【調査分析】大阪のM&Aの市場動向について徹底解説!

【調査分析】大阪のM&Aの市場動向について徹底解説!

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会社を次の世代へバトンタッチする際、後継者不在に頭を悩ませている経営者は少なくないでしょう。多くの経営者が「事業を守り、さらに発展させたい」と願っていますが、一方で「後継者がいない」「適切な引き継ぎ方法がわからない」といった不安を抱えているのが実情ではないでしょうか。

この記事では、M&Aという選択肢に焦点を当て、大阪の企業の実情に即した形で、課題解決のヒントをご提供します。

大阪のM&A・事業承継の状況

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地域・業種別の特徴

大阪府内企業の65.7%が事業承継を「経営上の問題」と認識しており、大阪府を含む近畿地方では製造業で69.7%、小売業でも69.2%と高水準です。実に3社に2社が事業承継の課題を抱えていることになります。特に、「最優先の経営上の問題」とする企業は12.7%に上り、事業承継への危機感の高さがうかがえます。

事業承継を円滑に行うために必要な事柄として、大阪府を含む近畿地方の企業の44.0%が「現社長と後継候補者との意識共有」を挙げ最多となりました。「トップの意識が変われば会社は変わる」と言われるように、経営者の意識改革なくして事業承継の成功はありません。次いで「早期・計画的な事業承継の準備」(34.3%)、「経営状況・課題の正しい認識」(33.6%)が上位に入っています。

「株式会社帝国データバンク」「特別企画:事業承継に関する近畿企業の意識調査(2021 年5月) 」https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/s210701_58.pdf(2024年3月28日閲覧)

M&Aなど、後継者問題解消に向けた取り組み

事業承継は一朝一夕には進みません。早めの準備と、自社の状況を正しく把握することが何より重要です。新型コロナの影響で事業承継が難しくなるという見方もある一方、取引先との新会社設立によるM&Aなども検討する企業の声も聞かれます。ピンチをチャンスに変える発想の転換も必要でしょう。

事業承継・M&Aでは金融機関への期待が大きいことも特徴です。長年の取引による安心感・親近感から、今後一層の活躍が見込まれています。金融機関は単なる資金の出し手ではなく、経営課題解決のパートナーとしての役割を期待されているのです。

大阪の後継者不足の状況は深刻ですが、業種や地域によって課題の度合いは異なります。製造業や小売業での意識が特に高く、後継者問題の解消に向け、M&Aなども選択肢の一つとして検討が進みつつあります。従来の「親族内承継」から、「親族外承継」へと選択肢が広がりつつあるのが大阪の特徴と言えるでしょう。

大阪の休廃業・解散の動向

2023年の大阪府の休廃業・解散件数は3,849件で、前年比10.3%増加しました。増加率は近畿2府4県の中で京都府に次いで2番目に高く、休廃業・解散率は3.63%で近畿トップとなっています。大阪経済の基盤を支える中小企業の休廃業・解散が加速しており、事態は深刻です。

休廃業した企業の代表者の平均年齢は71.1歳でしたが、「70代以上」の割合は近畿で最も低い一方、「50代」「60代」の割合は最も高くなっています。高齢の経営者が引退のタイミングを逸したケースに加え、業績悪化により比較的若い代表者が廃業を選択するケースも目立つのが大阪の特徴です。

休廃業・解散の理由を見ると、「後継者難」が最多で、全体の約3割を占めています。次いで「業績不振」「債務超過」と続きます。業績面での課題と、後継者問題が表裏一体となって、休廃業・解散を加速させている構図があります。

大阪府では、休廃業・解散件数が前年から2桁の増加率となり、近畿の中でも特に増加ペースが速い状況です。他府県と比べて休廃業・解散のリスクが高いと言え、事業承継の準備を早期に進める必要性が高まっています。「自分の代で会社を閉じる」という選択肢もあるかもしれません。しかし、事業や雇用、取引先との関係を守るためにも、可能な限り事業を次世代に引き継ぐ努力が求められます。

「株式会社帝国データバンク」「近畿地区「休廃業・解散」動向調査(2023 年)」https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/s240201_58.pdf(2024年3月28日閲覧)

大阪の人手不足状況

大阪の正社員の人手不足割合は48.9%で、前年同月比0.1ポイント増加し、3年連続で上昇しました。中小企業にとって、人材の確保・定着は経営の死活問題と言っても過言ではありません。非正社員の不足割合も26.3%で、前年同月から0.3ポイント増加しており、人手不足は正社員、非正社員を問わず深刻化しています。

業界別で見ると、大阪府を含む近畿地方の正社員の不足割合が「建設」(68.8%)で最も高く、次いで「サービス」(63.2%)となりました。大阪の基幹産業である建設業で人手不足が深刻なのは、事業継続の大きな障害となりかねません。「運輸・倉庫」は前年より減少したものの、同業界内の「物流(道路貨物運送)」では69.0%と「建設」より高い水準です。モノの流通を支える物流業の人手不足も看過できません。

非正社員の不足割合は「サービス」(44.8%)がトップで、「小売」(41.7%)が続きます。コロナ禍で大きな打撃を受けたサービス業や小売業では、事業の回復に人手不足が足かせとなっています。人材の確保なくして、業績の回復はありません。

2024年問題の対象となる「建設」と「物流」で既に7割近くの企業が正社員不足に陥っており、さらなる深刻化が予想されます。熟練技術者の大量退職により、現場の機能が停止してしまうおそれもあります。「サービス」でも人流回復を背景に、「旅館・ホテル」と「飲食店」の人手不足割合が高止まりしています。

「株式会社帝国データバンク」「人手不足に対する近畿企業の動向調査(2024 年 1 月)」https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/s240301_58.pdf(2024年3月28日閲覧)

大阪でのM&A・事業承継の進め方

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ここからは、中小企業庁の事業承継ガイドライン第3版を参考に、事業承継の進め方を解説していきます。事業承継には、親族内承継、役員・従業員承継、M&Aなど、様々な方法があります。自社の状況に合った承継方法を選択することが重要ですが、どのような手順で進めればよいのでしょうか。

ステップ1:事業承継に向けた準備の必要性の認識

事業承継の準備は、早めに始めることが大切です。中小企業庁は、「概ね60歳に達した頃には事業承継の準備に取りかかることが望ましい」と提言しています。60歳を目前に控えた経営者は、今すぐにでも事業承継に向けた行動を起こすべきでしょう。

事業承継は、一朝一夕には進みません。後継者の育成には最低でも5年、M&Aの準備にも数年の時間がかかるのが一般的です。早めの問題意識を持つことで、余裕を持って事業承継に取り組むことができます。特に、大阪のように後継者不在率が高い地域では、より計画的な準備が求められます。

もし60歳を超えている場合は、すぐにでも身近な支援機関に相談し、準備に着手すべきでしょう。商工会議所や金融機関など、事業承継をサポートする機関は各地にあります。「うちはまだ先の話」と先延ばしにせず、一歩踏み出すことが重要です。

事業承継は、経営者の人生の集大成とも言えます。「会社を次世代につなぐ」という強い意志を持つことが、円滑な承継の第一歩となるでしょう。

ステップ2:経営状況・経営課題等の把握(見える化)

事業承継を円滑に進めるためには、会社の経営状況や経営資源、知的資産等を正確に把握し、「見える化」することが重要です。自社の実力を客観的に把握することで、承継に向けた課題が明確になります。

経営状況の見える化では、財務諸表の分析が欠かせません。売上高、利益率、キャッシュフローなどの推移を把握し、自社の強みと弱みを洗い出します。また、自社の商品・サービスの競争力や、顧客基盤の状況なども整理しましょう。自社の「稼ぐ力」を可視化することが、承継先の選定にも役立ちます。

事業承継課題の見える化では、後継者候補の有無、親族内株主や取引先等の理解、将来の相続発生も見据えた準備状況等、事業承継上の課題を明確にしておくことが求められます。特に、後継者候補の有無は、事業承継の方向性を大きく左右します。社内に後継者候補がいる場合は、育成計画を立てることが急務です。一方、後継者不在の場合は、M&Aや廃業も視野に入れた検討が必要でしょう。

事業承継は、経営者個人の問題ではありません。親族内株主や取引先など、ステークホルダーの理解と協力が不可欠です。早い段階から関係者に事業承継の方針を伝え、理解を得ておくことが円滑な承継につながります。将来の相続発生も見据え、株式の集約や遺言の作成など、法的な準備も怠りなく進めましょう。

自社の強みと弱みを客観的に認識することが、事業承継の成功の鍵を握ります。「見える化」によって浮かび上がった課題を一つひとつ解決していくことで、承継への道筋が見えてくるはずです。

ステップ3:事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)

事業承継を控えた企業には、本業の競争力強化、経営体制の総点検、財務経営力の強化等により、より良い状態で後継者に引き継げるよう経営改善に取り組むことが欠かせません。承継までの限られた時間を有効に活用し、「磨き上げ」を行うことが重要です。

本業の競争力強化では、自社の商品・サービスの差別化、新規事業の立ち上げ、生産性の向上などに取り組みます。後継者が安定的な収益基盤を引き継げるよう、本業の筋肉質化を図ることが目的です。また、事業承継を機に、不採算事業の整理や業務の効率化にメスを入れることも検討しましょう。

経営体制の総点検では、組織体制や社内規程の見直し、人事制度の再構築などを行います。後継者が円滑に経営を引き継げるよう、組織基盤を整備することが狙いです。特に、大阪のように人手不足感が強い地域では、従業員の定着率向上に向けた取り組みが欠かせません。

財務経営力の強化では、資金繰りの安定化、設備投資の実行、借入金の圧縮などに取り組みます。引き継ぐ資産と負債のバランスを整え、後継者が経営の舵取りに集中できる環境を整備することが目的です。過剰債務等の課題がある場合は、早めに金融機関と相談し、事業再生に着手することも必要でしょう。

「磨き上げ」には時間がかかります。早めに着手し、一つひとつ課題を解決していくことが肝心です。専門家の助言を得ながら、できることから着実に進めていきましょう。

ステップ4:M&Aのプランニング実施

事業承継の選択肢としてM&Aを検討する場合、譲渡意思決定後は、仲介者選定、企業価値評価、マッチング、交渉等のプロセスを着実に進めていくことになります。M&Aは、多岐にわたる専門的な知識が求められる難易度の高い取引です。綿密なプランニングと実行が成否を分けると言っても過言ではありません。

仲介者の選定では、M&Aの実績や専門性、手数料体系などを総合的に評価します。自社の業界に精通し、譲渡条件のマッチングまで一貫してサポートしてくれる仲介者を見つけることが理想です。複数の仲介者に相談し、比較検討することをおすすめします。信頼できるパートナーを見つけることが、M&A成功の大前提となります。

企業価値評価では、自社の資産価値や収益力を客観的に算定します。企業価値は、譲渡価格の基準となる重要な指標です。公正な評価を得るために、公認会計士や税理士など、専門家の助言を参考にすることが不可欠です。また、無形資産や将来の成長可能性なども適切に評価することで、より有利な条件を引き出すことができます。

マッチングでは、自社の条件に合う譲渡先候補を探索します。仲介者のネットワークを活用しつつ、自社の業界動向や競合他社の動きなども分析します。譲渡先の経営方針や企業文化なども考慮に入れ、従業員の雇用や取引関係の継続など、譲渡後の事業運営もイメージしておくことが大切です。

交渉では、譲渡条件の細部を詰めていきます。価格はもちろん、譲渡時期や譲渡資産の範囲、表明保証事項など、多岐にわたる条件を取り決めます。専門家の助言を得ながら、自社の利益を最大化する条件を粘り強く交渉することが求められます。交渉の進捗に応じて、デューデリジェンス(資産査定)や契約書の作成など、法的手続きも並行して進めていきます。

M&Aは、スピード感を持って進めることが重要です。情報の機密性を保ちながら、関係者の理解と協力を得つつ、スケジュールを管理することが成功の鍵となります。プロセス全体を通して、専門家の助言を仰ぎながら、一つひとつ着実に進めていきましょう。

ステップ5:M&Aの実行

いよいよM&Aの実行段階です。譲渡契約の締結、資産移転や経営権移譲など、M&Aに関する一連の手続きを、士業専門家等の協力を得ながら進めていきます。細部に宿る不測のリスクを見落とさぬよう、慎重かつ迅速に手続きを進めることが求められます。

譲渡契約の締結では、事前の交渉で取り決めた譲渡条件を契約書に落とし込みます。契約書には、譲渡資産の範囲、譲渡価格、表明保証事項、債務の取扱いなど、取引の詳細を明記します。弁護士等の専門家に内容を精査してもらい、リーガルチェックを徹底することが重要です。

契約締結後は、いよいよ資産移転の実務に入ります。不動産や動産、知的財産権など、譲渡対象の資産を漏れなく移転します。債務の移転や従業員の承継手続きなども、関係各所と連携しながら進めていきます。手続きの完了には相応の時間を要するため、関係者への説明を丁寧に行い、理解と協力を得ることが欠かせません。

経営権の移譲では、株式の名義変更や役員の交代など、法的手続きを進めます。同時に、経営方針や組織体制の移行など、実質的な経営権の移譲も行います。譲渡先との連携を密にし、移行期間中の業務に支障が出ないよう配慮することが重要です。従業員への説明会の開催など、社内コミュニケーションにも十分に注力しましょう。

M&Aの実行では、スケジュール管理が鍵を握ります。関係者が多岐にわたるため、手続きの進捗管理を徹底し、遅延を防ぐことが重要です。また、情報管理の徹底も欠かせません。関係者外への情報漏洩を防ぎ、経営の安定性を保つことが求められます。

M&Aのゴールは、譲渡先への円滑な事業引継ぎです。事業の継続性を損なわぬよう、譲渡先との連携を密にし、一つひとつ課題を解決していくことが何より重要です。専門家の助言を仰ぎながら、トラブルを未然に防ぎ、スムーズなM&Aの完遂を目指しましょう。

大阪でのM&A・事業承継に関する相談先まとめ

事業承継やM&Aは、専門的な知識が求められる難易度の高い取り組みです。専門家の助言を得ながら進めることが何より重要ですが、一体どこに相談すればよいのでしょうか。ここでは、大阪での事業承継・M&Aに関する相談先をご紹介します。

よろず支援拠点

様々な経営課題に関する相談に対応するワンストップ相談窓口として、大阪にも設置されています。事業承継やM&Aに関する基礎的な情報提供や、専門家の紹介などを行っています。気軽に相談できる身近な窓口として、活用することをおすすめします。初めての相談先として最適です。

経営安定特別相談室

商工会議所や大阪商工会連合会が設置し、士業等専門家が各種法的手続きに関するアドバイスを行っています。事業承継やM&Aに関する専門的な相談に応じており、必要に応じて専門家を紹介してくれます。地域の商工会議所に相談窓口があるため、アクセスしやすいのが特徴です。

事業承継・引継ぎ支援センター

M&Aや経営資源引継ぎの可能性を探るほか、これらが困難な場合には廃業についての相談対応を行っています。M&Aに関する専門的な助言やマッチング支援を行うほか、事業承継計画の策定支援なども行っています。大阪府内に複数の拠点があり、府内各地の企業をサポートしています。

中小企業診断士

「中小企業支援法」に基づき、中小企業のホームドクターとして、様々な経営課題への対応や経営診断等に取り組んでいます。事業承継やM&Aに関する豊富な知見を持ち、経営改善から承継実行まで、一貫した支援を行ってくれます。地域の金融機関や商工会議所などを通じて紹介してもらうことができます。

税理士

顧問契約を通じて日常的に中小企業経営者との関わりが深く、決算支援等を通じ経営にも深く関与しています。事業承継やM&Aに関する税務面での助言を行うほか、財務デューデリジェンスや株価算定などの専門的な支援も行います。日頃から顧問税理士に相談することで、スムーズに事業承継を進められます。

金融機関

取引先企業の事業承継を金融面からサポートしています。M&Aに関する情報提供や、買収資金の融資等を行うことがあります。事業承継計画の策定や、M&A仲介会社の紹介など、様々な支援メニューを用意しているところも多いため、早めに相談するのがおすすめです。メインバンクを中心に、金融機関との連携を密にすることが重要です。

M&A専門会社

M&Aの実務に特化した専門家集団です。案件のマッチングから交渉、締結まで一貫したサービスを提供しています。案件の規模や業種、譲渡条件等に応じて、最適な仲介会社を選ぶことが重要です。金融機関や士業等の専門家から紹介してもらうことをおすすめします。大阪には多数の仲介会社が存在するため、比較検討することが大切です。

中小企業基盤整備機構

事業承継の支援体制構築に向けた助言や、支援機関向けの講習会を開催しています。大阪にも地方拠点があります。事業承継やM&Aに関する最新の情報を入手でき、専門家とのネットワーク構築にも役立ちます。セミナーへの参加等を通じて、支援機関の知見を得ることをおすすめします。

事業承継やM&Aは、オーナー企業にとって極めて重要な経営課題です。早めに専門家に相談し、適切な助言を得ることが成功の鍵となります。各機関の特徴を理解し、自社の状況に合った相談先を選ぶことが重要です。ワンストップ相談窓口から士業専門家まで、支援機関を上手に活用し、円滑な事業承継の実現を目指しましょう。

大阪のM&A仲介会社選びのポイント

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M&Aを実行する際、仲介会社の選定は極めて重要な意思決定となります。M&Aは、多岐にわたる専門的な知識と経験が求められる難易度の高い取引です。案件の成否は、仲介会社の力量に大きく左右されると言っても過言ではありません。それでは、数あるM&A仲介会社の中から、どのようにして自社に合ったパートナーを選べばよいのでしょうか。ここでは、大阪でM&A仲介会社を選ぶ際のポイントを解説します。

M&Aの成約実績が豊富か

M&A仲介会社の選定では、まず成約実績を確認することが重要です。豊富な成約実績は、仲介会社の専門性の高さを示す重要な指標となります。特に、自社と同規模、同業種のM&A実績があるかどうかを確認しましょう。同種案件の経験が豊富な仲介会社なら、業界特有の譲渡条件の設定や、マッチング先の選定など、案件の各フェーズで的確な助言を得られるはずです。

成約実績の確認には、仲介会社のホームページや企業パンフレットを活用するのが一般的です。ただし、守秘義務の関係で、公表されている案件情報は限定的なことが多いため、実績の詳細は直接問い合わせる必要があります。面談の際に、具体的な案件事例について説明を求めることをおすすめします。

自社の業界に精通しているか

M&Aは、業界ごとに譲渡条件や交渉の進め方が大きく異なります。自社の業界に精通した仲介会社を選ぶことで、スムーズな案件進行が期待できます。業界特有の商慣行や規制、市場動向などに通じた仲介会社なら、譲渡条件の設定や交渉戦略の立案などで、的確なアドバイスを得られるはずです。

仲介会社の業界専門性は、担当者の経歴や実績から判断することができます。自社の業界出身の担当者がいる仲介会社なら、業界事情に精通しているため、安心して案件を任せられるでしょう。面談の際は、担当者の業界知識を確認するため、自社の事業内容について質問してみるのも一案です。

M&Aの種類(買収、合併、事業譲渡など)に応じた専門性を持っているか

M&Aには、買収、合併、事業譲渡など、様々な取引形態があります。案件の種類によって、必要な専門知識やノウハウは大きく異なります。自社の目的に合ったM&Aの種類に、専門性を持つ仲介会社を選ぶことが重要です。

例えば、事業譲渡の場合は、譲渡資産の選定や評価、従業員の承継手続きなど、専門的な実務が発生します。事業譲渡の経験が豊富な仲介会社なら、実務面での的確なサポートが期待できます。一方、合併の場合は、両社の経営統合に向けた調整が重要なポイントとなります。PMI(Post Merger Integration:買収後の統合)の経験が豊富な仲介会社を選ぶことで、統合プロセスを円滑に進められるでしょう。

M&Aの種類ごとに、必要とされる専門性は異なります。自社の目的に合ったM&Aの種類を見極め、その分野に強みを持つ仲介会社を選ぶことが重要です。

成功報酬以外の手数料体系が明確か

M&A仲介会社の報酬体系は、成功報酬型が一般的です。案件が成約した場合にのみ、一定の報酬が発生する仕組みです。成功報酬の水準は、案件の規模や難易度によって異なりますが、おおむね数%から10%程度が相場と言われています。

ただし、成功報酬以外にも、様々な名目の手数料が発生するケースがあります。例えば、着手金、マッチング手数料、デューデリジェンス費用など、案件の進行に応じて徴収される手数料があります。これらの手数料体系が不明瞭な場合、想定外のコストが発生するリスクがあります。仲介会社選定の際は、成功報酬以外の手数料体系を明確に確認し、トータルコストを見積もることが重要です。

手数料体系は仲介会社によって様々です。複数の仲介会社に見積もりを取り、比較検討することをおすすめします。その際、単に手数料の安さだけでなく、サービス内容との対価も考慮することが大切です。

自社の規模や目的に合ったサービスを提供できるか

M&A仲介会社の中には、大企業向けの案件に特化したところもあれば、中小企業専門のところもあります。自社の規模や目的に合ったサービスを提供できる仲介会社を選ぶことが重要です。

例えば、中小企業のM&Aでは、スピード感を持った対応が求められます。大企業向けの仲介会社では、意思決定に時間がかかり、スケジュール管理がずれ込むリスクがあります。一方、中小企業専門の仲介会社なら、機動力を生かした柔軟な対応が期待できます。

また、自社の目的に合ったサービスメニューを提供できる仲介会社を選ぶことも重要です。例えば、事業承継を目的とするM&Aでは、譲渡後の経営サポートが重要なポイントとなります。経営支援サービスを提供する仲介会社を選ぶことで、円滑な事業引継ぎが期待できます。

自社の規模や目的に合ったサービスを提供できる仲介会社を見極めることが、M&A成功の大前提となります。仲介会社の担当者と密にコミュニケーションを取り、自社のニーズを的確に伝えることが何より大切です。

仲介会社選びは、M&Aの成否を大きく左右する重要な意思決定です。自社の規模や業種、M&Aの目的等を踏まえ、最適なパートナーを見極めることが重要です。単に手数料の安さだけでなく、専門性や経験、サービス内容など、総合的な視点から仲介会社を評価することをおすすめします。信頼できる仲介会社を選ぶことで、円滑なM&Aの実現に大きく近づくはずです。

おわりに

大阪では、事業承継が差し迫った経営課題となっています。後継者不在に悩む経営者にとって、M&Aは有力な選択肢の一つです。一方で、M&Aのプロセスは複雑で専門的な知識が求められます。事業引継ぎ支援センターなどの公的機関や、士業専門家等の支援を上手に活用することが何より重要でしょう。

本記事で解説した通り、事業承継の各ステップを着実に進め、必要に応じて専門家の助言を仰ぎながら取り組むことで、円滑なM&Aの実現が期待できます。自社の将来ビジョンをしっかりと描き、早めに行動を起こすことが重要です。

▼監修者プロフィール

岩下 岳

岩下 岳(S&G株式会社 代表取締役) S&G株式会社

新卒で日立Gr.に入社。同社の海外拠点立上げ業務等に従事。
その後、東証一部上場のM&A仲介業界最大手の日本M&Aセンターへ入社ディールマネージャーとして、複数社のM&A(株式譲渡・事業譲渡・業務提携等)支援に関与。IT、製造業、人材、小売、エンタメ、建設、飲食、ホテル、物流、不動産、サービス業、アパレル、産業廃棄物処分業等、様々な業界・業種でM&Aの支援実績を有する。現在はS&G代表として、M&Aアドバイザー、及び企業顧問に従事している。