アプリを売る2つの方法とは?高値で売却するためのポイントも紹介
「自社で開発したアプリを売却したい」
「アプリを売却したらいくらになるのか知りたい」
アプリの売却を検討している方の中には、このような疑問をお持ちではないでしょうか?
アプリはアプリ単体で売却する方法と、会社ごと売却する方法があります。
また、アプリは開発段階、販売段階から意識することで、比較的簡単に高値で売却できるでしょう。
この記事では、アプリの売却方法と価格設定方法、さらに高値で売却する方法について詳しく解説していきます。
目次
アプリ?とは意味や2つの種類を解説
アプリとはアプリケーションの略称で、一般的になスマホやタブレットなどの携帯型のデバイスで起動するソフトウェアのことです。
一般的にアプリといえばスマホやタブレットへダウンロードし、画面上に表示されるアイコンをタップすることで起動するソフトを連想します。
しかしそれは狭義のアプリです。
アプリには大きく分けて以下の2つの種類があります。
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- Webアプリ
- ネイティブアプリ
2つのアプリの種類の特徴を詳しく見ていきましょう。
Webアプリ
WebアプリとはWebブラウザ上で動作するシステムのことです。
たとえば、Webブラウザ内で動作して操作する、インターネットバンキングなどが該当します。
Webサイトという印象が強いですが、Webアプリも広義の意味ではアプリに該当します。
ネイティブアプリ
ネイティブアプリは、AndroidやiOSなどのOSの力を使って動かすソフトウェアです。
スマホやタブレットにダウンロードし、画面上にアイコンが表示され、タップするとソフトが起動する形になっているのが一般的です。
私たちが普段「アプリ」と呼ぶものは、ネイティブアプリをさしています。
なお、M&AにおいてはWebアプリもネイティブアプリも売却が可能です。
アプリ市場の動向
アプリ市場は世界中で拡大中です。
総務省によるとアプリの市場は全世界で拡大を続けており、2017年から2024年までの8年間で売上規模は、約1,207億ドルから4,621億ドルと3倍以上に増加しています。日本では2024年の売上高は387億ドルです。
2017年は日本の市場規模は162億でしたので、日本においても2倍以上の成長を遂げています。
アプリ市場は年々拡大していることから、今後はさらに規模が拡大していくでしょう。
アプリの2つの売却方法
アプリを売却するのであれば、基本的には以下のいずれかの方法で実施します。
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- 事業譲渡
- 株式譲渡
売却する2つの方法について詳しく解説します。
事業譲渡
事業譲渡とは、会社の一部またはすべての資産や権利や義務を譲渡する方法です。
どの資産を売却するのかを個別に検討して売却するため時間と手間がかかりますが、不必要な資産や負債などを譲渡しないのがメリットです。
特定のアプリを売却するのであれば、アプリと事業に携わる人員などが譲渡の対象となるでしょう。
対価は金銭または譲受企業の株式によって支払われます。
株式譲渡
株式譲渡とは、売り手企業の一部またはすべての株式を譲受企業へ譲渡する方法です。
会社全体を売却したり、株式の一部を売却し譲受企業の子会社にする際に利用されます。
株式を譲渡することは会社の所有権や経営権を譲渡することですので、アプリだけを売却することに留まりません。
そのため、アプリに関わる権利や義務だけを売却する場合に利用できる方法ではありません。
売り手の会社が特定のアプリのみを開発しており、アプリ売却=会社売却というケースで利用しましょう。
アプリの売却価格の算定方法
アプリがいくらで売却できるのかについては、売却方法によって異なります。
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- アプリ単体を売却する場合
- 事業譲渡する場合
- 株式譲渡する場合
それぞれの方法でどのように売却価格を算定するのか、詳しく解説していきます。
アプリ単体を売却する場合
アプリを単体で売却する場合は、以下の要素で似たような売却事例を基準とした価格が適用されます。
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- アプリのジャンル
- 利用ユーザー数
たとえば、カードゲームでユーザー数が500万人の場合、同じ条件のアプリが1,000万円で売却されていたら売価は1,000万円です。
同条件で売却されているアプリには、将来生み出すであろう利益から価格が決められています。
売却するアプリも同じような利益を生み出すと想定されるので、同条件で売却されている価格が売値の基準になります。
事業譲渡する場合
事業譲渡する場合には「譲渡する資産+ 2〜3年分の事業利益」で売却価格を決定します。
事業利益とは、当該アプリ事業から生じる利益のことです。
たとえば、アプリ事業で譲渡する資産が5,000万円、事業利益が1,000万円の場合、5,000万円+1,000万円×2〜3年=7,000万円〜8,000万円が売却価格です。
アプリの事業で売却する資産を個別に見積もって「譲渡する資産額」を算出し、そこに企業のノウハウやブランドといった「のれん」を加味して売値を決定します。
株式譲渡する場合
株式譲渡で会社のすべてを譲渡する場合は「純資産+ 2〜5年分の営業利益+役員報酬」で売却価格を算出します。
譲渡する資産の金額と、会社の将来の価値を加味した価格が売却価格になります。
たとえば、純資産が1億円、営業利益が1,000万円、役員報酬が1,000万円の場合、1億円+(1,000万円+1,000万円)×2〜5年=1億4,000万円〜2億円が売却価格です。
会社のすべてを売却するのであれば、上記の計算式で算出された金額が売値になります。
一方、株式の一部を売却するのであれば、上記の計算式で算出された金額×譲渡割合が売値となります。
アプリ売却にかかる期間
アプリの売却にかかる期間は、一般のM&Aにかかる期間よりも短くなります。
売却価格の算定やデューデリジェンスに時間がそれほどかからないためです。
一般的なM&Aには3ヶ月〜6ヶ月程度の時間がかかります。
そのため、アプリ売却の場合には、それよりも短い2ヶ月〜4ヶ月程度の時間で完了すると考えられます。
交渉がスピーディーに進展すればさらに時間が短くなることもあるので、急いで資金を必要としている場合にはアプリ売却に強い専門家へ相談しましょう。
アプリを高値で売却する4つのポイント方法
アプリは以下の4つのポイントを押さえて開発や販売していくことによって、高値で売却できます。
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- ユーザー数やダウンロード数の多いアプリ
- iOSとAndroidの両方に対応したアプリ
- 人材やノウハウなど運営に必要な経営資源を持っている
- 複数の買い手候補と交渉する
開発段階から意識すればそれほど難しくはありません。
高値で売却するための4つのポイントを解説していきます。
1.ユーザー数やダウンロード数の多いアプリ
ユーザー数やダウンロード数の多いアプリは高値で売却できる傾向があります。
M&Aにおいて最も評価されるアプリはアクティブユーザー数が多いです。
アクティブユーザーとは現在進行形でアプリを利用しているユーザーです。
アクティブユーザーが多いアプリは、M&A後すぐに収益へ直結する可能性が高いと判断できるので高値で売却しやすくなります。
反対に、いくらダウンロード数やユーザー数が多くてもアクティブユーザー数が少なければ、実際に使用している人は少ないため、アプリの評価は低くなります。
高値で売却するためには、多くのダウンロード数とアクティブユーザー数を確保することが重要です。
リリース段階から多くのダウンロードを促すため、特典を設けるといった工夫をしましょう。
また、アクティブユーザーを確保するためには、定期的なアップデートやイベント開催などが効果的です。
将来高値で売却するために、計画的に評価されるアプリを育成しましょう。
2.iOSとAndroidの両方に対応したアプリ
iOSとAndroidの双方に対応している方が汎用性は高く、ほとんどのスマホユーザーにリーチできるので売値は高くなります。
開発段階からiOSとAndroidどちらにも対応したものを作ることで、将来的に高値で売却できます。
リリース中のアプリがどちらか一方のOSにしか対応していないのであれば、iOSとAndroid双方に対応させるよう調整しましょう。
3.人材やノウハウなど運営に必要な経営資源を持っている
アプリを運営するために必要な人材やノウハウなどの経営資源を保有している場合は、売値は高くなる傾向があります。
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- 優秀な開発人材
- ユーザー数獲得につながるノウハウ
- ブランド力
アプリだけを売却しても売上を作るノウハウがないと、収益をあげることは難しいです。
また、経営資源は買い手企業にとって別の分野でも活用できるので、アプリ売却の価格を決める際に売り手有利になります。
アプリ開発と同時に人材やブランド力も一緒に育成していくことで、将来的に高値で売却できるでしょう。
4.複数の買い手候補と交渉する
アプリや事業の価値をどのように評価するのかは、最終的には買い手の視点によって異なるので、できる限り多くの買い手候補と交渉することが重要です。
買い手によっては他社よりも非常に高い価格を提示する場合があります。
M&Aの専門家は多くの買い手候補を探せる人脈やノウハウを持っています。
少しでも高値で売却するため、専門家へ依頼してできる限り多くの買い手候補と交渉しましょう。
アプリを売却する流れ
M&A仲介会社へ依頼してアプリを売却する、基本的な流れは以下のとおりです。
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- M&A仲介会社相談し契約
- M&A仲介会社と相談し売価設定
- M&A仲介会社による売却先の選定
- 見込み企業とのトップ面談・売却条件の交渉
- 売り手と買い手で基本合意書を締結する
- 買い手企業が売り手企業に対してデューデリジェンスを実施
- 契約締結・クロージング
M&A仲介会社へ依頼すれば、売値の算定や見込み売却先の選定などを行ってくれます。
買い手企業との交渉も行ってくれるので、自社が希望する条件に近い価格で売却できる可能性が高くなるでしょう。
また、買い手は売り手に法的なリスクがないかを、デューデリジェンスを実施して確認します。
この際も、M&A仲介会社が窓口となってくれるので、売り手は対応に追われる心配もありません。
契約書の作成からクロージングまで行ってくれるので、アプリを高値でスムーズに売却したいのであれば、M&A仲介会社へ相談するとよいでしょう。
アプリ売却は交渉先の数が重要!専門家へ相談を
アプリは対応しているOSやアクティブユーザー数、関わっている人材の質などでも売値が大きく異なります。
開発段階や販売段階から価値の高いアプリにすることを目指したビジネス展開をすることで、売却の際には高値になるでしょう。
アプリの売却価格は買い手によって大きく異なるので、多くの買い手と交渉することが重要です。
多くの買い手候補を探したいのであれば、M&A仲介会社を利用するのがおすすめです。
M&A仲介会社は、相手先の選定から契約書の作成・クロージングまでトータルで任せられます。
高値で売却したい方だけでなく、手続き面も安心して任せられます。
売却方法もいくつかあるので、自社にとって最適な方法で最良の相手へ売却したいのであればM&A仲介会社へ相談しましょう。
ディスクリプション
アプリを売却する方法や高値で売却するポイントを解説します。アプリ売却価格を引き上げるにはポイントがあるので開発段階から意識することが重要です。アプリを高値で売却する方法や流れを詳しく解説していきます。
▼監修者プロフィール

岩下 岳(S&G株式会社 代表取締役) S&G株式会社
新卒で日立Gr.に入社。同社の海外拠点立上げ業務等に従事。
その後、東証一部上場のM&A仲介業界最大手の日本M&Aセンターへ入社ディールマネージャーとして、複数社のM&A(株式譲渡・事業譲渡・業務提携等)支援に関与。IT、製造業、人材、小売、エンタメ、建設、飲食、ホテル、物流、不動産、サービス業、アパレル、産業廃棄物処分業等、様々な業界・業種でM&Aの支援実績を有する。現在はS&G代表として、M&Aアドバイザー、及び企業顧問に従事している。