PMIとは?M&Aで重要な理由を解説!目的や流れ・成功のポイントも紹介

「PMIとは?」

「PMIの重要性や目的は?」

と疑問を抱いている方のために、本記事で下記の項目を解説します。

    • PMIの重要性
    • PMIを実施する目的
    • PMIの具体的な進め方
    • PMIを成功させるための4つのポイント

M&Aは成約がゴールではなく利益の最大化こそ目指すべき姿であり、それを実現するためにPMIの実施は重要です。

しかし、PMIの目的や進め方を理解しないままM&Aを実施すると、M&Aによる利益の最大化を実現できません。

本記事で解説するPMIの目的や進め方・成功させるためのポイントを理解して行動すれば、M&Aによる利益の最大化を実現できるでしょう。

PMIとは?M&A後の統合プロセス

PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)とは、M&A完了後に両社の組織・システム・文化などを一体化するため行われる統合プロセスです。

経営・業務・意識の統合プロセスを経て、ようやくM&Aによる最大限の効果を得られます。

そのため、企業同士の経営統合を成功に導くために、PMIは重要な戦略のひとつと言えます。

PMIの重要性

M&Aが成立した後のPMI(統合プロセス)は、取引の成功にとって非常に重要です。

PMIを適切に実施すれば、M&Aの目的である成長加速・コスト削減・市場シェアの拡大などが達成できるでしょう。

一方で、PMIが不十分だと下記のような多くの問題が発生する場合があります。

    • 企業文化の衝突
    • 業務効率の低下
    • 従業員のモチベーション低下

M&Aによる統合後は会社全体が混乱しやすいため、業務上のミスやトラブルが起きやすくなります。

また、顧客離れや社員の流出・内部対立などが原因で、業績の悪化にもつながります。

このような事態を防ぐためにPMIを実施し、初期段階でM&Aによる問題点に対しての事前検証や、統合後の組織マネジメントを進めることが大切です。

PMIを実施する目的5つ

PMIを実施する目的は、下記の5つです。

    • 新しい組織や経営体制の構築
    • 制度の統合
    • 業務システムの統合
    • 評価基準の見直し
    • 取引先や事業内容の精査

次項でPMIを実施する目的について詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。

1.新しい組織や経営体制の構築

企業を統合したあとに円滑に業務を進めるためには、新しい組織や経営体制を構築する必要があります。

意思決定のプロセスや伝達・共有方法を見直し、両社の従業員が納得できる体制を整えることで、組織全体の方向性を一致させることが可能です

仮に、両社の違いをそのままにしておくと、組織内での対立や人材流出につながり、当初想定していたシナジー効果を実現できない可能性もあります。

組織や経営体制を構築する具体的なプロセスは、下記の通りです。

    • 新しいチームリーダーシップの選定
    • 適切な人員配置
    • 各部門やチームの役割の明確化
    • 情報伝達フローの確立
    • 意思決定プロセス

これらを実施し、経営統合後の利益拡大に繋げましょう。

2.制度の統合

異なる企業間でのM&A(合併・買収)では、人事制度・報酬体系・勤務規則などの企業制度が異なるのが一般的です。

そのため、各制度を統合し全従業員に公平かつ一貫した基準を適用することが重要です。

制度の統合は、従業員のモチベーション向上や統合後の企業同士の一体感も促進できます。

具体的に統合を行う制度は、下記の通りです。

    • 人事評価制度
    • 報酬制度
    • 教育制度
    • 研修制度

とくに、人事評価制度や報酬制度は早めに両社の意見をすり合わせて統合しないと、従業員間での格差が生まれ、モチベーション低下につながる可能性があります。

可能であればPMIの準備段階で、制度の方向性についてある程度決められているとよいでしょう。

3.業務システムの統合

業務システムやオペレーションの統合は、PMIを実施する中で重要かつ難易度が高い項目です。

たとえば、新たにITシステムを導入すると多額のコストがかかり、オペレーションに慣れるまでは一時的に社員の負担も大きくなります。

業務システムの統合によって、今後の生産性が上がり結果的には社員の負担が少なくなることを説明し、理解を得てから導入を進めましょう。

業務システムやオペレーションの統合は、導入時期や統合する範囲について慎重に議論し進めていくことが重要です。

4.評価基準の見直し

M&Aによる効果が計画通りに現れているかを検証するために、評価基準や仕組みの見直しも重要です。

たとえば、KPIの設定やマネジメントサイクルを導入すれば、統合後の効果検証や改善案の策定に役立ちます。

定期的なモニタリングをしてPDCAを繰り返し行えば、精度が高まり計画に対しての目標達成率が上がるでしょう。

5.取引先や事業内容の精査

取引先や事業内容の精査は、M&Aによるシナジー効果に直結するため、PMI実施において重要な項目です。

利益やシナジー効果の大きさから判断して、「選択と集中」を行いましょう。

製品やサービスで重複している部分がある場合は、統廃合をしてスケールメリットを追求するのもひとつの方法です。

また、仕入れの取引先が複数ある場合も、ひとつに絞るなどの選択と集中が必要です。

このように、取引先や事業内容の精査を行えば、利益やシナジー効果の向上につながるでしょう。

PMIの具体的な進め方

PMIの具体的な進め方は、下記のとおりです。

    1. M&A(統合)方針を決める
    2. ランディングプラン(統合計画)を決める
    3. 100日プランを作成
    4. M&A(統合)を実施
    5. 効果検証を実施

次項でPMIの具体的な進め方について順番に解説するので、ぜひ参考にしてください。

1.M&A(統合)方針を決める

はじめに、M&A(統合)をどのように進めていくかの方針(枠組み)を決めます。

具体的な方針例は、下記の通りです。

    • 連邦型統合:対象企業を子会社として残し、経営の自主性を維持させる統合
    • 支配型統合:対象企業を子会社として残すものの、経営に積極的に関与していく統合
    • 吸収型統合:吸収合併・吸収分割・事業譲渡といった手段で対象企業を自社に吸収し、一体化を図る統合

3つともそれぞれメリット・デメリットがあります。

買収元・買収先の業種や業績を考慮して、どのような方針で進めていくのかを慎重に決断しましょう。

2.ランディングプラン(統合計画)を決める

次に、ランディングプラン(統合計画)を決めましょう。

ランディングプラン(統合計画)はクロージング後数ヶ月以内に立てる計画で、買収元・買収先を含めて管理面や事業面の見直しを行います。

とくに、デューデリジェンスで明らかになった課題に対して、どのように見直しするかを優先して検討しましょう。

一般的に見直しをする項目は、下記通りです。

    • 事業面:原価・販売費・研究開発投資金・管理費など
    • 管理面:組織・規定・人事・労務・経営管理・経理・庶務など

ランディングプラン(統合計画)を決めることで、統合後のリスクや問題点を見つけるきっかけにもなります。

3.100日プランを作成

100日プランとは、クロージングから100日で策定される買収先企業の中期事業計画で、いわばPMIの実行スケジュールです。

100日プランを作成することで、統合直後の不安定な状態からまず何をすべきかの指針にもなります。

策定した100日プランを元に、中期的な課題を整理しM&A後の経営効果を促進しましょう。

とはいえ、M&A実施後に成功したと実感できるのには、1〜2年ほどかかります。

そのため、100日プランでは、取引先への挨拶回りや社員との個人面談など、優先順位が高いものから設定するのがよいでしょう。

4.M&A(統合)を実施

100日プランを作成したら、M&A(統合)を実施します。

100日プランに入れられなかった内容は、実行計画として作成して取り組みましょう。

M&AにおけるPMIの実施は中長期的な取り組みになるので、担当者や社員の当事者意識やモチベーションを高く保つための工夫が必要です。

具体的には、下記のような取り組みをしましょう。

    • 目標や進捗の見える化
    • 適切な目標設定
    • 相談しやすい環境を整える

目標・やるべき作業のゴールが見えないことや、到底達成ができない目標は、従業員のモチベーション低下の原因になります。

また、計画を進めていくうえで問題や悩みなどが出てきた際に相談できない環境は、担当者や社員にとって負担が大きく、目標達成が遠のく原因ともなりかねません。

PMIの実施とともに、担当者や社員のケアもしながら計画を進めましょう。

5.効果検証を実施

ランディングプランや100日プランを元に、定期的なモニタリングを行い効果検証を実施しましょう。

具体的な効果検証項目は、下記の通りです。

    • シナジー効果の達成具合
    • アクションプランの進捗
    • 設定したKPIの達成具合

効果検証により、浮き彫りになった改善すべき問題や対応すべきトラブルがあれば、この段階で改善策を検討し実施しましょう。

また、M&A実施から半年や1年を目安に、買収元と買収先の関係性や計画の進捗について振り返るのも大切です。

問題点や改善策をブラッシュアップし、シナジー効果や企業価値の向上に繋げましょう。

PMIを成功させるための4つのポイント

PMIを成功させるための4つのポイントは、下記の通りです。

    • M&A(統合)後の目的やスケジュールを明確にする
    • 現場(社員)の声にも耳を傾ける
    • PMOの設置と適切な人材で進める
    • 経営陣によるリーダーシップの発揮

次項でPMIを成功させるための4つのポイントについて詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。

M&A(統合)後の目標やスケジュールを明確にする

PMIを成功させるためには、M&A(統合)後の目標やスケジュールを明確にする必要があります。

具体的には、経営・人事・財務などテーマごとに目標を明確にすれば、社員が向かうべき方向性を理解して取り組めます。

また、スケジュールを明確にすれば進捗管理ができるので、遅れている課題の取り組みなどに早期に気づいて対処が可能です。

常に目標やスケジュールに対しての進捗を把握し、追うべき数字や行動を明確にすることでPMIを成功できるでしょう。

現場(社員)の声にも耳を傾ける

PMIを成功させるためには、現場(社員)の声にも耳を傾けるのが大切です。

目標を達成させるためには、現場で働く社員の協力が必要不可欠です。

また、M&Aに対して後ろ向きだった社員に対して、不安を払拭し前向きな気持ちを持ってもらう必要もあります。

従業員の些細なことでも耳を傾け、密なコミュニケーションを取るように心がけてみてください。

PMOの設置と適切な人材で進める

PMIを成功させるためには、PMOの設置と適切な人材で進めましょう。

PMOとは、テーマごとの課題や進捗の遅れに対して対応しながら、計画をスムーズに進めるために全体をコントロールする役割です。

計画に対して課題やトラブルが発生した場合も、PMOの設置や適材適所の人材で進めていれば柔軟な対応ができるでしょう。

経営陣によるリーダーシップの発揮

経営陣によるリーダーシップの発揮も、PMIを成功させるためには欠かせません。

M&A後は、買収元・買収先どちらの会社も組織体制や評価制度などさまざまな変化が起こります。

変革を嫌い現状維持を望む社員に対して、目指すべき目標を明確にして新しい組織や制度に慣れてもらうために経営陣が働きかけていきましょう。

PMIはM&Aの最大化に欠かせない役割

M&Aによるシナジー効果を最大化するためには、PMIの実施は欠かせない役割です。

PMIでは具体的に、下記のような取り組みを行います。

    • 経営体制と組織の統合
    • 制度の統合
    • 業務システムの統合
    • 評価基準の見直し
    • 取引先や事業内容の精査

とはいえ、元々違う会社が統合して、ひとつの目標も目指して進んでいくのは簡単なことではありません。

PMIを成功させるためには、下記の4つのポイントを意識して取り組みましょう。

    • M&A(統合)後の目標やスケジュールを明確にする
    • 現場(社員)の声にも耳を傾ける
    • PMOの設置と適切な人材で進める
    • 経営陣によるリーダーシップの発揮

M&A後の目標を明確にして買収元と買収先が一体となってPMIを進めれば、統合によるシナジー効果を最大化させられるでしょう。

▼監修者プロフィール

岩下 岳

岩下 岳(S&G株式会社 代表取締役) S&G株式会社

新卒で日立Gr.に入社。同社の海外拠点立上げ業務等に従事。
その後、東証一部上場のM&A仲介業界最大手の日本M&Aセンターへ入社ディールマネージャーとして、複数社のM&A(株式譲渡・事業譲渡・業務提携等)支援に関与。IT、製造業、人材、小売、エンタメ、建設、飲食、ホテル、物流、不動産、サービス業、アパレル、産業廃棄物処分業等、様々な業界・業種でM&Aの支援実績を有する。現在はS&G代表として、M&Aアドバイザー、及び企業顧問に従事している。