M&Aのエグゼキューションを徹底解説!成功するための秘訣も公開
M&Aにおいて、エグゼキューションは重要なフェーズです。エグゼキューションを各プロセスを成功させるには、具体的に何をすべきか気になる方もいると思います。まずは全体の流れを把握し、ポイントを押さえることが重要です。
こちらの記事では以下の内容を紹介しています。
- エグゼキューションとは
- M&Aのエグゼキューション全体の流れ
- M&Aのエグゼキューションを成功させるポイント
M&Aのエグゼキューションを成功させる秘訣を紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
エグゼキューションとは
エグゼキューション(Execution)とは、英語で「実行」「実施」を意味する言葉ですが、M&Aにおけるエグゼキューションは、M&Aの戦略実行フェーズを指します。M&Aの交渉相手が決まって以降、クロージングまでの一連のプロセスをエグゼキューションと呼ぶのが一般的です。
このフェーズにはM&Aスキームの検討や候補先との交渉、デューデリジェンスの実施などが含まれ、M&A仲介業者やM&Aアドバイザーなどが業務で使用することが多い用語です。
M&A初期はオリジネーション
オリジネーションとはM&Aの初期フェーズのことを指し、エグゼキューションの前段階にあたります。具体的には、M&Aの検討を始め、候補先の企業を見つけるまでの一連の業務をいいます。
つまり候補先を見つけるまでは「オリジネーション」、候補先が見つかって以降は「エグゼキューション」のフェーズだと考えればよいでしょう。
例えば、候補先との交渉で使用する資料の作成や目標・戦略の策定、候補先の企業の選定などがオリジネーションに該当します。
エグゼキューションの重要性
エグゼキューションは、策定したM&A戦略を実現するうえで重要なフェーズです。策定したM&A戦略はあくまで計画であり、実現するにあたってはさまざまな課題や制約が発生します。M&Aを成功させるためにも、エグゼキューションの段階でより現実的な計画を立てることが重要です。
そのため、エグゼキューションを実行する際には、M&A仲介会社などの専門知識や経験を持ったアドバイザーにサポートしてもらうことも1つの手です。
エグゼキューションがうまく進められなかった場合は、M&Aが失敗に終わる可能性も十分にあるといえます。例えば、手続きにおいて漏れが生じてしまったり、双方が納得のいく交渉ができなかったりすれば、M&A自体が無効になってしまう可能性もあるのです。
また組織や文化の違いによって問題が生じることも少なくありません。エグゼキューションを考えるうえでは、組織や文化を考慮した戦略を策定し、各プロセスを円滑に進められるようにしましょう。
M&Aのエグゼキューション全体の流れ
エグゼキューションはM&Aの本体ともいえるほど重要であり、フェーズが完了するまでに半年から数年かかる場合もあります。具体的には、大きく分けて以下の7つに分かれています。
- M&Aスキームを検討する
- 企業価値評価を実施
- 候補先との面談・交渉
- 基本合意を締結
- デューデリジェンスの実施
- 最終交渉・契約の締結
- クロージングの実施
ここからは、これらのプロセスについて詳しく説明していきます。
M&Aスキームを検討する
M&Aのスキームは数多くありますが、主に5つに分かれています。その中でも多用されているのが株式譲渡と事業譲渡の2つです。どのスキームを選択するかは会社の状況によって異なりますが、最適なスキームを選択することが重要です。
ただし、交渉の流れによっては選択したスキームが後日変更になるケースもあるため、複数のスキームを視野に入れておくとよいでしょう。
スキームの種類 | 概要 |
株式譲渡 | 売り手が買い手に株式を譲渡する |
事業譲渡 | 対象会社の事業(資産や権利など)の一部または全部を買い手に譲渡する |
合併 | 複数の会社を1つに統合し、1つの会社になる |
会社分割 | 対象会社の一部を別の会社に継承する |
株式交換 | 対象会社の株式をすべて買い手に譲渡し、完全子会社になる |
株式移転 | 新しく完全親会社を設立し、既存の会社を完全子会社とする |
株式譲渡
株式譲渡とは、売り手が買い手に株式を譲渡することです。50%以上の株式を保有すると、役員を買い手の意志で選任・解任できます。つまり、事実上その会社の経営権を保有していることになります。
株式を全て買い取る必要はなく、例えば60%や80%でも構いません。重要なのは株式の買取ではなく、会社の経営権を保有することだからです。株式譲渡は、売買の手続きが比較的スムーズに進められるのがメリットであり、M&Aで多く使用されるスキームです。
事業譲渡
事業譲渡とは、対象会社の事業(資産や権利など)の一部または全部を買い手に譲渡することです。株式譲渡と同じく、使用される頻度の高いスキームです。
株式譲渡とは異なり、株式を売買するのではなく、事業(資産や権利など)を金銭で売買します。会社を丸ごと売買するわけではないため、買い手は必要な資金や権利などを選択して引き継げることがメリットです。一方の売り手も、必要のない事業を譲渡できるのがメリットです。
合併
合併とは、複数の会社を1つに統合し、1つの会社になることをいいます。株式譲渡と事業譲渡を除けば、比較的多く使用されるスキームです。
合併には新しく会社を設立する新設合併と、既存の会社が他の会社を吸収する吸収合併の2種類があります。M&Aでは主に吸収合併が使用され、新設合併が使用されるケースはまれです。
合併は、複数の会社が統合されるためにシナジー効果が発揮されやすいことがメリットです。一方、統合作業に時間と労力を要するため、負担が大きいことがデメリットです。
会社分割
会社分割とは、対象会社の一部を別の会社に継承することです。会社分割には新設分割と吸収分割の2種類があります。新設分割は新たに会社を設立し、事業を分割する方法です。一方の吸収分割は、別会社に事業を継承する方法です。
例えばX社が「a事業」「b事業」の2つの事業を経営していたとします。2つの事業のうち「a事業」だけをY社に継承するのが会社分割のうちの吸収分割です。Y社は事業を引き継いでも子会社にはならず、各々が独立した会社として事業を営みます。
会社分割は事業譲渡と似ていますが、違いは売買か包括的な承継かという点です。事業譲渡と比べ、会社分割のほうが手続きをスムーズに進められます。
株式交換・移転
株式交換とは、対象会社の株式をすべて買い手に譲渡し、完全子会社になることです。例えば、X社とY社が株式交換をする場合、X社の株主はY社の株式を受け取り、代わりにX社の株式をY社に譲渡し交換します。
これにより、Y社はX社の株式を全て取得することになるため、完全親会社となるのです。X社の株主は、Y社の株主となります。株式交換は現金ではなく株式を対価としているため、買収資金が不要な点もポイントです。
一方の株式移転とは、新しく完全親会社を設立し、既存の会社を完全子会社とすることを指します。株式交換と似ていますが、新たに会社を設立する点が異なります。例えば、親会社となるZ社を新たに設立し、X社とY社の株式を全てZ社に移転すると、X社とY社がZ社の完全子会社となる形での株式移転が成立します。
企業価値評価を実施
スキームが決まれば、次は企業価値評価(バリュエーション)を実施します。企業価値評価とは、売り手側の会社にどれくらいの金銭価値があるかを見積もることです。
上場企業であれば「企業価値=株式の時価総額+有利子負債」で算出できますが、上場企業ではない場合は以下の3つの手法で算出します。
-
- コストアプローチ
- マーケットアプローチ
<liインカムアプローチ
それぞれの手法について詳しく見ていきましょう。
コストアプローチ
コストアプローチとは、企業の純資産をベースに企業価値を算出する手法です。「簿価純資産法」「時価純資産法」などを用いて、帳簿データを基に算出します。
客観的に評価できることがメリットですが、将来の収益力は反映できないことがデメリットです。また、帳簿のデータが間違っていると正しい数値が算出されないことにも留意が必要となります。
「簿価純資産法」「時価純資産法」の具体的な計算方法は以下の通りです。
・計算式
簿価純資産法:資産−負債=純資産(株式価値) 時価純資産法:資産(時価)−負債(時価)=純資産(株式価値) |
・会社概要
帳簿データ | 価格 | 備考 |
資産 | 300 | 現金200、土地50、有価証券10 |
時価評価の含み益 | 土地20、有価証券20 | |
負債 | 150 | 買掛金50、退職給付引当金40、賞与引当金20 |
時価評価の引当不足 | 退職給付引当金20、賞与引当金20 |
簿価純資産法で評価した場合は、資産(300)ー負債(150)=純資産(150)となります。
時価純資産法で評価した場合は土地70、有価証券30、退職給付引当金60、賞与引当金40となります。上記の項目を基に計算した結果は、資産(現金200+土地70+有価証券30)ー負債(買掛金50、退職給付引当金60、賞与引当金60)=時価純資産(130)です。
マーケットアプローチ
マーケットアプローチとは、売り手企業に類似する企業の株価やM&Aの買収価格などを参考にして評価する手法です。主に「市場株価法」「類似会社比較法(マルチプル法)」に基づき算出します。
実際にM&Aを実施した企業を参考にするため、客観的な価格を評価できることがメリットです。その反面、類似する企業の前例がない場合はマーケットアプローチは使えません。
マーケットアプローチを用いて企業価値評価を実施する場合「EV/EBITDA倍率」を採用することが多いです。そのため、ここでは「EV/EBITDA倍率」を用いて、類似会社比較法の具体的な計算方法を紹介します。
・会社概要
科目 | 金額 |
現預金 | 7,000万円 |
有利子負債 | 1億5,000万円 |
税引前利益 | 6,000万円 |
支払利息 | 600万円 |
減価償却費 | 800万円 |
・類似企業
科目 | 金額 |
株式価値 | 2億1,000万円 |
現預金 | 7,000万円 |
有利子負債 | 1億4,000万円 |
EBITDA | 5,000万円 |
類似企業の企業価値は以下のように算出しましょう。
株式価値(2億1,000万円)+有利子負債(1億4,000万円)−現預金(7,000万円)=類似企業の企業価値(2億8,000万円) |
次に、類似企業のEV/EBITDA倍率を算出します。
企業価値(2億8,000万円)÷EBITDA(5,000万円)=類似企業のEV/EBITDA倍率(5.6倍) |
続いて、対象企業のEBITDAを算出します。
税引前利益(6,000万円)+支払利息(600万円)+減価償却費(800万円)=対象企業のEBITDA(7,400万円) |
その後は、対象企業の企業価値を算出しましょう。
EBITDA(7,400万円)✕EBITDA倍率(5.6倍)=対象企業の企業価値(4億1,440万円) |
最後に、対象企業の株式価値を算出してください。
企業価値(4億1,440万円)+現預金(7,000万円)−有利子負債(1億5,000万円)=対象企業の株式価値(3億3,440万円) |
インカムアプローチ
インカムアプローチとは、将来の収益力とその利益を生み出すために見込まれるリスクを見積もり、企業価値を算出する手法です。代表的な算出方法は「DCF(ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー)法」と「収益還元法」の2つです。
インカムアプローチは、事業の将来性を加味して算出できることがメリットですが、恣意的な要素が入ってしまいます。そのために、人によって評価が多少異なるという点に注意しましょう。
ここでは、インカムアプローチの中でも採用される頻度の高い、DCF法の具体的な計算方法を紹介します。まずは、向こう3年度分の中期事業計画策定を前提条件として以下に記載しました。
・前提条件
営業利益 | 5億円(+2,000万円で毎期増加するものとする) |
実効税率 | 34% |
減価償却費 | 毎期3,000万円 |
設備投資額 | 毎期3,000万円 |
運転資本増加額 | 毎期4,000万円 |
割引率(WACC) | 8.0% |
ターミナルバリュー (残存価値) |
3年度以降はフリーキャッシュフローの成長が止まり、成長率0%とする |
非事業用資産 | 3,000万円 |
純有利子負債(借入金など) | 8億円 |
・計算方法(単位:千円)
1年度 | 2年度 | 3年度 | 合計 | |
営業利益 | 500,000 | 520,000 | 540,000 | |
実効税率(34%) | 170,000 | 176,800 | 183,600 | |
税引後営業利益 | 330,000 | 343,200 | 356,400 | |
減価償却費 | 30,000 | 30,000 | 30,000 | |
設備投資額 | 30,000 | 30,000 | 30,000 | |
運転資本増加額 | 40,000 | 40,000 | 40,000 | |
フリーキャッシュフロー | 290,000 | 303,200 | 316,400 | |
割引率(8.0%) | 0.926 | 0.857 | 0.794 | |
フリーキャッシュフロー (現在価値) |
268,519 | 259,842 | 251,222 | ①779,583 |
残存価値 | ② | 4,120,000 | ||
事業価値合計 | ①+②=③ | 4,899,583 | ||
非事業用資産の価値 | ④ | 30,000 | ||
企業価値 | ③+④=⑤ | 4,929,583 | ||
純有利子負債 | ⑥ | 800,000 | ||
株主価値 | ⑤ー⑥ | 4,129,583 |
・計算式
税引後営業利益=営業利益×実効税率 フリーキャッシュフロー=税引後営業利益−運転資本増加額 フリーキャッシュフロー(現在価値)=フリーキャッシュフロー/(1+割引率)^n ※nは年数です。5年後であれば^5となります。 残存価値=最終年度の翌年度のフリーキャッシュフロー/(割引率-成長率) 事業価値合計=フリーキャッシュフロー(現在価値)+残存価値 企業価値=事業価値合計+非事業用資産の価値 株主価値=企業価値−純有利子負債 |
候補先との面談・交渉
企業価値評価が終われば、次は候補先と面談・交渉です。いきなり交渉するのではなく、売り手と買い手の各経営者が直接会い、互いの意見を交換する「トップ面談」から始めるのが一般的です。トップ面談後に雇用や役員の処遇、取引先など、内容の具体的な交渉が行われます。
エグゼキューションの過程は基本的に専門的な事務作業が多いですが、面談や交渉においては交渉術や人間性など心理的な要素が関わります。そのため、候補先の経営者がどのような人物であるかも重要なチェックポイントです。
基本合意を締結
交渉において両者が基本事項に合意した場合、基本合意契約を締結します。基本合意契約が最終決定ではないため、最終の契約までに内容の変更は可能です。基本合意契約の締結は、これまでの内容をエビデンスとして残しておくことが目的です。
買い手はこの後に時間や費用のかかるデューデリジェンスを実施するため、独占交渉権を付与します。またデューデリジェンスは売り手の協力がなければ作業が難航してしまうため、協力義務が課されます。なお、基本合意書には法的拘束力がない点に注意しましょう。
デューデリジェンスの実施
デューデリジェンスとは、買取監査ともいい、買い手が売り手企業の財務・事業・人事などを調査することです。デューデリジェンスの目的は、基本合意した内容が正しいか、法令違反など問題がないか、シナジー効果はあるかなどを分析することです。
主な分析方法は以下の4つです。
- 財務デューデリジェンス
- 法務デューデリジェンス
- 人事デューデリジェンス
- ビジネスデューデリジェンス
財務デューデリジェンス
財務デューデリジェンスとは、売り手企業の財務状況を調査し、将来的な事業計画に影響がないかを確かめることです。主に財務状況や損益状況、資金状況などを調査します。また帳簿上の調査だけでなく、簿外負債の有無や、帳簿体系も併せて調査するのが一般的です。
これらの調査は専門性を要するため、税理士や公認会計士のサポートを得るとよいでしょう。財務デューデリジェンスで調査した内容を踏まえて、基本合意時に提示した金額などを修正します。
<h4法務デューデリジェンス
法務デューデリジェンスとは、売り手企業の資産や取引状況などを確かめ、法的な問題やリスクがないか調査することです。法務デューデリジェンスで調べる項目は多数ありますが、主な項目は以下の通りです。
- 訴訟・紛争
- 債務状況
- 契約状況
- 株式・株主の状況
- 人事・労務の状況
- 環境汚染対策の状況
人事デューデリジェンス
人事デューデリジェンスとは、売り手企業の人事・労務状況を調査することです。具体的には従業員の雇用契約内容や退職金の未払い、残業状況などです。法令違反の有無を調べるだけでなく、優秀な人材を獲得できるかといったことも調査します。
M&Aによって職場環境は大きく変化します。変化によって生じる従業員のモチベーションの低下や人間関係のトラブルを防ぐためにも、人事デューデリジェンスは重要です。
ビジネスデューデリジェンス
ビジネスデューデリジェンスは、売り手企業の事業内容や活動を調査することです。M&Aにおけるリスクについても調査しますが、主にシナジー効果などのメリットがあるかを見極めるために行います。
最終交渉・契約の締結
デューデリジェンス終了後は、結果に基づき契約の締結に向けて最終交渉を交渉を進めます。デューデリジェンスで問題が発覚した場合、買取価格の変更やM&Aを中止するケースもあります。
M&Aのスキームによって多少違いはありますが、最終契約時に定める項目は以下の通りです。
- 買取価格
- 表明保証
- 補償条項
- 誓約事項
- 前提条件
- 解除条件
- 秘密保持
- 実施日
最終交渉で互いに合意すれば、最終契約を締結します。
クロージングの実施
クロージングとは、最終契約書を締結後、実際に経営権・事業を移転することです。簡単にいえば、最終契約書に書かれた内容を実行するということです。クロージングは漏れなく実行する必要があります。
クロージングの手続きに漏れが生じるとM&A自体が中止になる可能性もあり、業務には慎重を要します。クロージングが終わればM&Aは完了となるため、最後まで気を抜かずに取り組みましょう。
M&Aのエグゼキューション成功させるポイント
M&Aのエグゼキューションを成功させるポイントは、以下の5つです。
- 売買する企業双方が納得できる条件設定
- 手続きに漏れがないか、常時チェックする
- 通常業務が滞らないようにする
- 徹底した事前準備
- M&Aの専門家に相談する
それぞれのポイントを見ていきましょう。
売買する企業双方が納得できる条件設定
M&Aは売り手企業と買い手企業の双方が納得できる条件を設定しなければ成立しません。どちらか片方が希望を主張するのではなく、相手方の意見にも耳を傾けることが重要です。そのうえで、両者の妥協点を模索していきましょう。
納得のいかない条件を提示され、しぶしぶ妥協することはもちろん避けるべきです。このような場合、仮に合意したとしても、M&A後に事業を発展させることは困難でしょう。条件次第ではM&Aを中止することも視野に入れておかなければなりません。
双方が納得できる条件を設定し、円滑にM&Aを進められるようにしましょう。
手続きに漏れがないか、常時チェックする
エグゼキューションのフェーズには手間のかかる手続きが多いですが、漏れがないかを常にチェックすることが大切です。特に法的ミスが生じるとM&A自体が無効になりかねません。そのため、売り手・買い手の双方が手続きに漏れがないか気を配りましょう。
また、エグゼキューションは専門のアドバイザーにサポートしてもらうことが多いものの、丸投げするのは避けましょう。作業の様子や進捗具合などを自分の目で確かめることも大切です。
特に、契約内容の詳細部分は経営者のほうが詳しいため、手続きに漏れがないか確かめましょう。
通常業務が滞らないようにする
エグゼキューションには長い時間を要します。そのため、関連業務にかかりきりになると通常業務に支障をきたす可能性があります。通常業務が滞ってしまうと、企業の収益や取引などにも悪影響を及ぼすかもしれません。
その結果、M&Aを進められなくなってしまうと本末転倒なため、注意が必要です。通常業務があってこそM&Aが成り立つことを忘れず、通常業務が滞らないようにしましょう。
徹底した事前準備
エグゼキューションを成功させるためには、徹底した事前準備が大切です。特にデューデリジェンスは、エグゼキューションの中でも時間がかかるプロセスなため、必要な資料などは事前に準備しましょう。
売り手側があらかじめデューデリジェンスの準備をし、スムーズな進行に協力すれば交渉の際のアピールポイントにもなります。できる範囲の準備は済ませておきましょう。
M&Aの専門家に相談する
エグゼキューションには、財務・法律・税務など、専門知識を要する場面が多く存在します。そのため、円滑に作業を進めるためにはM&Aや各分野の専門家のサポートが必要です。特にデューデリジェンスの調査は、調査内容によって専門分野が異なることに注意しましょう。
また、交渉においては、経験や交渉術に長けているほうが有利です。自分では思ったように交渉が進まない場合はM&Aの専門家に相談しましょう。
まとめ
M&Aにおいてエグゼキューションは重要なフェーズです。専門知識を要する場面も多く、時間を取られてしまうこともあるでしょう。そこで、通常業務に支障をきたすことなく、円滑にエグゼキューションを進めていくために、知識や実績が豊富なM&A仲介会社を活用することも1つの手です。
M&Aのエグゼキューションフェーズを成功させるために「徹底した事前準備」「M&Aの専門家に相談する」といったことを意識しましょう。
▼監修者プロフィール
岩下 岳(S&G株式会社 代表取締役) S&G株式会社
新卒で日立Gr.に入社。同社の海外拠点立上げ業務等に従事。
その後、東証一部上場のM&A仲介業界最大手の日本M&Aセンターへ入社ディールマネージャーとして、複数社のM&A(株式譲渡・事業譲渡・業務提携等)支援に関与。IT、製造業、人材、小売、エンタメ、建設、飲食、ホテル、物流、不動産、サービス業、アパレル、産業廃棄物処分業等、様々な業界・業種でM&Aの支援実績を有する。現在はS&G代表として、M&Aアドバイザー、及び企業顧問に従事している。