【2024年最新版】M&Aの成功事例10選!日本の大企業・中小企業別に紹介
M&Aを検討している方の中には、他社の成功事例が気になっている方もいるのではないでしょうか。
後継者問題を抱えた企業や認知度の向上などの理由から、M&A市場は活発化しています。
本記事では、M&Aの現状や増加している理由や成功事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
【2024年版】日本のM&Aの現状
M&Aとは、企業同士が合併や買収を行う行為のことです。
大企業だけでなく中小零細企業もさまざまな理由からM&Aを行っており、件数は年々増加しています。
ここでは、以下の3つの観点から日本のM&Aの現状を紹介します。
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- 後継者問題に悩む企業の増加
- M&A件数は増加傾向
- 2023年のM&A金額トップ10
詳しく紹介するので、M&Aを行うか検討している方はぜひ参考にしてください。
M&Aの現状について細かい部分まで知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
関連記事:M&A 現状
後継者問題に悩む企業の増加
2024年現在、後継者問題に悩んでいる企業が増加していることが、M&Aの件数にも影響が出ています。
帝国データバンクの「全国「後継者不在率」動向調査」によると、53.9%の企業が後継者問題に悩んでいます。
60歳以上の経営者のうち60%が将来的な廃業を検討しており、そのうち約30%が後継者問題を抱えているようです。
また、2025年までに中小企業や小規模事業者の約64%である245万人程度が70歳を迎えるため、後継者問題に悩む方が増えると言われています。
後継者問題の解決策としてM&Aが使われるようになり、改善傾向が続いています。
M&A件数は増加傾向
「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」によると、2023年のM&A件数は増加傾向にあり、総件数は1,068件と3年連続で増加傾向となっています。
リーマンショック以降16年ぶりに1,000件を超えており、年々M&A件数が増えています。
M&A件数は2020年のコロナウイルス蔓延以降は一旦減っていましたが、経済の正常化によって現在は増加傾向です。
M&A仲介会社や銀行などの民間企業だけでなく、事業引継ぎ支援センターをはじめとした公的機関のサポートが充実してきていることも、増加傾向の要因のひとつです。
2023年のM&A金額トップ10
2023年のM&A金額トップ10は以下の通りです。
社名 | 金額 |
日本製鉄 | 2兆75億円 |
東芝 | 1兆9,999億円 |
JSR | 9,039億円 |
アステラス製薬 | 8,040億円 |
大正製薬ホールディングス | 7,077億円 |
新光電気工業 | 6,848億円 |
東京ガス | 4,050億円 |
第一生命ホールディングス | 2,856億円 |
アウトソーシング | 2,211億円 |
ベネッセホールディングス | 2,079億円 |
このように、2023年は多くの大手企業がM&Aを実行しており、M&A総額は前年比78%増の12兆1786億円となっています。
件数だけでなく金額も増えているため、2024年も増加することが予想できます。
大企業のM&A成功事例一覧
大企業のM&A成功事例として以下の5件を紹介します。
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- ビックカメラの事例
- マネックスグループの事例
- りそな銀行の事例
- 博報堂DYホールディングスの事例
- 住友重機械工業の事例
それぞれの案件について詳しく紹介するので、M&Aの手法や背景を知りたい方はぜひ参考にしてください。
ビックカメラの事例
2018年8月、ビックカメラは簡易株式交換を行い、エスケーサービスを完全子会社化するためのM&Aを実行しました。
エスケーサービスは家電の配送や製品の納品、産業廃棄物の収集・運搬に加えて、家電の取付工事を行っている企業です。
ビックカメラは家電製品や白物家電などを販売しており、配送サービスの向上を目的としたM&Aとなっています。
M&Aによって、家電の販売だけでなく、配送や取付工事までトータルでサポートできるようになりました。
M&A後の株式交換比率は、ビックカメラ対エスケーサービスで1:301となっています。
マネックスグループの事例
2018年4月、マネックスグループはM&Aを行い、仮想通貨の取引業を行うコインチェックを買収しました。
このM&Aの買収額は36億円であり、株式をすべて取得してコインチェックを完全子会社化しています。
コインチェックは、仮想通貨「ビットコイン」の取引所を運営しており、2017年にはビットコインの取引高で日本一を記録した企業です。
一方、マネックスグループは金融事業会社の株式を所有しています。
グループ内には、国内外で事業を営むネット証券があり、ベンチャー企業への投資事業を行っています。
金融事業や投資事業だけでなく仮想通貨交換業に将来性があると判断し、業界に参入することを目的としてM&Aを行いました。
M&Aの完了後、マネックスグループはコインチェックに対して条件付きで追加の対価支払いを行いました。
りそな銀行の事例
2017年7月、りそな銀行によるシンガポールのAFC Merchant BanのM&Aを実行しました。
りそな銀行はAFC Merchant Banの株式をすべて取得し、完全子会社化を行っています。
AFC Merchant Banはシンガポールに拠点を置き、東南アジアのシンガポール・マレーシア・タイ・インドネシア・フィリピンの金融会社が中心となって、設立されています。
りそな銀行はりそなホールディングスの子会社であり、国内に幅広く展開している信託銀行です。
りそな銀行は東南アジアの日系企業に対する金融サービスの提供を目的とし、M&Aを実行しました。
AFC Merchant Bankの買収を実行したことにより、シンガポールを中心にマレーシア・タイ・インドネシア・フィリピンへの金融サービスの提供を開始しました。
博報堂DYホールディングスの事例
2022年2月、博報堂DYホールディングスはM&Aによって、デジタルホールディングスの傘下のソウルドアウトを完全子会社化しました。
ソウルドアウトは、インターネットビジネス支援事業を中心に手掛けている会社です。
2009年に設立され地方企業や中小企業の顧客を多く抱えており、2017年にマザーズに上場し2019年に東証1部に移った企業です。
博報堂DYホールディングスは、地方企業・中小企業の顧客が多いソウルドアウトのネットワークを使って、体制強化や売上の向上を目指すためにM&Aを実行しました。
住友重機械工業の事例
2018年6月、住友重機械工業はイタリア企業Lafert S.p.Aの株を取得して子会社化を行いました。
このM&Aの取得額は213憶5,600万円ですが、株式取得時には追加の支払いを盛り込んだ取引となっています。
追加支払いの限度額は7億6,900万円としており、2019〜2020年の業績を鑑みて、Lafert S.p.A.に支払われる契約でM&Aが行われています。
Lafert S.p.A.は産業用のモーターやモーションコントロールの製造、販売をするイタリアの会社です。
住友重機工業は顧客満足度の向上やヨーロッパ市場の強化、技術の共有によるシナジー効果獲得などを目的としてM&Aを行いました。
中小企業のM&A事例一覧
中小企業のM&A事例として、以下の5社を紹介します。
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- いかわ発酵の事例
- I-Energyの事例
- よしだ商運の事例
- 和洋菓子工房 泉屋の事例
- 谷井田自動車の事例
それぞれ詳しく紹介するので、事業承継に悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
いかわ発酵の事例
いかわ発酵は、事業開始から順調に売上を伸ばしていましたが、事業拡大のためには資金と人が必要である点に悩みを抱えていました。
採用や資金調達以外の選択肢としてM&Aを検討し、事業承継・引継ぎ支援センターへ相談をしました。
結果として、八木建設とのマッチングができ、第三者割当増資による資本提携という形で第三者承継が成立しています。
八木建設は、土木・舗装工事やアスファルト合材の製造から販売まで一貫して行っている企業です。
事業多角化のためにM&Aを検討し阿南信用金庫に相談したところ、いかわ発酵を紹介されてマッチングしています。
製造と企画・営業を分担して行うことで、いかわ発酵の事業を拡大して八木建設の多角化経営も進められています。
I-Energyの事例
I-Energyは、子どもに承継意志がない状態で経営者が体調不良になり、スタッフも高齢で後継者不在という状況からM&Aを検討していました。
I-Energyは地域に根付いたガソリンスタンドであり、地区に3軒しかないことから潰すことはできないと考えて事業承継・引継ぎ支援センターに相談をしています。
事業承継・引継ぎ支援センターに相談をしたものの、県内でのマッチングが難しくM&Aが難航していたところに、業界新聞をみたエスジーから連絡が入りM&Aが成立しました。
エスジーは石油製品の配達業を行っている企業であり、I-Energyとは似た業態でした。
I-Energyとエスジーは株式譲渡契約によるM&Aが成立し、ガソリンスタンドの経営も継続しています。
よしだ商運の事例
よしだ商運は、地域に根差した運送会社であり後継者問題を抱えていたため、日本政策金融公庫の相談をしていました。
日本政策金融公庫からの紹介で事業承継・引継ぎ支援センターに後継者不在の相談をし、M&Aの成立までサポートを受けました。
後継者人材バンクに登録していて、石川県内で起業をしたいと考えていた方とのマッチングが成立しています。
両社のマッチングから9ヵ月程度で株式譲渡契約が結ばれ、第三者承継が行われました。
後継者は事業の発展のためにさらなるM&Aも検討しながら、事業を引き継いでいます。
和洋菓子工房 泉屋の事例
和洋菓子工房 泉屋は、後継者不在に悩んでいる老舗の和菓子屋であり、事業承継・引継ぎ支援センターに相談をしていました。
しかし、職人も兼任する経営者となるため、後継者を探すのも難航し相手が見つからない時期が続きました。
そこで、地元の商工会に協力してもらったところ適任の人材が見つかり、事業譲渡契約によって後継者に承継されています。
事業承継後は引き継がれた味を守りつつ、積極的に事業展開や販路拡大を進めています。
谷井田自動車の事例
谷井田自動車は、後継者不在で悩んでおり、事業承継・引継ぎ支援センターにM&Aの相談をしていました。
事業承継・引継ぎ支援センター内のマッチング支援にて株式の譲渡先を見つけ、面談を重ねて条件を調整し、株式譲渡契約にてM&Aが成立しました。
自動車関連事業を行っていたが将来性に不安があるため、不動産賃貸業への業態転換も行い新しいスタートを切っています。
M&Aを行う目的
M&Aを行う目的を以下の二つにわけて紹介します。
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- 買い手側の目的
- 売り手側の目的
両社の目的を詳しく紹介するので、M&Aを行うか悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
M&Aの目的についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
関連記事:M&A 目的
買い手側の目的
買い手の目的として、新規事業を始める際の時間やリスクを最小限に抑えられることがあげられます。
新規事業を始める際、参入への費用・時間・リスクがネックとなってしまう企業も多いです。
M&Aによる買い手側の目的には、以下のようなものがあげられます。
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- 時間やリスクを抑えて多角化経営を始められる
- 人材やノウハウを得られる
たとえば、商品の生産を行う二つの企業が合併や買収を行い、ひとつの企業になれば設備や資源の共有ができるので経費が削減できます。
M&Aして自社の川上、川下にあたる企業を買収すれば、余計なコストを抑えられるので、利益が最大化できることを目的としてM&Aを行う企業もあります。
売り手側の目的
売り手側の目的としては、以下のようなものがあげられます。
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- 事業や会社を存続できる
- 売却益が獲得できる
たとえば、後継者が見つからない場合は会社をたたむしかなくなり、会社や事業、従業員などすべてを失うことになってしまいます。
M&Aによって事業承継することで、新しい後継者のもとで会社の存続ができ、従業員の雇用も守ることが可能です。
また、資本を持っている企業に入れれば、使える資産も増えて事業拡大が行える可能性があるため、事業の売却を検討する方もいます。
M&Aの事例を参考に自社でも実践してみよう
2024年現在、日本国内では後継者問題に悩んでいる企業が増えており、M&Aが活発化しています。
M&Aをすれば事業や従業員を守れるため、廃業や倒産をせず、M&A仲介会社や事業承継・引継ぎ支援センターへ相談する経営者も増えています。
年々件数が増えており身近になってきているので、事業の継続が困難だと感じている方はM&Aを検討してみてはいかがでしょうか。
「TSUNAGU」では、戦略立案や適切なパートナーの選定などを無料で実施しているので、お気軽にご相談ください。
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M&Aを検討している方の中には、どのような事例があるか気になっている方もいるでしょう。本記事では2024年現在のM&Aの現状や増加傾向にある理由に加え、複数の事例を紹介します。
▼監修者プロフィール

岩下 岳(S&G株式会社 代表取締役) S&G株式会社
新卒で日立Gr.に入社。同社の海外拠点立上げ業務等に従事。
その後、東証一部上場のM&A仲介業界最大手の日本M&Aセンターへ入社ディールマネージャーとして、複数社のM&A(株式譲渡・事業譲渡・業務提携等)支援に関与。IT、製造業、人材、小売、エンタメ、建設、飲食、ホテル、物流、不動産、サービス業、アパレル、産業廃棄物処分業等、様々な業界・業種でM&Aの支援実績を有する。現在はS&G代表として、M&Aアドバイザー、及び企業顧問に従事している。