リテイナーフィーとは?相場や意味、メリット・デメリットを詳しく解説

リテイナーフィーとは、M&A仲介会社に対して毎月支払う料金(定額顧問料)のことです。

相場は月額100〜300万円と決して安くなく、金銭的に大きな負担が必要です。しかし、リテイナーフィーを支払うことで、スムーズかつ自社にマッチしたM&Aを実現できる場合があります。

本記事では、リテイナーフィーの相場やメリット・デメリット、注意点などを詳しく解説します。仲介業者とのやり取りを円滑にし、M&Aを成功させたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

リテイナーフィーとは?

リテイナーフィー(Retainer fee)とは、M&A仲介会社に対して支払う月額報酬(定額顧問料)のことです。

M&A仲介会社の中には、成功報酬だけでなく毎月定額の顧問料を設定する業者があり、そのような業者と契約した場合には、リテイナーフィーの支払いが必要になります。

リテイナーフィーを支払う意味や期間

リテイナーフィーを支払う意味は、M&A仲介業者から継続的なサポートを受けるためです。

リテイナーフィーを支払うことで、相手先のリストアップやM&A戦略の立案などから相手先との交渉まで、丁寧なサポートを受けられます。

一般的にリテイナーフィーの支払期間は、M&Aの依頼からクロージングまでとなっています。期間中は、毎月決められたリテイナーフィーを支払わなければなりません。

リテイナーフィーを廃止する業者も増加

リテイナーフィーは、すべてのM&A仲介業者で発生するわけではなく、廃止する業者も増えています。

最近はM&A仲介業者の競争が増えていることから価格競争になっており、リテイナーフィーは完全無料としている業者も存在します。

このような業者は、以下のような条件に設定していることが一般的です。

    • 中間金と成功報酬の2回の支払いのみ
    • 成功報酬のみ

しかし、料金システムによって受けられるサービスの種類や質は異なるため、料金体系に応じてどのようなサービスが受けられるのかを吟味することが重要です。

リテイナーフィーの相場

リテイナーフィーの金額はM&A仲介会社によって異なりますが、月額100万〜300万円程度が一般的です。

料金の内訳は、以下の2つで構成されています。

    • 案件発掘や書類作成や企業調査にかかる実費
    • M&A仲介業者へ支払う報酬

料金は業者や案件の規模によって異なるため、小規模事業者が依頼する場合は低くなることもあるでしょう。

また、リテイナーフィーは毎月発生するため、契約締結までの期間が長引けば負担は大きくなりますが、短期間であれば負担は小さくなります。

リテイナーフィーは依頼する企業の規模と、契約締結までの時間で変動する点が特徴的です。

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リテイナーフィーを支払う3つのメリット

リテイナーフィーを支払うメリットは以下の3つです。

    • 時間をかけてM&Aの相手先候補を見つけられる
    • 成功報酬を抑えられる
    • 最適な案件を見つけやすい

順番に詳しく解説します。

1.時間をかけてM&Aの相手先候補を見つけられる

リテイナーフィーを支払うことで、時間をかけてじっくりとM&Aの相手先企業を見つけられます。

リテイナーフィーが発生しない業者では、M&Aが成約にならないと仲介業者への報酬は発生しません。そのため、リテイナーフィーがない業者では、成約を焦らされてしまうことがあります。

リテイナーフィーが発生する業者であれば、M&A仲介業者が成約を急かせる理由がないため、自社にとって最適な相手先を時間をかけて見つけられます。

2.成功報酬を抑えられる

リテイナーフィーが発生するM&A仲介業者では、成功報酬が低めに設定される傾向です。

リテイナーフィー無料の業者は成約時にしか報酬が発生しません。そのため、報酬が高くなっており、M&A締結時には多額の資金が流出します。

一般的に成功報酬の相場は買収金額の1%〜5%程度です。しかし、リテイナーフィーありの業者は相場よりも安くなります。

リテイナーフィーを支払えば、M&A実施の際の資金流出を抑えられるため、資金繰りしやすいメリットがあります。

3.最適な案件を見つけやすい

リテイナーフィーありの仲介業者を利用すると、自社にとって最適な相手先を見つけやすくなるかもしれません。

急かされることなくM&Aを進められるため、戦略の策定から相手先の選定と交渉まで、時間をかけてじっくりおこなえるためです。

リテイナーフィーありの業者は、継続的なサポートを受けられるため、時間をかけてでも最適な事業承継先を探したい場合におすすめです。

リテイナーフィーを支払う3つのデメリット

リテイナーフィーを支払うことには、メリットだけでなくデメリットもあります。

    • 成約が先延ばしになるリスクがある
    • 総額の費用負担が大きくなる
    • M&Aの条件を熟慮せず相手先企業を決めてしまう

3つのデメリットについて詳しく見ていきましょう。

1.成約が先延ばしになるリスクがある

リテイナーフィーありの業者の中には、成約に至るまで不要に長い時間がかかる場合があります。

これは、契約に至るまでの時間が長くなるほど、業者は多くのリテイナーフィーを受け取れるためです。何かと理由をつけて、クロージングさせないようにすることも考えられます。

できる限り短時間かつ低コストでM&Aを実施したい場合は、リテイナーフィーありの業者を選ばないほうがよいでしょう。

2.総額の費用負担が大きくなる

一般的にリテイナーフィーありの業者のほうが、成功報酬のみを支払う業者よりも総額の負担は大きくなります。

リテイナーフィーありの業者は、たしかに成功報酬が低くなりがちですが、それでも毎月のリテイナーフィーの負担のほうが大きいです。

さらに、リテイナーフィーの総額はM&Aが完了するまでの期間によって左右するため、総額負担を先読みできません。

費用を抑えて利用したい場合には、あらかじめM&A完了までの目標期間を定めて、相手探しを進めていきましょう。

3.M&Aの条件を熟慮せず相手先企業を決めてしまう

リテイナーフィーありの業者に依頼した場合、M&Aの条件をよく検討せずに相手先企業を決めてしまうリスクがあります。

「毎月高いお金を支払っているのだから、M&Aを実施しないと損になる」という心理が働くためです。

また、リテイナーフィーを支払う業者の担当者とは密に連絡を取り合うため「M&Aを実施することは当然」という心理になることもあります。

相手先や条件を熟慮せずに決めてしまい、M&Aが失敗に終わってしまうリスクもあるでしょう。

M&Aは会社や従業員の将来を大きく左右するものであることを認識し、相手先の選定や実施の可否を熟慮したうえで決定してください。

リテイナーフィーを支払う前の2つの注意点

リテイナーフィーが設定されている業者と取引する際には、以下の2点に注意が必要です。

    • コンコルド効果でも冷静に判断する
    • 期間を決めて契約する

あらかじめ期間を決めて、冷静に契約の可否を判断することが重要です。

リテイナーフィーを支払う際に重要な2つの注意点を解説します。

1.コンコルド効果でも冷静に判断する

リテイナーフィーを支払っていると、コンコルド効果によって冷静な判断ができなくなる可能性があります。

コンコルド効果とは、投資を続けると損失が出るとわかっていながら、投資した分を惜しみ投資を継続してしまう心理状態を指します。

M&Aにおいては「これまで継続してリテイナーフィーを支払ってきたのだから、ここでやめるわけにはいかない」という心理になり、自社のためになるかどうかを検討せずに実施してしまうケースです。

結果的にM&Aが失敗に終わり、これまでに支払ったリテイナーフィー以上の損失が発生するリスクもあります。

リテイナーフィーを支払っている場合には、コンコルド効果に十分注意し、冷静にM&Aの判断をおこないましょう。

2.期間を決めて契約する

リテイナーフィーを支払うM&Aでは、あらかじめ契約完了までの目標期間を定めておくことを推奨します。

リテイナーフィーは期間が長くなるほど負担が大きくなるため、期間を定めないとコンコルド効果に陥るリスクが高いためです。

出費を増やさないかつM&Aに失敗しないためにも、あらかじめ期間を定めてM&Aの相手先を探し、期間を超えたら立ち止まることも検討しましょう。

リテイナーフィーの支払いを検討する際の2つのポイント

リテイナーフィーを支払う際のポイントは以下の2つです。

    • 料金の仕組みを理解して金額をシミュレーションする
    • 仲介業者を比較検討する

順番に詳しく解説します。

1.料金の仕組みを理解して金額をシミュレーションする

M&A仲介業者へ支払う料金は、リテイナーフィーだけではありません。

どのような費用が発生するのかを事前に理解し、トータルでいくら必要になるのかあらかじめシミュレーションしておかないと、あとからお金が足りなくなる可能性があります。

とくに、M&Aが完了した際に支払う成功報酬には注意してください。M&A仲介業者は、成功報酬を計算する際にレーマン方式という料金体系を採用することが一般的です。

レーマン方式とは、M&Aの基準額に応じて報酬料率が逓減する仕組みです。そして、基準額として何を使用するのかは業者によって異なり、以下のようなものが使用されます。

    • 企業価値
    • 移動総資産
    • 譲渡価格
    • オーナーの受取額

基準額が何なのかによって成功報酬は異なります。

事前に料金体系や種類を確認し、リテイナーフィー以外にどのような費用がいくら必要になるのかを理解しておきましょう。

内部リンク:レーマン方式

2.仲介業者を比較検討する

業者によって料金体系は大きく異なるため、複数のM&A仲介業者を比較検討することも重要です。

リテイナーフィーが設定されていない業者でも、M&Aを急かせることなく時間をかけてサポートしてくれる業者も存在します。業者によって得意とする業種も異なるため、自社が所属する業界に強みをもっている業者がよいでしょう。

1社としか交渉しないと、自社に合わない条件で契約させられてしまったり、料金が高くなったりするリスクがあります。

あらかじめ自社が仲介業者やM&Aに求める条件をリストアップし、許容できる範囲とできない範囲を決めておくことが大切です。

できるだけ複数の業者へ問い合わせをおこない、自社の条件に最もマッチする業者と契約しましょう。

リテイナーフィーは専門家へ相談して支払いを検討しよう

リテイナーフィーはM&A仲介業者へ毎月支払う料金です。相場は月100万〜300万円と高めですが、支払うことで時間をかけて自社に合った相手先を見つけられます。

リテイナーフィーの支払いがある業者とない業者の両方を比較検討して、自社に最適なM&A仲介業者を探すことが重要です。

しかし、専門知識のない方が自社に合った仲介業者を探すのは難易度が高いかもしれません。そのため、事業承継に詳しい専門家に意見を聞くことをおすすめします。

当社が運営する「TSUNAGU」、完全成功報酬型のM&A仲介会社比較サービスです。売主様はM&A成立時に連携M&A仲介会社に手数料をお支払いいただいております。

成果報酬型でありながら、M&Aの品質を担保するための基準を遵守いただく仕組みを整備し、売り手企業にとっての安心・安全を保証しています。

【ディスクリプション】

リテイナーフィーとは、M&A仲介業者に支払う月額報酬(定額顧問料)のことです。この記事では、リテイナーフィーの意味や相場、メリット・デメリットや注意点を解説します。

▼監修者プロフィール

岩下 岳

岩下 岳(S&G株式会社 代表取締役) S&G株式会社

新卒で日立Gr.に入社。同社の海外拠点立上げ業務等に従事。
その後、東証一部上場のM&A仲介業界最大手の日本M&Aセンターへ入社ディールマネージャーとして、複数社のM&A(株式譲渡・事業譲渡・業務提携等)支援に関与。IT、製造業、人材、小売、エンタメ、建設、飲食、ホテル、物流、不動産、サービス業、アパレル、産業廃棄物処分業等、様々な業界・業種でM&Aの支援実績を有する。現在はS&G代表として、M&Aアドバイザー、及び企業顧問に従事している。