル、産業廃棄物処分業等、様々な業界・業種でM&Aの支援実績を有する。現在はS&G代表として、M&Aアドバイザー、及び企業顧問に従事している。