M&Aにおける資金調達の方法は?方法別のメリット・デメリットを解説
M&Aの資金調達には、銀行や日本政策金融公庫からの融資や補助金、株などさまざまな方法があります。しかし、ご自身のケースではどの方法を選ぶのが適切か、迷うこともあるでしょう。
そこでこちらの記事では、以下の5点について解説します。
- M&Aで資金調達する目的
- 資金調達の方法
- 最適な資金調達方法の選び方
- 各資金調達方法のメリット・デメリット
- M&Aの資金調達を成功に導くコツ
M&Aで資金調達をする目的
M&Aでは、一般的に資金調達が必要となります。なぜならM&Aで企業買収もしくは合併する場合、買収側は多額の費用を負担するからです。
M&Aにおける代表的な支出項目は、以下のとおりです。
- 買収資金
- 納税費用
- 専門家への依頼料
- 交渉をはじめとする諸費用
M&Aで資金調達する目的について、それぞれ詳しく解説します。
買収資金の調達
M&Aに必要な資金で大きなパーセンテージを占めるのが、買収にかかる費用です。企業買収する際の買い取り金額は、将来にもたらされるであろう利益を推定し、初期投資の投資対効果の観点から算出された評価額です。買収額の規模はさまざまですが、数百万円程度から数億円にまでのぼるケースもあります。
買収側の視点に立つと、買収した企業が本当に将来的に利益をもたらすかは未知数です。また分割払いにしたいと考える場合もあるでしょう。さらに潤沢な資金を用意できないケースも考えられます。
しかし、M&Aでは買収の費用は一括で支払うことを基本的な原則としています。支払いのタイミングはクロージング、つまりM&Aの手続きを終えるタイミングです。
あるいは株式で対価を支払うケースもありますが、M&Aでは、現金での一括払いが基本です。そのためM&Aを考える際には、買収資金をあらかじめ用意しなければなりません。
納税費用の調達
M&Aで企業買収する際には、納税にかかる費用の用意が必要になるケースがあります。一般的にM&Aに伴って納税義務が発生するのは、譲渡した側です。会社や株式の売却によって所得が発生するため、これに対して税が加算されます。
しかし、以下の2つの場合には買収側に納税義務が発生します。
- 買収した企業に未納の税金がある
- 買収の決済後に納付予定の税金がある
これらの内容は、国税庁が定める徴収法第38条「事業を譲り受けた特殊関係者の第二次納税義務」に記された義務です。 M&Aで買収対象となる企業に未払いの税金があり、充当する分の資金の容易が難しい場合は、あらかじめ資金調達で準備する必要があります。
M&Aでの売却を希望する企業は、経営が難しい状況に置かれている傾向があります。ただし、可能な限り未納の税金を売却側が精算してから買収するよう交渉するのもひとつの方法です。
また、買収した資産の中に不動産がある場合には不動産取得税が課される可能性もあります。ただし、一定の軽減措置が受けられる可能性もあります。
出典:国税徴収法
専門家への依頼料の調達
M&Aに必要な費用には、仲介会社やM&Aに関する相談ができる専門家に支払う依頼料や手数料が含まれます。M&Aの普及に伴い、マッチングサイトのようなツールを活用して、専門家や仲介業者を介さずにM&Aを行うケースがあり、この方法はスモールM&AやマイクロM&Aと呼ばれます。
しかし、この方法はあくまでも個人が買い手となる小規模のM&Aの場合に限定されます。M&Aは、単なる事業や株式の譲渡に留まりません。そのためM&Aにおいて考慮すべき項目は、多岐にわたります。
具体的な例を挙げると、以下のとおりです。
- 企業価値の評価
- 契約書作成や法的な問題の解決、税務処理
- 株式価格の調査
スムーズにM&Aを執り行い、かつM&A後の事業をいち早く軌道に乗せるために、税務や法務をはじめとするM&Aの専門家に依頼する必要があります。
その他M&Aにおける交渉費用の調達
M&Aに必要な費用には、先述のような基本的な負担のほかに以下のようなコストがかかります。
- デューデリジェンス(Due Diligence)の費用
- 交通費や人件費
デューデリジェンスとは、M&A後に大きなリスクを回避する目的で行う調査です。具体的には買収の対象企業における資産の実態について、弁護士や会計士といった外部の専門家に調査依頼して、適正価格かどうかの判断材料を取得します。
隠れたリスクに気づかないまま買収すれば、甚大な損害を被る可能性があります。そのためデューデリジェンスは、M&Aを成功させるために欠かせません。ただし、買収する側が被るリスクを回避する目的で実施されるため、費用は買収側が負担する点にはご注意ください。
またほかにも買収予定の企業との距離がある場合は交通費、M&Aにリソースを投じる場合は人件費が計上されます。
なお、これらの費用はあくまでもM&A成立までにかかるコストです。そのため厳密には、M&A後にかかる費用も見込んで準備する必要があります。具体例を挙げると、以下のとおりです。
- 経営改善のための投資費用
- 買収後に発生したトラブルに伴う訴訟費用
- 補修費用
M&Aにおける資金調達方法の選び方
M&Aには高額な費用がかかるため、多くのケースで資金調達が必要です。しかし資金調達といっても、さまざま方法があります。またどの方法で資金調達すればリスクを最小限に抑えられるか迷うこともあるでしょう。
そこで、M&Aにおける資金調達方法の選び方について解説します。大規模な企業から中小企業の経営者、個人事業主までご活用いただける方法なので、ぜひご覧ください。
リスクの低い順番に検討する
M&Aにおいて選ばれる代表的な資金調達には、以下の方法が挙げられます。
リスクの程度 | 資金調達の方法 | 概要 | 具体例 |
↑ 低 |
自己資金 | 企業が安定した経営をするために必要な資金のうち、返済する必要がないもの | ・自己資本 |
個人借入 | 経営者自身が契約締結して借り入れた金銭 | ・日本政策金融公庫「スモールM&A向け融資」 ・経営者本人による借入 |
|
高 ↓ |
補助金 | 中小企業や個人事業主を対象にした、国による補助金 | ・中小企業生産性革命推進事業「事業承継・引継ぎ補助金」 |
融資 | 日本政策金融公庫や信用保証協会、制度融資などからの借入 | ・日本政策金融公庫「事業承継・集約・活性化支援資金」 ・信用保証協会「事業承継特別保証」 |
M&Aの資金調達をする際は、リスクの低い方法から優先して検討しましょう。なお上記の資金調達の方法ならば、自己資金<個人借入<補助金<融資の順番となります。
M&Aは、クロージング後にも資金が必要になるケースがあります。借入金額が増えるほど返済が負担になり、M&A後の事業運営のリスクになる可能性にも気をつけましょう。
株主構成の変化による影響を考慮する
M&Aにおける融資は、以下の2つに分類できます。
- 直接金融
- 間接金融
それぞれの方法について、下表にまとめました。
資金調達の種類 | 特徴 | メリット | デメリット |
直接金融 | 株式を買う個人から直接資金調達する方法 金融機関を介さない |
金利の返済が不要 | 配当金の分配が必要 株主構成に変更が生じる |
間接金融 | 金融機関を介して資金調達する方法 | まとまった金額を借入できる可能性 | 返済時に利息が加算される |
M&Aで資金調達するなら、金融機関からの融資の前に直接金融を検討しましょう。直接金融では株主から資金調達しますので、金利の返済が不要です。
ただし直接金融では、株主に対して配当金を配分する義務が生じます。なお配当金とは、株式を発行した企業が得た利益の一部、または全部を株主に分配する現金配当です。株主は持株数に応じて、利益の還元を受ける権利を持っています。
資金調達に伴って直接金融を選択した場合、株主構成が変わる可能性があります。たとえば株主の合意を得られない場合、M&Aが暗礁に乗り上げる可能性もゼロではありません。そこで想定外のトラブルを避けるために、既存の株主の意向をあらかじめ確認しておきましょう。また、その他の方法として新株主への割り当てる株式を、優先配当を受ける代わりに議決権をなくして経営参加できないように対策するという方法等、多様な資金調達の方法がありますので、これらも併せて検討してみましょう。
出典:金融庁 【金融便利帳】
経営状況や信用力に応じて決める
間接金融で借入する場合には、過去に貸付実績がある金融機関を優先的に選んでください。銀行をはじめとする金融機関から借り入れる場合、以下のような条件によって審査の通りやすさや借入できる金額、金利が変動します。
- 経営状況
- 社会的な信用力
- 収入・利益率
- 当該金融機関での借入・返済の実績
- ほかの金融機関からの借入状況
借入実績がある金融機関では、過去の取引履歴を判断材料として貸付金額や金利が決定します。逆に、はじめて借入を申し込む金融機関の場合は要注意です。なぜなら経営状況や経営者自身に関するデータが不足し、審査にとおりにくくなる可能性があるからです。
M&Aにおける主な資金調達方法
M&Aにおける主な資金調達方法を下表にまとめました。
それぞれの方法について解説します。
銀行から融資を受ける方法
M&Aの資金調達を考えるとき、真っ先に浮かぶ方法のひとつが銀行からの融資ではないでしょうか。銀行からの融資を受ける際には、審査があります。
審査でチェックされるのは、以下のような項目です。
- 経営状況
- 社会的な信用力
- 収入・利益率
- 当該金融機関での借入・返済の実績
- ほかの金融機関からの借入状況
銀行から融資を受けるメリット・デメリットは、以下のとおりです。
メリット
- 買い手の立場でM&A支援や助言を受けられる
- M&Aによる効果の実現可能性をチェックしてもらえる
デメリット
- 取引実績がないと借入が難しい
- 買収後の事業の見通しが明確でないと、審査にとおりにくい
- 借り手企業の信用力が十分でないと、個人保証を求められる
融資は銀行の主たる業務です。そのため貸付に伴う審査は、取引実績や経営状況、M&A後の事業計画といった条件次第では、難易度が高くなります。
その反面で、銀行の融資を受けると、プロによる的確なアドバイスを受けられます。厳しいアドバイスもま&Aの成功のために有益な助言と捉えられますので、活用できます。
事業承継・集約・活性化支援資金
事業承継・集約・活性化支援資金とは、日本政策金融公庫の融資制度です。なお日本政策金融公庫は国が100%出資しており、一般の金融機関が行う金融の補完を目的としています。一般的な銀行より金利が低く設定いる点が大きなメリットです。
事業承継・集約・活性化支援資金は、国民生活事業と中小企業事業の2種類です。いずれもM&Aや事業承継に伴う融資ですが、貸付対象や金額が異なります。
貸付対象 | 融資限度額 | |
国民生活事業 | 個人企業や小規模企業向けの小口資金 | 別枠7,200万円 (うち運転資金4,800万円) |
中小企業事業 | 中小企業向けの長期事業資金 | 直接貸付 14億4千万円 |
事業承継・集約・活性化支援資金のメリットとデメリットは、以下のとおりです。
メリット
- 一般的な銀行より低金利で融資を受けられる
- 貸付対象が幅広い層に開かれている
デメリット
- 審査項目が細かく定められている
事業承継・引継ぎ補助金
事業承継・引継ぎ補助金は、中小企業を対象に国や自治体が行っている助成金・補助金制度です。事業承継だけでなく、M&Aや経営革新に伴う経費の一部を補助します。
支援の対象によって、3つの事業に分かれています。
- 経営革新事業
- 専門家活用事業
- 廃業・再チャレンジ事業
M&Aの場合には、経営革新事業か廃業・再チャレンジ事業の利用が可能です。事業承継・引継ぎ補助金のメリットとデメリットには、以下のような点が挙げられます。
メリット
- 返済が不要
- 日本国内に拠点を置く中小企業事業者であれば申請可能
デメリット
- 募集期間や採択件数が決められている
- 指定期日までに支払った経費が補助対象
- 交付申請が採択されないと、経費は補助対象にならない
エクイティファイナンス
エクイティファイナンスとは、株式を発行して出資を受ける方法です。金融機関からの借入とは異なり、利息がかからない、出資金が増えるといったメリットが見込めます。上場している大手企業から中小企業まで広く活用されている方法です。
直接融資であるエクイティファイナンスは、以下の3つに分類可能です。
- 公募増資
- 株主割当増資
- 第三者割当増資
それぞれの方法について、概要をご説明します。
公募増資
公募増資では、新株を発行して資金を調達します。株式の発行は、企業にとって有効な資金調達の方法です。 公募増資では、不特定かつ多数の投資家に株式の取得申し込みを促し、発行して資金を集めます。
株式市場を通して広く募集する方法であり、上場している大手企業が増資のために活用する資金調達方法です。なお投資家の需要によって、株価の高低が決まります。
公募増資のメリットとデメリットは、以下のとおりです。
メリット
- 広範囲からの資金調達が可能
- 大きな金額を集められる可能性がある
- 返済義務がないため経営を圧迫しない
デメリット
- 既存株主の持株の比率が変わる可能性がある
- 配当金の支払いが増える
- 資金が集まりすぎると税制優遇を受けられない可能性がある
第三者割当増資
第三者割当増資は、すでに株式を保有している株主に対して、さらなる出資を募る資金調達法です。M&Aのほか、経営再建や株主との関係強化に活用されるケースもあります。上場している大手企業から小規模な非上場の中小企業まで、幅広く利用される資金調達方法です。
第三者割当増資を実施すると、企業の資本金が増えます。資本金の額が増えるほど、社会的信用力の強化が期待できる点が大きなメリットです。
ほかのメリットやデメリットは、以下のとおりです。
メリット
- 必要な資金を比較的迅速に調達できる
- 返済義務がない
- 出資者とのパートナーシップの強化
- 資本金が増える
- 信用力の強化
デメリット
- 既存株主の持株比率が低下する
- 配当金の支払いが増える
- 株主総会で事前に承認を受ける必要がある
株主割当増資
株主割当増資は、株主を増やして出資を募り、資金調達する方法です。既存の株主に対して、新株の発行による出資を求めます。株主に追加の出資を依頼する点で共通する第三者割当増資との違いは、持株比率に応じて新株を発行して出資を求める点です。
ただし株主には、出資しない選択があります。株主が割り当てられた新株の出資に応じない場合は、株式保有率および株主総会における議決割合の低下は免れません。しかし強制力はなく、あくまでも株主の選択に任されています。
株主割当増資は、一般的に取引先や身内、役員といった株主に対して行われます。そのため株主割当増資は、縁故募集とも呼ばれます。
株主割当増資のメリットとデメリットをまとめると、以下のとおりです。
メリット
- 株主全員が新株を引き受けた場合は、株主構成比率が変わらない
- 資金調達後の企業の経営判断に影響が出にくい
- 時価よりも低い価格で新株を発行できる
デメリット
- 大規模な資金調達が難しい
- 資金調達後も株主の数が増えない
- 母体強化につながらない
LBO
LBO(Leveraged Buyout・レバレッジド・バイアウト)とは、自己資金と融資によるM&Aです。金融機関からの融資で資金調達する方法であり、自己資金が少額な中小企業を中心に利用されています。
LBOの特徴は、審査に際してM&Aで買収する相手先企業の資産や将来性といった信用力が重視される点です。融資の審査における信用力は買収先の企業に依拠しますが、返済金については買収した企業が負担します。
LBOは、主に将来性が見込まれる企業をM&Aで買収するに際して自己資金が少ないといったケースで活用されます。LBOの名称にあるようにレバレッジ、つまり「てこ」入れして、将来性のある企業を少ない自己資金で手に入れるための方法です。
LBOのメリットとデメリットをまとめると、以下のとおりです。
メリット
- 少ない資本で大きなメリットを得られる可能性がある
- M&Aに伴う負担を軽減できる
デメリット
- 見込みが外れる可能性がある
- 金利が高い
MBO
MBOは、Management Buyout(マネジメント・バイアウト)の略であり、「経営陣による買収」と訳されます。自社の経営陣が親会社やオーナーから株式や一部の事業部門の経営権を買い取る方法であり、企業内部のM&Aと言えます。
MBOは、上場している大企業から非上場企業まで広く使われている方法です。MBOが実施されると、一般的には企業の株価は上昇します。なぜなら、MBOに伴って既存の株主に対して直近の株価に上乗せした買い取り価格が設定されるからです。しかし、上場している会社がMBOを行った場合には上場が廃止されます。
メリット
- 経営状況
- 社会的な信用力
- 収入・利益率
- 当該金融機関での借入・返済の実績
- ほかの金融機関からの借入状況
デメリット
- 経営に関する第三者のチェックが十分に行われない
- 資金調達力に限界があり、ほかの資金調達法と併用するケースが多い
<3>EBO
EBOとは、Employee Buy Out・エンプロイーバイアウトの略称です。エンプロイー、つまり「従業員」が企業の株式を買い取り、経営権を取得します。MBOでは、買収者は経営陣ですが、EBOでは従業員による企業の買収である点が異なります。
EBOは、主に中小企業のM&A手法として採用されます。中小企業では後継者の不在に悩むケースは少なくありませんので、従業員が株主となって事業承継するEBOを採用すれば、経営方針や雇用を維持しながら事業承継できる可能性が高まります。
なおEBOに伴うM&Aの資金調達は、金融機関からの融資のほか、投資信託のような金融商品によって充当する方法が一般的です。
EBOにおけるメリットとデメリットには、以下のようなものがあります。
メリット
- 法的手続きがほかのM&Aより簡便
- 事業承継がスムーズに行われやすい
- 経営方針や雇用が維持されやすい
デメリット
- M&Aに伴う自社内での資金調達が難しい
- 負債をはじめとする経営リスクも引継ぐ
アセットファイナンス
アセットファイナンスとは、既存の資産や事業を換金してM&Aの資金を調達する方法です。アセットファイナンスでの資金調達には、主に以下の2つがあります。
- 固定資産をはじめとする保有資産を換金して資金調達
- 事業を売却して資金調達
いずれの方法も、自己資産を換金してM&Aの資金調達を行います。新たな借入がないため、負債も返済の義務もありません。財務状況の悪化は避けながら資金調達できる方法です。
ただし、アセットファイナンスを行うと保有資産が減少する点にはご注意ください。また換金しても、M&Aに十分な資金を用意できるとは限りません。万が一にも追加で融資を申し込む場合には、自己資金の減少に伴い審査の難易度が上がる可能性も念頭に置く必要があります。
アセットファイナンスのメリットとデメリットは、以下のとおりです。
メリット
- 借入のリスクなしに資金調達できる
- 返済の義務がない
デメリット
- 資産が減少する
- 資産を売却できる確約はない
- 十分に資金調達できない可能性がある
M&Aにおける資金調達方法のメリット・デメリットを比較
M&Aにおける資金調達には、さまざまな方法があります。そこで、それぞれの方法のメリット・デメリットを下表にまとめました。。
なお資金調達の方法はリスクの高い順に並んでおり、下に進むほど低リスクです。
資金調達の方法 | メリット | デメリット | 企業規模 | |
間接金融 | 銀行からの融資 (LBO・MBO ・EBOなどで採用するケースがある) |
まとまった金額の資金調達が可能 | 金利がかかる 返済が必要 |
個人事業主 中小企業 大企業 |
アセットファイナンス | 保有資産を売却 | 返済不要 | 保有資産の減少 | 個人事業主 中小企業 大企業 |
直接金融 ・エクイティファイナンス |
資金調達を株主に頼る ・公募増資 ・第三者割当増資 ・株主割当増資 |
返済不要 | 株主構成の変更による経営への影響が懸念される | 株式会社 |
補助金 | 事業承継・集約・活性化支援資金ほか | 返済不要 | すでに使用した経費に適用 | 個人事業主 中小企業 |
M&Aの資金調達を考える際は、リスクを最小限に抑えられる方法から順番に検討してください。M&Aを実施する過程では買収する企業の将来性を十分に調査しますが、成功する確約はありません。不測の事態に備えるために、負債となる借入は最小限に抑える工夫が必要です。
M&Aにおける資金調達を成功させるポイント
M&Aにおける資金調達を成功させるポイントは、以下の3つです。
- プロのM&Aアドバイザーに相談する
- 事業計画書など必要書類の作成
- 収入・利益率
プロのM&Aアドバイザーに相談する
M&Aには資金調達を含め、複雑な手続きや専門的な判断が必要です。たとえば、M&Aを目的とした資金調達で銀行融資を希望する場合、以下のような項目について検討する必要があります。
- 自社の資産の算定
- 借入後の返済計画の考案
- M&Aにより見込める利益率の算出
ほかに審査を通過できる書類の作成でも、専門家のアドバイスは欠かせません。またM&Aに際しては資金調達以外に、交渉や手続き、株主との調整があります。さらに法律・金融・買収先企業の業界に関する情報といった高度な専門知識も必要です。
M&Aに伴う資金調達やM&Aに伴う調査や手続き、判断を的確に進めるためには、プロのアドバイザーに依頼することをご検討ください。
事業計画書など必要書類の作成
M&Aの資金調達で融資を受けるには、決算書や事業計画書の作成が必要です。過去に別の要件で作成した事業計画書がある場合でも、内容が変更になっている可能性がありますので改めて作成しなければなりません。また事業計画書は使用目的に合わせて、内容やボリューム、フォーカスすべき点を調整しなければなりません。
たとえばM&Aで銀行からの資金調達を目的とする場合は、以下のような項目に焦点をあてて記載する必要があります。
- 財務状況の健全性
- 今後の収益予測
- 市場での優位性
- M&A後のビジネス展開
M&Aの資金調達を成功させるためには、審査に通るポイントを熟知した専門家に相談してから、書類を作成しましょう。
ベストなタイミングを捉える
M&Aの資金調達でつまずきやすいポイントの一つ、タイミングの見極めです。自社および買収先企業の経営状況や市場環境や交渉のスキームを考慮しながら、ベストなタイミングでM&Aを進める必要があります。また資金調達のタイミングも適切に計りながら、準備を進めてください。
特に補助金や助成金には、注意が必要です。補助金や助成金は、使用した経費に対して支給されます。そのためM&Aにあたってまとまった金額を用意したい場合では、補助金や助成金では必要な資金を調達できない可能性が高いでしょう。
また銀行や日本金融公庫などの融資も、審査に時間がかかるケースも考えられます。そこで、M&Aでどのくらいの資金調達が必要かを事前に算出し、早めに手配しておきましょう。そしてベストなタイミングが訪れた際に全力で前進できるよう、専門家の助言を受けながらM&Aを進めてください。
まとめ
M&Aの資金調達には、以下のようにさまざまな方法があります。
- 金融機関からの融資
- 株の発券
- 自己資金の売却
- 助成金や補助金
それぞれのメリットや返済期間、金利を考慮し、専門家のアドバイスも加味しながら万全の準備を整えてください。
▼監修者プロフィール
岩下 岳(S&G株式会社 代表取締役) S&G株式会社
新卒で日立Gr.に入社。同社の海外拠点立上げ業務等に従事。
その後、東証一部上場のM&A仲介業界最大手の日本M&Aセンターへ入社ディールマネージャーとして、複数社のM&A(株式譲渡・事業譲渡・業務提携等)支援に関与。IT、製造業、人材、小売、エンタメ、建設、飲食、ホテル、物流、不動産、サービス業、アパレル、産業廃棄物処分業等、様々な業界・業種でM&Aの支援実績を有する。現在はS&G代表として、M&Aアドバイザー、及び企業顧問に従事している。