会社の清算にかかる税金や費用はいくら?残余財産の分配や節税のポイントも詳しく解説

会社を清算する際は、法人税や地方税をはじめとした各種税金や専門家報酬等の費用がかかります。税金や各種費用の支払いは必要となりますが、事前に節税対策等を行っておけば負担を最小限に抑えられる可能性があります。

会社の清算をスムーズに進めるため、清算の際に発生する支出について事前に理解を深めることが大切です。

そこで今回は

  • 会社清算で発生する税金や費用
  • 会社清算時の税金の申告手続きや節税方法
  • 会社を清算するまでの流れ
  • 会社清算時の税金に関する注意点

について詳しく解説します。

会社清算でかかる税金は?

会社清算でかかる税金には、以下の4つが挙げられます。

  • 法人税・地方税
  • 消費税
  • 所得税
  • 登録免許税

税金によって課税対象や計算方法が全く異なるため、十分な理解が必要です。そこで、会社清算でかかる税金の種類ごとに詳しく解説します。

法人税・地方税

法人税・地方税は、事業年度内に発生した会社の所得に対して課される税金です。会社の清算後、法人税・地方税について最低2回は確定申告が必要になります。

1度目は解散した事業年度の分、2度目は残余財産確定事業年度の分です。解散から残余財産確定まで1年以上の期間が空く場合は、1年ごとに清算事業年度の確定申告を行う必要があります。

解散した事業年度については、期首から解散の日までが計算対象です。解散後は事業活動を停止するため売上が発生しませんが、所得がない場合でも確定申告を行う必要があります。なお不動産や有価証券の売却によって収益が発生した場合、法人税・地方税の課税対象になる可能性があります。

消費税

消費税は、解散事業年度と清算事業年度に確定申告および納付が必要です。前提として、消費税は基準期間の課税売上高が1,000万円を超える事業者に納付義務があります。法人の場合、原則としてその事業年度の前々事業年度が基準期間に該当します。

基準期間の課税売上高が1,000万円以下の場合、消費税の免税事業者となるため、清算時も消費税の納付義務はありません。そこで、消費税の課税事業者について解説します。

解散事業年度は通常通り、期首から解散の日までの分について消費税の計算および申告、納付が必要です。清算期間中は、不動産や各種資産の売却によって消費税が発生するケースがあります。ただし、すべてが課税対象になるわけではなく、建物の売却益は課税対象ですが、土地の売却益は非課税となります。

所得税

所得税は、個人の所得に対して課される税金です。会社の清算時、清算会社から株主に分配する残余財産が所得税の対象になる可能性があります。

会社から株主に分配する残余財産は、大きく以下の2つに分けられます。

  • 株主が会社に出資した額:出資の払い戻しとなり、払い戻し額が出資額を上回る部分は課税対象です。
  • 資本金を超える部分:会社からの配当金とみなされる(みなし配当)ため、配当所得として必ず課税対象になります。

このうち資本金を超えた部分、すなわち配当金とみなされる部分は所得税の源泉徴収が必要です。非上場企業の場合、税率は20.42%となります。

みなし配当と株式の譲渡益

残余財産の分配を受けた株主は、以下の2つの所得が発生します。

  • 配当所得。
  • 譲渡所得

配当所得とは、株主に分配する残余財産のうち資本金を超える部分です。非上場会社の配当所得は総合課税が適用されるため、給与所得など他の所得とあわせて所得税の計算を行う必要があります。

また分配を受けた残余財産は株主の出資額部分と資本金を超える部分に分けられますが、このうち株主の出資額部分として分配された額が実際の出資金額を上回る場合、その上回った部分が譲渡所得となります。株式の譲渡所得は分離課税が適用されるため、他の所得と分けて所得税の計算を行う必要があります。

登録免許税

登録免許税とは、登記や登録、許認可等に際して発生する税金です。会社の清算においては、解散登記・清算人および代表清算人の登記・清算結了の登記に登録免許税がかかります。

登録免許税の具体的な金額は、以下の通りです。

  • 解散の登記:30,000円
  • 清算人および代表清算人の選任に関する登記:9,000円
  • 清算結了の登記:2,000円
  • 合計:41,000円

登録免許税は、収入印紙または領収証書で納付します。金額分の収入印紙または領収証書を登記申請書とあわせて提出する「収入印紙貼付台紙」へ貼り付けてください。

出典:株式会社解散及び清算人選任登記申請書

出典:株式会社清算結了登記申請書

会社清算で税金以外にかかる費用

会社清算で税金以外にかかる費用には、以下の2つが挙げられます。

  • 弁護士や税理士など専門家への報酬
  • 官報公告費用

それぞれ費用が発生する理由や相場を紹介します。

弁護士や税理士など専門家への報酬

会社の清算手続きはやるべきことが膨大な上に専門知識も必要なため、専門家に依頼する方法が一般的です。そのため、弁護士や税理士など専門家への報酬が発生します。

税理士への依頼は、ほぼ確実に必要と考えて良いでしょう。なぜなら複数回の確定申告や株主への残余財産の分配に関する計算等、税務の専門知識が必要な場面が多いためです。税理士への報酬額は財務状況や依頼する範囲によって異なりますが、10〜30万円が目安となります。

債務の大きさや取引先との契約状況によっては、弁護士に依頼するべきケースもあります。特に債務超過で破産手続きに進む場合、ほぼ確実に弁護士のサポートが必要です。ケースによっては数十万円と高額になる可能性もありますが、各種交渉から登記までフルサポートを受けられます。

登記関連部分の依頼先は、司法書士となります。基本的な手続きは自身で行い、登記関連のみ司法書士に依頼するケースも多いです。会社清算に際して司法書士へ支払う報酬の相場は10万円前後となります。

官報公告費用

会社清算では債権者保護の手続きとして、廃業の事実を債権者に知らせるために官報公告が必要です。解散の決定後、法務局での「法人の解散・清算人就任の登記」にあわせて公告が掲載されます。

官報公告費用は行数によって決まります。東京都官報販売所の公式サイトによると、解散公告の料金は1行3,263円+消費税です。株式会社兵庫県官報販売所の公式サイトでは、解散公告の行数の目安は約11行、費用は39,482円(税込)とされています。

なお、官報公告をしなくても清算結了登記は手続き上可能です。ただし、会社解散時の官報公告は義務であり、官報公告をしないと罰金の対象になります。後に債権者が出てきてトラブルになる恐れもあるため、必ず官報公告を行いましょう。

出典:東京都官報販売所の公式サイト

出典:株式会社兵庫県官報販売所の公式サイト

会社清算をする際の税金の申告手続き

会社清算をする際、申告が必要になる主な税金として以下の3つが挙げられます。

  • 法人税
  • 地方税
  • 消費税(前々事業年度の課税売上高が1,000万円以下で免税事業者の場合は不要)

解散をした事業年度については、期首から解散の日までの税務申告が必要です。法人税や地方税の計算にあたっては減価償却費等の月割り計算が必要になるケースがあるため、ご注意ください。また赤字で税金が発生しなくても、税務申告自体は必要です。

消費税も同様に期首から解散の日までの税務申告が必要となります。ただし、前々事業年度の課税売上高が1,000万円以下で免税事業者の場合、消費税の納付および申告義務はありません。

解散の日から残余財産確定までに1年以上空く場合は、解散の日から1年ごとに清算事業年度の申告が必要です。

残余財産確定事業年度の申告

残余財産確定事業年度も税務申告を行う必要があります。申告期限は残余財産の確定日から1ヶ月です。

法人税と地方税は、赤字で納付税額がゼロの場合でも税務申告が必要です。なお不動産の売却等で発生した収益は課税対象とみなされるため、残余財産確定事業年度に納付税額があるケースは多くみられます。

消費税は、課税売上および納付税額のどちらもない場合は申告書の提出義務がありません。ただし、建物のような資産の売却や専門家報酬の支払いなどで、清算期間中も課税対象取引が発生するのが一般的です。そのため多くの場合、残余財産確定事業年度に消費税の税務申告も必要になります。

会社の清算をする際の節税方法

会社の清算では、ちょっとした工夫で節税効果を得られるケースがあります。今回紹介する会社清算時の節税方法は、以下の2つです。

  • 役員退職金を活用する
  • 未処理欠損金の引き継ぎ

なお状況によっては、消費税の簡易課税制度の選択や期限切れ欠損金の特例を活用できるケースもあります。節税対策として有用か、そもそも実施できるかは個別判断が必要なため、専門家に相談することをおすすめします。

役員退職金を活用する

役員退職金(役員退職慰労金)の活用は、残余財産が資本金よりも大きい場合に実施できる節税方法です。会社から株主に分配する残余財産のうち、資本金を超える部分は配当所得として課税対象になります。総合課税によって他の所得と合算して計算する必要があり、最大で45%の税率が課される可能性があります。

一方、役員退職金は退職所得の対象となります。所得税の課税対象になる点は同じですが、退職所得は他の所得に比べて適用される控除額が大きいです。そのため金額が同じでも、配当所得より退職所得の方が税負担を抑えられる可能性があります。

そのため残余財産が資本金を超える場合、超過部分を役員退職金にすれば節税効果を得られます。

未処理欠損金の引き継ぎ

未処理欠損金の引き継ぎは、清算する会社がある会社の完全子会社の場合に実施できる方法です。完全支配関係にある子会社の残余財産が確定した場合、清算する子会社の未処理欠損金額を親会社が引き継げます。

未処理欠損金の引き継ぎのポイントとして、以下の2点が挙げられます。

  • 親会社が引き継げるのは、残余財産の確定の日の翌日前7年以内に開始した事業年度分の欠損金 下記の※にあるように繰越欠損金の使用期間は最長10年で、一定の要件を満たした場合にはすべてを親会社に引き継ぐことが可能です。
    ※欠損金の繰越自体は、最長10年です。そのため欠損金の発生した時期によっては、親会社で残額すべてを引き継げない可能性があります
  • 未処理欠損金額は、残余財産確定日の翌日の属する事業年度において引き継がれます

そもそも論で恐縮ですが、未処理欠損金の引継ぎが認められているのは、100%親会社の場合には、子会社が清算した場合の子会社株式の清算損が損金に算入されないことと整合を取るための規定です。したがって、節税方法とはいえないように思いますが、いかがでしょうか。
なお、節税方法としては、清算する会社で、期限切れ欠損金を使用できるケースがあるということを記載した方が、しっくりきますので、ご検討ください。

会社を清算する場合の流れ

会社を清算する流れは、大きく以下の8つの工程に分けられます。

  • 解散決議の実施
  • 清算人の選任と登記
  • 財産を調査して株主総会で承認
  • 債権者への通知と債権申告の受付
  • 事業年度の確定申告
  • 残余財産を分配
  • 株主総会で清算結了報告
  • 清算結了登記

それぞれの工程について詳しく解説します。

1.解散決議の実施

会社の清算手続きを進めるためには、まず会社の解散が必要です。また会社を解散するには解散決議を行う必要があります。

解散決議の方法は、以下の2パターンです。

  • 株主総会における特別決議
  • 株主全員による書面決議

特別決議は議決権を有する株主の過半数が出席し、かつ議決権の3分の2以上の賛成が要件となります。また一般的には、解散決議と同時に清算人の決定も行います。

清算人とは会社の解散後に清算事務を行う人を指し、代表取締役が清算人になるケースが多いです。清算人の選任に関する決議は、主に普通決議で行われます。

なお定款で清算人について定めがある場合には、株主総会で決議せずに定款に沿って清算人が選任されます。

2.清算人の選任と登記

会社が解散した日から2週間以内に、法務局で解散の登記が必要です。解散登記と同時に清算人の登記も行います。もし清算人の選任が未済の場合、登記の期日に間に合うようすみやかに進めましょう。

解散および清算人の登記では、以下のような書類の提出が必要です。

  • 登記申請書
  • 定款
  • 株主総会の議事録
  • 株主の氏名または名称、住所および議決権数等を証する書面
  • 清算人の就任承諾書
  • 収入印紙または領収証書を貼付した収入印紙貼付台紙

登記手続きの完了後、税務署や都道府県・市町村などに解散において必要な届出を提出します。

3.財産を調査して株主総会で承認

清算人は解散した日における会社の財産を調査して、調査結果に基づき財産目録と貸借対照表を作成します。財産目録とは、会社が保有するすべての資産および負債を区分・種類ごとに一覧にしたものであり、財産の状況を明らかにするために作られます。

貸借対照表はある時点における会社の財政状況を表す書類であり、清算手続きにおいては財産目録を元に作成します。財産目録および貸借対照表を作成後、株主総会で承認を得る必要があります。

4.債権者への通知と債権申告の受付

会社に債務がある場合、債権者に対して解散する旨の通知が必要です。債権者への通知は、官報公告および個別の催告を通じて行います。

官報とは国が発行する機関紙で、国の政策や国民の権利義務に関する情報を一般の人に広く知らせることを目的としています。官報への掲載期間は、2ヶ月以上です。

会社が把握している債権者に対しては個別に催告し、債権の申出を促します。もし会社側と債権者側で把握している債権債務の内容に相違がある場合、正しい金額の確認が必要です。

5.事業年度の確定申告

会社の解散後に確定申告が必要になる事業年度には、以下の3つが挙げられます。

  • 解散事業年度:申告および納税の期日は、解散日の翌日から2ヶ月後です
  • 清算事業年度:解散してから残余財産確定までに1年以上かかる場合、解散日から1年ごとに確定申告が必要です
  • 残余財産確定事業年度:残余財産確定後、最後の事業年度分について確定申告を行います。申告および納税の期日は残余財産確定の日の翌日から1ヶ月後です

会社清算で発生する税金として、法人税・地方税・消費税等が挙げられます。法人税および地方税は、課税対象となる所得がなくても税務申告は必須です。消費税は免税事業者もしくは課税売上高・納付税額の両方がゼロの場合は、申告の必要がありません。

法人税・地方税・消費税は、課税対象となる所得や売上がある場合、納税義務が発生する点に注意しましょう。

6.残余財産を分配

残余財産とは、全債務を弁済した後に残った資産を指します。残余財産は株主に分配しなければなりません。

株主が一人の場合は、その株主が残余財産すべてを受け取ります。株主が複数人の場合、保有株式に応じて分配されます。

なお残余財産確定までの大まかな流れは、以下の通りです。

  1. 売掛金や貸付金など、会社の債権を回収する
  2. 不動産や棚卸在庫などすべての財産を現金化する ※前段階の前および同時進行も可
  3. 借入金や買掛金・未払金等の債務を支払う

ただし、債務の弁済を開始できるのは官報公告期間が過ぎた後です。債権申出期間中の弁済は原則として禁止されており、裁判所の許可を得ず期間中に弁済してしまうと過料に処される恐れがあるためご注意ください。

また残余財産の確定後1ヶ月以内(その課税期間終了の日の翌日から1か月以内に残余財産の最後の分配等が行われる場合には、その行われる日の前日まで)←残余財産の前提としている章であるため、補足した方がいいように思いました。に、残余財産確定事業年度分の確定申告が必要です。

7.株主総会で清算結了報告

残余財産の分配後、清算に関する決算報告書を作成します。決算報告書に記載するべき内容の例は、以下の通りです。

  • 資産の処分によって換価(現金化)した額
  • 回収した債権額
  • 債務の弁済や清算手続きに際して発生した費用
  • 残余財産の金額
  • 1株あたりの配当金

決算報告書の作成後、すみやかに株主総会を開いて承認を受ける必要があります。株主総会での承認によって会社の法人格が消滅し、清算結了となります。

8.清算結了登記

株主総会での承認後2週間以内に、法務局で清算結了登記が必要です。清算結了登記では、登録免許税として2,000円かかります。

清算結了の登記申請後、各公的機関へ清算結了の届出を行います。すべての届出を提出すれば、会社の清算手続きが完了です。

なお清算人は清算結了登記から10年間、清算した会社の帳簿や書類を保管する必要があります。

会社清算時の税金に関する注意点

会社清算時の税金に関する注意点として、以下の3つが挙げられます。

  • 法人がなくなっても納税義務は残る
  • 残余財産の確定前に納税額の計算をする
  • 代表者からの貸付金は財産の対象に

会社清算時の税金についてトラブルを避けるため、事前に注意点について十分な確認をしておきましょう。注意点についてそれぞれ詳しく解説します。

法人がなくなっても納税義務は残る

清算結了により法人が完全に消滅した後も、清算した会社の納税義務は残り続けます。前提として、税金の滞納中も会社の解散や清算手続きは可能です。税金の滞納が理由で清算手続きが差し止めとなることもありません。ただし、法人の納税義務は消えず、清算人が引き継ぐことになります。

会社清算時の税金や諸費用を払うのが難しそうとわかっている場合は、休眠という選択肢もあります。会社の休眠に費用はかからず、税務署・年金事務所・都道府県税事務所・市区町村役場へ必要書類を提出するだけですみます。

そのため会社を休眠させて事業を一旦停止し、十分な資金を確保してから事業再開もしくは解散・清算手続きを行うのも1つの手段です。

第二次納税義務とは?

第二次納税義務とは、納税義務のある者が税金を滞納した場合、納税義務者と関係のある者に第二次的に納税義務を負わせる制度です。会社が税金を滞納したまま清算結了した場合、清算人が第二次納税義務者として納税義務を引き継ぎます。清算結了登記により会社の存在は消滅するものの、税金を完納するまでは税務上の清算手続きは完了していない状態でとなります。

なお清算人が二人以上いる場合、その全員が第二次納税義務者となります。

税金の納付期限を1年延長可能

第二次納税義務者として引き継いだ税金の納付が困難な場合、国税の猶予制度を検討するのも良いでしょう。国税の猶予制度とは、一定の要件を満たす場合に税金の納付期限を延長できる制度です。延長できる期間は原則として最長1年ですが、状況によってはさらに1年猶予されるケースがあります。

猶予制度の適用を受けるには、以下のうちいずれかの要件を満たす必要があります。

  1. 納税者本人が財産について災害または盗難による被害を受けた
  2. 納税者本人または生計を同じにする家族が病気になった
  3. 納税者が営む事業についてやむを得ず休廃業をした
  4. 納税者が営む事業について、利益の減少等により著しい損失を受けた

清算に際して猶予制度を活用する場合、一般的には3に該当するでしょう。納税の猶予が認められる金額は、休廃業に関して生じた損失や費用に相当する金額となります。

出典:国税庁

滞納処分の執行停止制度

滞納処分の執行停止制度とは、一定の要件を満たす場合に滞納処分の執行を停止する制度です。以下のいずれかに該当する場合に適用されます。

  • 滞納処分できる財産がない、もしくは国税に優先する質権等があるため国税に充てられる金額がない
  • 滞納処分によって滞納者の生活を著しく窮迫させる恐れがある
  • 滞納者の所在および滞納処分できる財産が不明である

滞納処分の執行停止後3年間処分が継続された場合、3年を経過した時に納税義務が消滅します。

残余財産の確定前に納税額の計算をする

残余財産の確定前に、納税額を計算しておきましょう。残余財産の額によっては大きな納税義務が生じる恐れがありますが、残余財産の確定後は節税対策がほぼ不可能です。そのため残余財産を確定させる前に納税額を計算しておき、役員退職慰労金や簡易課税制度などを利用して、納税額を抑える工夫をする必要があります。

ただし、残余財産確定前でも必ずしも節税対策を実施できるとは限りません。また過度な節税対策は脱税行為とみなされ、追徴課税の対象になる恐れがあります。そのため残余財産確定前に納税額の計算をするには、税務に関する専門知識が必要です。

確実な節税対策のためには、早めに税理士や公認会計士へ相談することをおすすめします。

代表者からの貸付金は財産の対象に

会社の役員借入金、すなわち代表者をはじめとする役員からの貸付金は財産の対象になります。会社の清算手続きに際して、役員借入金も債務として弁済を進める必要があります。

役員借入金は役員にとって債権のため、通常であれば返済された額に所得税は課されません。ただし役員借入金が使途不明金の処理に使われていた場合、債権債務の性質を有していないと判断され、所得税の課税対象になる恐れがあります。役員からの借入金に所得税が課されるというイメージがないのですが、具体的にどのようなケースを想定してからご確認頂けると幸いです。

また代表者からの貸付金は、代表者本人にとって財産に該当するお金です。そのため代表者にもしものことがあって会社を清算する場合、役員借入金は相続財産とみなされてしまいます。

いずれにせよ、役員借入金は扱いに注意が必要な勘定科目です。そのため、なるべく早い段階で専門家に相談しておく方法がおすすめです。

まとめ

  • 会社の清算時は、法人税・地方税・消費税・登録免許税等の税金がかかる
  • 法人税と地方税は納付税額がゼロでも申告義務がある
  • 確定申告が必要な事業年度として、解散事業年度・清算事業年度・残余財産確定事業年度の3つが挙げられる
  • 税金の滞納があっても清算手続きは可能。ただし清算人に納税義務が引き継がれる
  • 役員退職金の活用などにより、会社清算時の税負担を抑えられる可能性がある

会社清算の手続きや清算時に発生する税金については、細かなルールが定められています。手続きをトラブルなくスムーズに進めるため、清算手続きを始める前に税金関連について十分に理解を深めておきましょう。

今回は会社清算時の税金について詳しく解説しましたが、税務関連は専門知識が必要な場面が多く存在します。判断に迷った際や疑問・不安がある場合は、無理に対応しようとせず専門家にご相談ください。

▼監修者プロフィール

岩下 岳

岩下 岳(S&G株式会社 代表取締役) S&G株式会社

新卒で日立Gr.に入社。同社の海外拠点立上げ業務等に従事。
その後、東証一部上場のM&A仲介業界最大手の日本M&Aセンターへ入社ディールマネージャーとして、複数社のM&A(株式譲渡・事業譲渡・業務提携等)支援に関与。IT、製造業、人材、小売、エンタメ、建設、飲食、ホテル、物流、不動産、サービス業、アパレル、産業廃棄物処分業等、様々な業界・業種でM&Aの支援実績を有する。現在はS&G代表として、M&Aアドバイザー、及び企業顧問に従事している。