バイアウトの事例10選!会社売却の相場や成功させるポイントもご紹介!

バイアウトとは対象企業の株式を買い取り、経営権を取得して買収することです。バイアウトを検討していく場合、「バイアウトってどんな目的でやるの?」「他社のバイアウトの買収金額はどれくらい?」といった疑問を抱えることもあるでしょう。

そこで本記事では、バイアウトの事例10選を紹介しています。他社の事例を参考に、相場や成功させるコツをチェックしてみてください。

バイアウトとは何?

バイアウトとは、議決権の半数以上を買い取って、企業の経営権を取得する買収方法のことです。今後も経営を続けていくため実施され、買収によって投資に使った資金を回収して企業を再建するのです。

同じように買収をする「M&A」では、他社が事業拡大を狙って企業を買収します。一方で、バイアウトは、買収した企業側の収益拡大を狙って行われる手法です。

バイアウトについては以下の記事でさらに詳しく解説しています。具体的な手法やそれぞれのメリット・デメリットについても解説しているので、気になる人はぜひあわせてご覧ください。

バイアウトとはどのような意味?メリット・デメリットや手法・目的を解説

会社売却との違い

似た言葉に「会社売却」がありますが、バイアウトの目的が経営権の取得に対し、会社売却の目的は利益を得ることです。会社売却ではIPO(株式公開)もしくはバイアウトの手法で株式を売却し、資本回収を目指します。

詳しくは以下の記事で解説しているので、あわせてご覧ください。

会社を売りたい!会社売却のメリット・デメリットと方法

バイアウトの事例10選

以下では、バイアウトの事例10選をご紹介していきます。バイアウトした目的と買収金額をあわせてご紹介するので、参考にしてみてください。

    • 大王製紙と丸紅によるサンテル社のバイアウト
    • 新生銀行によるUDCのバイアウト
    • グローリーによるアクレレック社のバイアウト
    • 三菱商事と中部電力によるEneco社のバイアウト
    • じげんによるリジョブのバイアウト
    • グリーによる3ミニッツのバイアウト
    • クックパッドによるコーチ・ユナイテッドのバイアウト
    • KDDIによるソラコムのバイアウト
    • 博報堂DYホールディングスによるソウルドアウトのバイアウト
    • ウエルシアホールディングスによるふく薬品の子会社化

事例①大王製紙と丸紅によるサンテル社のバイアウト

2020年2月、「大王製紙株式会社」と「丸紅株式会社」が、ブラジルの「サンテル社」を約584億円で買収しました。

大王製紙は、ティッシュの「エリエール」やベビー用おむつの「GOO.N」など、衛生用紙で知名度を上げてきた企業です。総合商社の丸紅は紙製品の海外展開を事業成長の機会と捉え、海外企業の買収に動きました。

人口増加や経済発展が著しいブラジル市場に目をつけ、衛生用紙を販売する企業としてブラジルで認知度が高いサンテルを買収先として選んでいます。

大王製紙はブラジルに進出することによるさらなる事業拡大と、サンテルの成長促進を目的にバイアウトが実施されています。

事例②新生銀行によるUDCのバイアウト

2020年6月、「株式会社新生銀行」がニュージーランドの「UDCファイナンス社」の全株式を取得し、完全子会社化しました。買収金額は約7.6億ニュージーランドドル(日本円で約640億円)です。

UDCファイナンスは、個人向けのオートローンや法人向けのファイナンス事業を行っている企業です。「小口ファイナンス」を中期の経営戦略としている新生銀行グループは、戦略が合致するUDCファイナンスを買収先として選びました。

先進国では比較的GDPの成長率が高い、ニュージーランドでの事業成長を期待して買収が実施されています。

事例③グローリーによるアクレレック社のバイアウト

2020年1月、「グローリー株式会社」がフランスの「アクレレック社」の株式を80%取得する買収を行いました。買収金額は約242億円です。

グローリーは通貨処理機やセルフサービス機器の開発メーカーであり、アクレレックはセルフサービスキオスクの機器メーカーです。

グローリーグループのIT技術と、アクレレックのモバイルオーダーシステムの技術を通じて、「スマートストアマーケット」の自動化社会を実現しようと尽力しています。グローリーの海外事業の拡大と、両社製品の販売拡大を目的にバイアウトが実施されました。

また、アクレレックのCEOが株式の20%を保有し続けることで、引き続き同社の経営にあたり、事業拡大に貢献することも期待されています。

事例④三菱商事と中部電力によるEneco社のバイアウト

2020年3月、「三菱商事株式会社」と「中部電力株式会社」が、オランダの「Eneco社」の全株式を約5,000億円で取得して完全子会社化しました。

Eneco社は、再生可能エネルギー開発を積極的に進める総合エネルギー事業会社です。三菱商事はEneco社の技術やノウハウを活用し、再生可能エネルギー開発を加速させる目的で買収しています。

三菱商事と中部電力は、Eneco社と双方の知見を活用しながら、環境保全などを推進していくことを目指しています。

事例⑤じげんによるリジョブのバイアウト

2014年9月、「株式会社じげん」は「株式会社リジョブ」の全株式を約20億円で取得し、買収を実施しました。

じげんは、住まいや結婚などのライフイベント領域でメディアを運営している企業です。一方のリジョブは美容ヘルスケアに特化した業界最大手の求人メディアを運営しています。

じげんは、日本のヘルスケア産業の市場規模拡大を見越して、リジョブの買収を行いました。サイト運営やWebマーケティングのノウハウを活かし、共同することで事業規模の拡大を目指しています。

事例⑥グリーによる3ミニッツのバイアウト

2017年2月、「グリー株式会社」は「株式会社3ミニッツ」の株式を43億円で取得し、子会社化する買収を行いました。

グリーは、モバイルソーシャルゲームの開発を中心に、ゲーム・アニメ事業やメタバース事業を展開する企業です。3ミニッツは、ファッション動画マガジン、動画マーケティング、インフルエンサーマーケティングなどを手掛けるクリエイティブ企業です。

2016年当時の動画広告市場は前年比157%で動画広告の成長が見込まれていました。そんな中でグリーは、3ミニッツを子会社化することで事業をさらに成長させることを目的とし、バイアウトが実施されています。

事例⑦クックパッドによるコーチ・ユナイテッドのバイアウト

2013年9月、「クックパッド株式会社」はプライベートコーチのCyta.jpを運営する「コーチ・ユナイテッド株式会社」の株式を10億円で取得し、完全子会社化しています。

クックパッドは、レシピの検索・投稿サイトを運営している企業ですが、新規事業の立ち上げに注力していました。一方のコーチ・ユナイテッドは、レッスンの検索・予約のほか、スマホ普及にあわせてハウスキーピングやベビーシッターなど幅広いサービス展開を目指していました。

クックパッドの利用者層である既婚女性に向けたサービス展開を見込み、利用者数増加を目指してバイアウトを実施しています。

事例⑧KDDIによるソラコムのバイアウト

2017年8月、「KDDI株式会社」は「株式会社ソラコム」の株式を取得し、連結子会社化しました。買収額は非公開ながら、一部では200億円と報じられています。

ソラコムは、通信プラットフォーム「SORACOM」を提供している企業で、IoT領域におけるリーディングカンパニーです。モバイル通信サービスを提供するKDDIは、さらなるIoTの普及拡大を目的にソラコムをバイアウトしました。

両社の連携により、世界に通じるIoTプラットフォームの構築を目指しています。

事例⑨博報堂DYホールディングスによるソウルドアウトのバイアウト

2022年4月に、「株式会社博報堂DYホールディングス」は「ソウルドアウト株式会社」の株式の公開買い付けを実施するバイアウトを行いました。

ソウルドアウトは、地方企業や中小企業の顧客を多く抱えるインターネットビジネス支援事業を展開する会社です。大手広告代理店である博報堂DYホールディングスは、これから成長が見込まれる地方企業・中小企業のデジタル広告展開をしていくべく、ソウルドアウトを子会社化しました。

地方に強いというソウルドアウトの特徴を活かし、連携することで高い売上目標達成を目指しています。

事例⑩ウエルシアホールディングスによるふく薬品の子会社化

2022年7月、「ウエルシアホールディングス株式会社」は「株式会社ふく薬品」の52.58%の株式を取得して子会社化しました。

両社ともドラッグストアの運営をする企業ですが、ウエルシアは同業他社の競争が激化するドラッグストア業界の中で、国内2,493店舗を展開してきました。沖縄県エリアの「人口の継続増加」「全国1の出生率」といった優位性のある消費環境を最大限に活かすため、沖縄県内に20店舗以上を展開するふく薬品を子会社化したのです。

ふく薬品の沖縄エリアでの高い信頼と、ウエルシアのノウハウや人材を連携させることで、経営規模の拡大を目指しています。

バイアウトの相場

買収する買い手側の相場価格と、売却する売り手側の相場価格には相違があります。一概に定数があるわけではありませんが、傾向としては買い手側の相場金額は低めに見積もられ、売り手側の相場金額は高めに見積もられます。

買い手は、目に見えない会社の価値に対して自社の大事な資金を使えないため、安く見積もるのでしょう。買収した後はその会社の経営者となる場合が多いですが、一定期間は業績が悪化したり、退職者が増加したりするリスクも伴います。経営不振を見越して、自社の資金に余裕を持った買い取り金額を考慮しておくと安心です。

一方、売り手はこれまで成長させてきた会社の売却において、多額の売却益を期待するため高く見積もりがちです。しかし、自分たちの会社や事業を過大評価することもあるため、買収する際はその企業の価値に見合う金額かどうかの見極めは必要となります。

バイアウト価格の算出方法など、より詳しい相場に関する情報は以下の記事で解説しています。相場についてもっと知りたい人は、ぜひあわせてご覧ください。

バイアウトやM&Aの相場とは?価格の決め方や高値で売却するポイントを解説

バイアウトを成功させるポイント

バイアウトを成功させるポイントは以下の4つです。

    • 企業価値を事前に評価しておく
    • バイアウトの専門家に相談する
    • バイアウトファンドを活用する
    • タイミングを逃さない

バイアウト成功のコツとなるので、しっかり確認しておきましょう。

企業価値を事前に評価しておく

自社の価値を正しく評価できる方法を使い、企業価値を算出しておきましょう。企業価値の算出方法としては、以下の方法があります。

    • 簿価純資産法
    • 時価純資産法
    • 市場株価法
    • 類似会社比較法
    • 収益還元法
    • 配当還元法
    • DCF法

安すぎる価格で交渉を進めると、株主が受け取る利益を減らしてしまいます。一方で高すぎる価格だと買い手がなかなか現れないなどの支障をきたします。企業価値の算出は少し難しいので、専門家に相談するのがおすすめです。

バイアウトの専門家に相談する

前項の企業価値の算出のように、バイアウトの準備や手続きは複雑な部分が多いため、専門家に相談しましょう。自社だけでバイアウトを実施しようとすると失敗しやすいです。

十分な知識・経験を備えるM&A仲介業者に依頼するのがおすすめですが、M&A仲介業者も数が多く選ぶのが難しいという現状もあります。

そういった場合には、ぜひ「TSUNAGU」をご利用ください。M&Aの品質基準を満たすM&A仲介会社と連携しており、豊富な買い手リストから売主様に最適な相手探しを支援しています。

バイアウトファンドを活用する

バイアウトファンドとは、投資家から資金を集めて対象企業の価値向上に努め、業績改善後に企業を売却して利益獲得を目指すファンドのことです。

経営に介入する手間はありますが、バイアウトファンドからの出資を受けられると、経営権の確保に必要となるお金の不足分を補えます。

タイミングを逃さない

自社の成長段階や外部環境などから、バイアウトするタイミングを見極める必要があります。たとえば、「会社が幼年期にある」「法改正が予定されている」などの時期だと買い手が現れにくいです。

売り手側は「企業が成長期の段階にある」「市場環境が良い」といったタイミングを選ぶことで、高値でバイアウトすることを目指しましょう。

事例を参考にしてバイアウトを成功させよう

今回ご紹介した事例では、その企業の経営方針や展開させたい事業内容にあわせて買収先を選び、数十〜数百億ほどでバイアウトが実施されていました。

事業拡大や更なる企業の成長だけでなく、社会への貢献や技術力の向上も目指している企業が多い傾向にあります。

また、バイアウトを成功させるためには企業価値の算出やバイアウトファンドの活用なども重要です。自社だけでバイアウトを成功させることは難しいため、ぜひM&Aのプロに相談してみてください。

ディスクリプション:

バイアウトとは、対象企業の株式を買い取ることで、経営権を取得して買収することです。本記事では、バイアウトの事例10を紹介しています。他社の事例を参考に相場や成功させるコツをチェックしてみてください。

▼監修者プロフィール

岩下 岳

岩下 岳(S&G株式会社 代表取締役) S&G株式会社

新卒で日立Gr.に入社。同社の海外拠点立上げ業務等に従事。
その後、東証一部上場のM&A仲介業界最大手の日本M&Aセンターへ入社ディールマネージャーとして、複数社のM&A(株式譲渡・事業譲渡・業務提携等)支援に関与。IT、製造業、人材、小売、エンタメ、建設、飲食、ホテル、物流、不動産、サービス業、アパレル、産業廃棄物処分業等、様々な業界・業種でM&Aの支援実績を有する。現在はS&G代表として、M&Aアドバイザー、及び企業顧問に従事している。