事業承継する最適な3つのタイミングとは?スムーズに承継するには早めの準備が大切

「事業承継にベストなタイミングはいつ?」「事業承継するにはいつから準備が必要なの?」というように、事業承継のタイミングや準備について知りたい人も多いでしょう。

事業承継するには適したタイミングがあり、事前準備でスムーズに引き継ぎできるかが決まります。

本記事では事業承継するのに最適な3つのタイミングや事業承継の準備が大切な理由について解説します。事業承継をいつ開始すればいいのか気になる人は、ぜひ参考にしてください。

事業承継する最適な3つのタイミングとは

事業承継するための最適なタイミングは、次の3つです。

    • 経営状況が安定しているとき
    • 最適な後継者が見つかったとき
    • 経営者が60歳前後になったとき

事業承継には適したタイミングがあり、タイミングを図ることで引き継ぎがスムーズに進みます。また、引き継ぎのタイミングは事業承継後の経営状態にも影響するため、どのような時期が最適なのか確認しておきましょう。

経営状況が安定しているとき

経営状態が安定しているときは、事業承継に適したタイミングです。

事業承継は少なからず従業員や取引先に影響を与えてしまい、事業承継を開始すると会社によっては業績が悪化してしまいます。業績が悪いときに事業承継をしてしまうと、さらに業績が落ち込んでしまうおそれがあるため、経営が安定しているときに実行すべきです。

業績悪化を後継者が改善することを期待する事業承継も多いですが、後継者のことを考えれば業績を安定化してから引き継ぎを開始するのが適切といえます。

最適な後継者が見つかったとき

優秀な後継者が見つかったときは、事業承継に適したタイミングです。

事業承継を実行したい人は多くいるものの、後継者不足で引き継ぎできないケースも多々あります。

ただし、後継者が優秀だからといって、事業承継できるわけではありません。次のような条件が揃った後継者を見つける必要があります。

    • 高い能力を有している
    • 株式を取得する資力がある
    • 後継者となる意思がある

上記の条件を兼ね備えた後継者が現れるのは、かなり珍しいことです。そのため、最適な後継者が見つかったときは、事業承継するタイミングといえます。

経営者が60歳前後になったとき

経営者が60歳前後になったときは、事業承継の準備を開始したほうがいいタイミングです。

帝国データバンクの「全国「社長年齢」分析調査(2022年)」によると、経営者が引退する年齢は平均で68.8歳となっています。事業承継には5年〜10年かかるといわれているため、60歳前後で引き継ぎの準備を行っていないと、経営者の引退前に承継できない可能性があるでしょう。

後継者の育成が必要と考えるのであれば、事業承継後のサポートも必要となり、よりいっそう時間がかかります。

事業承継を完全に終わらせるには相当な時間がかかるため、早めに準備を開始しましょう。

もし事業承継について検討されている場合は、ぜひ当社へご相談ください。

事業承継を10年前のタイミングから準備した方が良い理由

事業承継は計画から実行までに時間がかかり、早めに準備したほうがいいといわれています。

事業承継を早めに準備したほうがいい理由は、次のとおりです。

    • 事業承継には5〜10年かかる
    • 経営者が高齢化してしまい業績が下がる可能性がある
    • 経営状態が不安定になると事業承継がうまく進まない

事業承継はすぐに実行できるわけではなく、時間をかけてじっくりと準備しなければなりません。

しかし、準備中に事業承継を阻害する要因が生まれます。どのような阻害要因が生まれるのか確認し、早めに事業承継の準備をしましょう。

事業承継には5〜10年かかる

事業承継を実施するには、次のような手続きがあります。

    • 後継者を選定する
    • 事業承継計画を立案する
    • 株式や資産などの譲渡や贈与の手続きを行う
    • 後継者の育成
    • 統合プロセスの実行

これらの手続きをすべて終わらせるには、5年〜10年かかるといわれています。とくに後継者の育成と統合プロセスの実行には時間がかかります。

M&Aの場合は後継者の育成の時間が必要ないため、時間を掛けずに事業承継したい場合はM&Aを念頭に承継を行うのもよいでしょう。

経営者が高齢化してしまい業績が下がる可能性がある

東京商工リサーチの「全国社長の年齢調査」によると、直近決算で減収している会社の社長の年齢は60代が39.9%、70代以上も41.2%です。また、赤字企業は社長の年齢70代以上が25.9%で最多でした。

社長の年齢と会社の経営状態には大きな関連性が認められており、高齢になるほど業績が落ちてしまうおそれがあります。

会社の経営状態が悪化すると、会社を引き継ぎたいという後継者の数が減ってしまいます。

経営状態が不安定になると事業承継がうまく進まない

経営状態が不安定だと、事業承継よりもまず経営の立て直しが優先されます。事業承継計画を立案したにもかかわらず計画どおりに進まず、いつの間にか計画が立ち消えてしまうことも珍しくありません。

また、M&Aを実行しようとしても、買手となる会社が見つかる可能性が低くなります。仮に見つかったとしても、買収の条件は悪く、契約条件がまとまらないおそれもあります。

事業承継をベストタイミングで成功させるポイント

事業承継をベストタイミングで成功させるポイントは、次のとおりです。

    • 5年から10年という長いスパンで事業承継を考える
    • 後継者の意思を確認する
    • 業種・業態・立地等の再検証をする
    • 現経営者は早めの引退予告をする

事業承継を行うタイミングによっては、失敗する恐れがあります。いつが事業承継のベストタイミングなのか理解し、引き継ぎをスムーズに進めていきましょう。

5年から10年という長いスパンで事業承継を考える

事業承継はどのような形であれ、5年から10年もの長い時間をかけて進める方がうまくいきます。

親族内に後継者がいない場合でも、社内に優秀な人材がいれば、後継者として経営を任せることも考えられます。このような場合は、従業員だった人がトップとなって会社を引っ張っていくのですから、ほかの従業員が納得できるような能力や人望が求められるでしょう。事業承継を長いスパンで考えていれば、経営だけでなく営業や取引先との関係まで、時間をかけて教育してバトンを渡すことが可能です。

もし、後継者がいないという状況であれば、M&Aを考えることになります。運よくすぐに買手が見つかればいいのですが、見つからない場合は、やはり時間をかけて買手を見つけることになります。5年から10年という時間的余裕があれば、納得できる買手を探すことが可能です。

事業承継を長期間で計画することによって、選択肢が増え、たとえ問題が生じても余裕を持って解決できます。

後継者の意思を確認する

事業承継を進める上で大事な後継者の選任ですが、後継者自身が覚悟を持っているかどうかはより重要といえます。

社会のIT化やグローバル化で、会社を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。今までと同じような経営では先細ることが予想されるのであれば、方向転換をして新しい事業を始める必要もあるでしょう。国内での利益が見込めない場合、海外展開も選択の一つになります。

変化の大きい社会の中で、ご自身の家族だけでなく従業員の家族まで面倒を見る覚悟がなければ、経営者としての責任を全うすることはできません。どのような状況でも会社を守り切るという覚悟があるのかどうか、後継者の意思確認は非常に重要です。

業種・業態・立地等の再検証

事業承継は、ご自身の会社の業種や業態が、社会の中でどのような立ち位置なのか、再検討する絶好のタイミングといえます。

たとえば出版会社であれば、電子書籍がある中で、今までと同じような手法の経営では生き残ることは難しいでしょう。IT化やグローバル化の波をどのように乗り越えていくのか、後継者とともに方向性を再検討する必要があります。

また、中小企業であれば、ネットワークに参加することも必要です。情報が価値を持つ時代の中では、ご自身の会社だけで戦うのではなく、ネットワークに参加して多くの企業と情報を共有しながら発展していくことも大事になってきます。

現経営者は早めの引退予告をする

現経営者が体力的に問題なく働いているうちは、年齢的な危機感を持てず、事業承継は後回しになってしまいます。2代目ともなると目の前の仕事をこなすのに忙しく、後継者のことをじっくり考える余裕はありません。

しかし、理想をいえば現経営者が60代になるころには後継者が決まっているべきです。会社の経営には、寿命があります。その点をしっかりと自覚し、ご自身が会社を継いだときから次の後継者を考え始めるくらいの早めの準備が何より大切です。

事業承継をするときは、現経営者は会長職に就き後継者を社長に迎え、後継者が会社を問題なく経営できるようになるまで並走期間を設けることをおすすめします。現経営者が早めの引退予告をし、充分な並走期間を設けることで、従業員や取引先も事業承継に対する心構えができます。

事業承継するときの注意点

事業承継するときの注意点は、次のとおりです。

    • 税金が課税される
    • 相続トラブルに注意する
    • M&Aするときには専門家に相談する

事業承継は容易ではないため、さまざまな問題に対処しなければなりません。

ここからは、事業承継を進めるにあたり、注意しなければならないポイントを解説します。

税金が課税される

事業承継を行う際には、譲渡所得税や贈与税、相続税などの税金が課税されます。

譲渡所得税は、株式の譲渡益が発生した場合に経営者に課税され、株式や資産を贈与・相続したときには、後継者に贈与税・相続税が課税されます。

なお、各税金の税率や基礎控除については、次の表のとおりです。

税金名税率
譲渡所得税20.315%
※住民税・復興特別所得税を含めた税率
贈与税~55%
相続税~55%

移転する資産価値が高いことにより、課税される税金も高額となるため、あらかじめどの程度の課税が予測されるのか確認しましょう。

なお、事業承継に関する税金は、一定条件を満たすことで税金の納税猶予などが受けられます。事業承継税制について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照してください。

新しい事業承継税制とは?制度の内容や注意点などを解説

相続トラブルに注意する

事業承継を行うと、相続トラブルに発展するケースがあります。

事業承継には多くの資産の移転がともなうため、特定の相続人を後継者にすると、その相続人に資産が集中してしまいます。このような状態になると、後継者以外の相続人と受け取れる資産の多さに差がつき、トラブルになるケースがあるため注意しなければなりません。

また、同じ原理で従業員を後継者にしたときも、相続トラブルが発生するおそれもあります。他人である従業員に資産が渡ってしまい、相続財産が減ってしまうからです。

相続トラブルにならないようにするには、事業承継すると決めた段階から相続人と相続について話し合っておくことが必要です。親族へ事業承継をしない場合でも、きちんと相続人と話し合いつつ、進めていきましょう。

M&Aするときには専門家に相談する

M&Aする場合には、M&A仲介者会社などの専門家に相談して進めましょう。

M&Aを実施するには、さまざまな問題を洗い出した上で解決しなければなりません。しかし、初めてM&Aを行う人にとっては、問題の洗い出しも解決も困難です。

間違った選択はM&Aの失敗につながるため、M&A仲介者会社などの専門家に相談してから進めていきましょう。

M&Aの専門家に相談する前に計画を開始すると、収集がつかなくなるおそれがあるため、計画を立てる前から相談することが大切です。

なお、「TSUNAGU」では、M&Aのご相談も受け付けています。スムーズな事業承継を希望される方は、「TSUNAGU」までお問い合わせください。

事業承継のタイミングについてよくある質問

事業承継のタイミングについてよくある質問は、次のとおりです。

    • 事業承継と「事業継承」「M&A」は違うものですか?
    • 事業承継をベストタイミングで行うにはどこに相談すればいいですか?
    • 事業承継計画書とは何ですか?

事業承継をいつ実行するか、タイミングを図っている人はいるものの、悩みや疑問が発生して準備が進んでいない人もいます。事業承継のタイミングに悩んでいる人の過去のケースを確認し、対策しておきましょう。

事業承継と「事業継承」「M&A」は違うものですか?

事業「承継」と事業「継承」は同じで、M&Aは事業承継の一種です。

事業承継と事業継承は、同じ内容のものを違う言い方で表現しているだけです。そのため、両者に違いはありません。

M&Aは株式譲渡や事業譲渡等により社外の第三者に引き継がせる方法です。しかし、事業承継には親族などに資産を移して引き継ぎする方法などもあるため、M&Aと事業承継は並列の関係に該当しません。

事業承継をベストタイミングで行うにはどこに相談すればいいですか?

事業承継をベストタイミングで行うには、次の相談先を利用してみましょう。

・事業承継・引継ぎセンター

・M&A仲介会社

・金融機関

・商工会議所

・顧問の公認会計士や税理士 など

事業承継について相談する先は多いものの、事業承継の専門家は国が設置する「事業承継・引継ぎセンター」や、M&A仲介会社です。

事業承継には専門的な知識が必要であるため、できる限り専門家の意見を受けて進めましょう。

事業承継計画書とは何ですか?

事業承継計画書とは、事業承継をスムーズに行うための書類で、次のような内容を記載します。

    • 経営理念
    • 企業概要・沿革・受賞歴
    • 現状の棚卸
    • 事業承継における課題
    • 円滑な事業承継への骨子
    • 承継カレンダー

事業承継計画書を作成する目的は、次のとおりです。

    • 知的資産の存在を明確にする
    • 特例承継計画の策定をする
    • 事業承継する会社にかかわる人に周知させる

特例承継計画とは、事業承継税制の特例措置を受けるために必要な書類です。特定の条件を満たした場合、税金の猶予ではなく免除を受けられるため、非常に大きな節税につながります。

また、事業承継計画書を作成することで、会社が保有している知的財産が明確になります。知的財産は目に見えるものではなく、どのような財産があるのか書類に明記しておかないと存在自体を見逃してしまうからです。

事業承継計画は、事業承継前に後継者育成の内容から記載する必要があるため、後継者の育成を始めるときに作成を開始します。

事業承継を最適なタイミングで行うには事前準備が重要

事業承継の適切なタイミングは経営が安定しているときや優秀な後継者が見つかったとき、経営者の年齢が60歳前後のときです。

しかし、事業承継は完了するまで5〜10年必要とされており、早めに準備を進めることが大切です。

事業承継には長い準備期間があり、準備を開始するタイミングを間違えると、準備中に事業承継ができなくなる要因が発生するかもしれません。スムーズに事業承継を進めるには、まず最適なタイミングを理解することが大切です。

最適なタイミングを図り、事業承継を成功に導いていきましょう。

ディスクリプション

事業承継には適切なタイミングがあり、時期を見定めないとスムーズに進みません。本記事では事業承継のベストタイミング、準備が重要である理由について解説します。事業承継のタイミングに迷っている人はぜひ参考にしてください。

▼監修者プロフィール

岩下 岳

岩下 岳(S&G株式会社 代表取締役) S&G株式会社

新卒で日立Gr.に入社。同社の海外拠点立上げ業務等に従事。
その後、東証一部上場のM&A仲介業界最大手の日本M&Aセンターへ入社ディールマネージャーとして、複数社のM&A(株式譲渡・事業譲渡・業務提携等)支援に関与。IT、製造業、人材、小売、エンタメ、建設、飲食、ホテル、物流、不動産、サービス業、アパレル、産業廃棄物処分業等、様々な業界・業種でM&Aの支援実績を有する。現在はS&G代表として、M&Aアドバイザー、及び企業顧問に従事している。