ホワイトナイトとは?意味や買収防衛策について解説

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中小企業の経営者の皆様、事業承継に関してお悩みではありませんか。

後継者不在という問題は、多くの経営者が直面する深刻な課題です。特に、創業家出身の経営者の場合、自分の代で事業を終わらせたくないという強い思いがあるでしょう。

しかし、適切な後継者が見つからない状況では、会社の存続そのものが危ぶまれます。

そんな中、昨今では敵対的買収の脅威にさらされるケースも増えています。特に、業績不振に陥った企業や、株主構成が分散している企業は、敵対的買収のターゲットになりやすい傾向にあります。敵対的買収が成立してしまえば、長年築き上げてきた企業文化や価値観が損なわれ、従業員の雇用も脅かされかねません。

そこで今回は、敵対的買収から会社を守る手段の一つとして、「ホワイトナイト戦略」について詳しく解説します。ホワイトナイト戦略とは、敵対的買収に直面した企業が、自社に友好的な企業(ホワイトナイト)を見つけ、その企業に経営権を委ねることで、敵対的買収を回避する手法です。

この記事を読むことで、会社を守るための具体的な方策を見出すヒントになればと思います。

敵対的買収と友好的買収の違い

M&Aにおいて、買収には大きく分けて敵対的買収と友好的買収の2種類があります。敵対的買収とは、買収先企業の経営陣の同意を得ずに、株式の大量取得などを通じて買収を仕掛けることを指します。一方、友好的買収とは、買収先企業の経営陣と合意の上で進める買収のことを言います。

敵対的買収とは

敵対的買収は、買収先企業の経営権を奪取することが目的であるため、買収先企業にとっては大きな脅威となります。買収者は、経営陣の反対を押し切って買収を成立させようとするため、強引な手法を用いることもあります。例えば、公開買付け(TOB)を通じて株式を大量に取得したり、株主総会で経営陣の解任を求めたりするなどです。

特に中小企業の場合、敵対的買収によって会社の存続そのものが危ぶまれる可能性があるのです。中小企業は、大企業と比べて資本力が弱く、株主構成も分散していることが多いため、敵対的買収に対する抵抗力が低いと言えます。また、事業の専門性が高く、経営者の個人的な人脈に依存しているケースも少なくありません。そのため、敵対的買収によって経営陣が交代してしまうと、事業の継続性が損なわれる恐れがあります。

友好的買収とは

一方、友好的買収は、買収先企業の経営陣と合意の上で進めるため、買収先企業にとってはメリットが大きいと言えます。買収先企業は、自社の企業文化や価値観を尊重してくれる買収者を選ぶことができ、経営の自主性を維持しながら、事業の拡大や経営資源の獲得を図ることができるのです。

ただし、友好的買収であっても、買収先企業の経営陣が株主の利益を軽視するような判断を下す可能性はあります。そのため、株主の監視機能を働かせることが重要です。

以上のように、敵対的買収と友好的買収には大きな違いがあります。中小企業の経営者は、自社が敵対的買収のターゲットになるリスクを認識し、適切な防衛策を講じる必要があるのです。

敵対的買収から身を守るための様々な防衛策

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敵対的買収から会社を守るための防衛策には、いくつかの選択肢があります。代表的なものとしては、ポイズンピル、ゴールデンパラシュート、焦土作戦などが挙げられます。

ポイズンピル

ポイズンピルとは、敵対的買収者が株式を取得した場合に、他の株主の権利を優遇するなどの措置を取ることで、買収を困難にする手法です。具体的には、敵対的買収者以外の株主に新株予約権を付与し、敵対的買収者の株式保有比率を下げるなどの方法があります。ポイズンピルを導入することで、敵対的買収のハードルを高めることができるのです。

ゴールデンパラシュート

ゴールデンパラシュート(高額な退職金契約)は、敵対的買収成立時に経営陣が高額な退職金を受け取るという契約を結ぶことで、買収を阻止しようとする戦略です。経営陣が高額な退職金を受け取れるということは、買収者にとっては大きな負担となります。そのため、買収者は経営陣との交渉を余儀なくされ、買収を断念せざるを得なくなるのです。

焦土作戦

焦土作戦は、敵対的買収者に対して、企業価値を毀損するような行動を取ることで、買収を思いとどまらせる過激な手法です。例えば、重要な事業の売却や資産の処分、過剰な借入れなどを行い、企業価値を意図的に下げるのです。買収者は、企業価値が毀損された状態では、買収のメリットが得られないと判断し、買収を断念せざるを得なくなります。

ただし、これらの防衛策にはデメリットもあります。ポイズンピルは、株主平等の原則に反するとの指摘もあります。また、ゴールデンパラシュートは、経営陣の保身のための手段とみなされ、株主から反発を招く恐れがあります。焦土作戦に至っては、自社の企業価値を毀損するため、株主の利益を大きく損なうことになります。

そのため、これらの防衛策は、あくまでも最後の手段として位置づけるべきでしょう。日頃から、株主との対話を重ね、健全な企業統治を行うことが、敵対的買収を防ぐ最善の方法なのです。

ホワイトナイト戦略とは何か

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ホワイトナイト戦略とは、敵対的買収を仕掛けられた企業が、自社に友好的な企業(ホワイトナイト)を見つけ、その企業に株式を売却したり、経営権を委ねたりすることで、敵対的買収を回避する手法です。

ホワイトナイトは、敵対的買収者よりも魅力的な条件を提示することで、買収先企業を守ります。例えば、買収先企業の株式を高値で買い取ったり、経営陣の雇用を保証したりするなどです。

また、ホワイトナイトは、買収先企業の事業に関する知見やノウハウを提供し、事業の発展を支援することもあります。

買収先企業にとっては、ホワイトナイトの存在によって、敵対的買収者による経営権の奪取を防ぐことができます。また、ホワイトナイトとの提携によって、新たな事業機会を得たり、経営資源を強化したりすることも可能です。

ホワイトナイト戦略が有効に機能するためには、自社に友好的で、かつ十分な資金力を持つ企業をホワイトナイトとして選定することが重要です。また、敵対的買収の脅威を察知したら、速やかにホワイトナイトを探し始める必要があります。

このように、ホワイトナイト戦略は、敵対的買収に直面した企業にとって、有効な防衛策の一つと言えます。特に、中小企業の場合、大企業と比べて資本力が弱いため、ホワイトナイトの存在が重要な意味を持つのです。

中小企業でホワイトナイト戦略が必要となるケース

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中小企業にとって、ホワイトナイト戦略が特に有効な場面があります。例えば、後継者不在で事業承継に悩む企業や、業績不振に陥っている企業などです。

後継者不在の企業は、経営者の高齢化が進み、事業の先行きに不安を抱えている場合が少なくありません。そのような企業は、敵対的買収のターゲットになりやすい傾向にあります。買収者は、経営陣の交代を機に、事業の再編や資産の売却を進め、短期的な利益を得ようとするのです。

また、業績不振に陥っている企業も、敵対的買収のリスクが高いと言えます。業績の悪化によって株価が下落し、株主構成が不安定になると、買収者にとっては絶好の機会となります。買収者は、安値で株式を取得し、経営権を奪取することで、事業の再建を図ろうとするのです。

こうした企業は、自力での買収防衛が困難な場合があります。社内に十分な資金力や人材がない場合、敵対的買収者に対抗することは容易ではありません。また、株主の支持を得ることも難しいかもしれません。

そんな時、ホワイトナイト戦略を活用することで、会社の存続と従業員の雇用を守ることができるのです。ホワイトナイトは、買収先企業の事業に関する知見を持ち、長期的な視点から企業価値の向上を図ってくれます。

また、経営陣や従業員の雇用を保証することで、事業の継続性を担保してくれるのです。

ただし、ホワイトナイトの選定には注意が必要です。自社の企業文化や価値観を理解し、尊重してくれる企業を選ぶことが大切です。安易なホワイトナイト選びは、かえって企業価値を毀損する恐れがあります。

また、ホワイトナイトとの関係構築には時間がかかるため、日頃から準備を進めておく必要があります。

経営者は、自社の事業や経営課題について、オープンに情報発信することが重要です。そうすることで、潜在的なホワイトナイト候補とのコミュニケーションが深まり、いざという時に連携しやすくなるのです。

ホワイトナイト対象企業の選定はどうすればいい?

ホワイトナイトを選ぶ際には、以下のような点に注意しましょう。

    • 自社の事業内容や企業文化を理解している企業であること
    • 敵対的買収者に対抗できるだけの資金力を持っていること
    • 自社の経営陣や従業員を尊重し、協力的な姿勢を示していること
    • 長期的な視点で自社の成長を支援してくれること

まず、ホワイトナイトには、自社の事業内容や企業文化を深く理解している企業が望ましいと言えます。自社の強みや弱み、経営課題などを共有し、適切なアドバイスをもらえる企業でなければなりません。特に、中小企業の場合、事業の専門性が高く、経営者の個人的な資質に依存している部分が大きいため、それらを理解してくれる企業であることが重要です。

次に、ホワイトナイトには、敵対的買収者に対抗できるだけの資金力が求められます。敵対的買収者は、大量の資金を投じて株式を買い集めるため、それに対抗するには、ホワイトナイトにも一定の資金力が必要不可欠です。特に、買収防衛策として株式の買い取りを行う場合、多額の資金が必要となります。

また、ホワイトナイトには、自社の経営陣や従業員を尊重し、協力的な姿勢を示してくれることが求められます。敵対的買収が成立した場合、経営陣の交代や従業員の解雇など、大きな変革が予想されます。そのような事態を避けるためにも、ホワイトナイトには、現経営陣との信頼関係を構築し、従業員の雇用を守っていく姿勢が必要です。

さらに、ホワイトナイトには、自社の長期的な成長を支援してくれることが期待されます。単に敵対的買収を回避するだけでなく、自社の事業基盤を強化し、企業価値を高めていくことが重要だからです。ホワイトナイトには、自社の事業戦略に対する助言や、経営資源の提供などを通じて、自社の成長を後押ししてくれることが求められます。

こうした条件を満たすホワイトナイトを見つけるために、日頃から潜在的な候補企業との関係構築に努めることが大切です。例えば、業界団体や経済団体の活動に積極的に参加し、他社経営者とのネットワークを広げることが有効でしょう。また、金融機関や専門家(弁護士、会計士など)との連携を深め、M&Aに関する情報収集や助言を求めることも重要です。

加えて、自社の企業価値を高める経営努力を怠らないことも大切です。財務体質の改善や、競争力のある製品・サービスの開発、優秀な人材の確保など、日々の経営の積み重ねが、ホワイトナイトからの信頼を獲得することにつながります。

買収防衛策としてのホワイトナイト

ホワイトナイト戦略は、単独でも強力な買収防衛策となりますが、他の防衛策と組み合わせることで、より強固な防衛網を張ることができます。

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例えば、ポイズンピルやゴールデンパラシュートと併用することで、敵対的買収者への抵抗力を高められます。ポイズンピルによって買収コストを引き上げ、ゴールデンパラシュートによって経営陣の交代を困難にすることで、敵対的買収者の手を縛ることができるのです。

また、自社株買いなどの資本政策と組み合わせることで、株主構成を安定化させる効果も期待できるでしょう。自社株買いを行うことで、敵対的買収者による株式の取得を防ぐことができます。さらに、ホワイトナイトに株式を売却することで、友好的な株主を増やすこともできるのです。

ただし、ホワイトナイト戦略にも注意点があります。まず、ホワイトナイトとの関係構築には時間がかかるため、早期の準備が欠かせません。敵対的買収の脅威が差し迫った時点では、時既に遅しということにもなりかねません。

また、ホワイトナイトへの依存が高まることで、経営の自主性が損なわれる可能性もあります。ホワイトナイトの意向を尊重するあまり、自社の独自性を失ってしまっては本末転倒です。

さらに、ホワイトナイト戦略は、株主平等の原則に反するとの指摘もあります。特定の株主(ホワイトナイト)に特別な利益を提供することで、他の株主の利益を損なう恐れがあるのです。

そのため、ホワイトナイト戦略を採用する際には、他の買収防衛策とのバランスを考慮し、株主の理解を得ることが重要となります。法律や財務、M&Aの専門家の助言を仰ぎ、適切な判断を下すことが求められるでしょう。

事業承継とホワイトナイト戦略

事業承継は、多くの中小企業が直面する課題です。特に、後継者不在の状況では、会社の存続そのものが危ぶまれます。

経営者の高齢化が進む中、事業を引き継ぐ適切な後継者を見つけることは容易ではありません。社内に有望な人材がいない場合、社外から後継者を招聘することも選択肢の一つですが、それには時間も費用もかかります。

また、後継者が決まったとしても、スムーズな事業承継を実現するには、様々な準備が必要です。後継者の育成はもちろん、株式の承継や資産の分配、税務対策など、幅広い課題に取り組まなければなりません。

そんな時、ホワイトナイト戦略を事業承継の一環として活用することも一案です。友好的な企業に経営権を委ねることで、会社の存続と従業員の雇用を守ることができます。

例えば、同業他社や取引先など、自社の事業に理解のある企業をホワイトナイトとして選定することが考えられます。そのような企業であれば、自社の事業基盤を引き継ぎ、発展させてくれることが期待できます。

また、ホワイトナイトには、後継者の育成を支援してもらうことも可能です。ホワイトナイトの経営陣が、後継者に対して指導・助言を行うことで、円滑な事業承継を実現できるかもしれません。

ただし、事業承継としてのホワイトナイト戦略には、慎重な検討が必要です。自社の企業文化や価値観を尊重してくれるホワイトナイトを選ぶことが大切です。安易なホワイトナイト選びは、かえって従業員の士気を低下させ、事業の継続性を損なう恐れがあります。

また、経営権の移転に伴う様々な調整にも気を配らなければなりません。株式の評価や承継方法、役員の処遇など、ホワイトナイトとの間で綿密な協議が求められます。

加えて、事業承継の際には、株主や従業員、取引先など、ステークホルダーへの説明責任も生じます。ホワイトナイト戦略の意義や目的を丁寧に説明し、理解を得ることが重要です。

以上のように、事業承継としてのホワイトナイト戦略には、メリットとデメリットがあります。経営者は、自社の置かれた状況を冷静に分析し、専門家の助言を仰ぎながら、最善の選択を行う必要があるのです。

ホワイトナイト戦略を成功させるために

ホワイトナイト戦略を成功させるためには、日頃からの備えが欠かせません。具体的には、以下のような取り組みが重要です。

    • 潜在的なホワイトナイト候補との関係構築
    • 自社の企業価値を高める経営努力
    • 法律や財務、M&Aの専門家の助言を求める
    • 敵対的買収のリスクを常に意識し、早期の対応を心がける

まず、潜在的なホワイトナイト候補との関係構築が重要です。日頃から、同業他社や取引先、金融機関など、自社に友好的な企業との交流を深めておくことが求められます。そのためには、経営者自らが積極的にネットワーキングに取り組む必要があるでしょう。

次に、自社の企業価値を高める経営努力も欠かせません。財務体質の強化や、独自の技術・ノウハウの開発、優秀な人材の確保など、日々の経営の積み重ねが、ホワイトナイトからの信頼を獲得することにつながります。

さらに、法律や財務、M&Aの専門家の助言を求めることも重要です。ホワイトナイト戦略の実行には、様々な法的・財務的な課題が伴います。専門家の知見を活用することで、リスクを最小化し、円滑な実行を図ることができるのです。

加えて、敵対的買収のリスクを常に意識し、早期の対応を心がけることも大切です。経営環境の変化や、自社株の異常な取引など、敵対的買収の兆候を見逃さないよう注意を払う必要があります。リスクを察知したら、速やかにホワイトナイト候補との協議を開始するなど、迅速な行動が求められます。

また、ホワイトナイト戦略の実行には、経営者の強いリーダーシップが不可欠です。ホワイトナイトとの交渉や、社内外への説明など、難しい局面が予想されます。経営者は、自社の将来像を明確に示し、ステークホルダーを説得することが求められるのです。

以上のように、ホワイトナイト戦略の成功には、日頃からの地道な準備と、経営者の強いリーダーシップが欠かせません。中小企業の経営者は、ホワイトナイト戦略をいざという時の切り札として認識し、平時から万全の備えを進めておくことが重要なのです。

まとめ

ホワイトナイト戦略は、敵対的買収という危機に立ち向かう経営者の強力な武器です。適切なホワイトナイトの選定と迅速な実行、そして強いリーダーシップが成功の鍵を握ります。

ただし、ホワイトナイト戦略にも注意点があります。安易な導入は、かえって企業価値を毀損する恐れがあるのです。M&Aの専門家や金融機関などの助言を求めつつ、慎重に検討することが大切でしょう。

また、ホワイトナイト戦略は万能の解決策ではありません。あくまでも経営戦略の一つとして位置づけ、他の施策とのバランスを考慮する必要があります。

中小企業の経営者の皆様、ホワイトナイト戦略を視野に入れつつ、日頃からM&Aの活用やリスクマネジメントにも取り組んでください。そうした備えが、いざという時の強い武器になるはずです。

特に、事業承継に悩む経営者にとって、ホワイトナイト戦略は有力な選択肢の一つとなります。後継者不在の状況でも、ホワイトナイトとの提携によって、会社の存続と従業員の雇用を守ることができるのです。

ただし、事業承継としてのホワイトナイト戦略には、慎重な検討が必要です。自社の企業文化や価値観を尊重してくれるホワイトナイトを選ぶとともに、株主や従業員など、ステークホルダーへの説明責任も果たさなければなりません。

この記事が、敵対的買収の脅威に立ち向かう経営者の皆様の一助となれば幸いです。会社と従業員の未来を守るために、ホワイトナイト戦略を経営の選択肢の一つとしてご検討ください。

▼監修者プロフィール

岩下 岳

岩下 岳(S&G株式会社 代表取締役) S&G株式会社

新卒で日立Gr.に入社。同社の海外拠点立上げ業務等に従事。
その後、東証一部上場のM&A仲介業界最大手の日本M&Aセンターへ入社ディールマネージャーとして、複数社のM&A(株式譲渡・事業譲渡・業務提携等)支援に関与。IT、製造業、人材、小売、エンタメ、建設、飲食、ホテル、物流、不動産、サービス業、アパレル、産業廃棄物処分業等、様々な業界・業種でM&Aの支援実績を有する。現在はS&G代表として、M&Aアドバイザー、及び企業顧問に従事している。