会社の身売り(M&A)とはどのような意味?メリット・デメリットや社員への影響を解説

「会社の身売りとはどのような意味なの?」「会社の身売りにはどのようなメリット・デメリットがあるの?」というように、会社の身売りについて詳しく知りたい人は多いことでしょう。

会社の身売りとはM&Aのことであり、さまざまなメリットやデメリットがあります。

本記事では会社の身売りとは何か、どのようなメリット・デメリットがあるのか、社員へ影響あるのかについて解説します。会社の身売りについて詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

会社の身売り(M&A)とはどのような意味?

会社の身売りとはM&Aのことであり、会社の合併・買収です。M&Aが活発に行われていない頃には、M&Aとは呼ばずに「会社の身売り」と表現されていました。

会社の身売りを実行すると、株式譲渡が行われて経営権が買収企業に移ります。合併まで行うと買収した会社が買収された会社を買収して吸収し、吸収された会社は法人格を失って消滅します。

会社の身売りをする目的はさまざまであり、主に次のような目的で実行されます。

    • 創業者の利益確保
    • 事業の改善
    • 後継者不在の解消
    • 廃業費用の削減

このようにさまざま目的を達成できることから、会社の身売りが実行されています。

会社の身売り(M&A)をする7つのメリット

会社の身売りには、次のような7つのメリットがあります。

    • 株式や事業の譲渡益が得られる
    • 個人保証などの債務が解消できる
    • 事業承継できる
    • 事業の発展が見込める
    • 廃業の費用を払わなくてもいい
    • 名声が得られる
    • 社員を守れる

会社の身売りを実行するとどのような恩恵が受けられるか確認し、身売りを行うのか検討していきましょう。

株式や事業の譲渡益が得られる

会社を身売りすると、株式や事業の譲渡益が得られます。

会社の身売りには買収がともなうため、株式や事業の譲渡益が発生します。会社規模が大きかったり、会社価値が高かったりする場合、高額な事業譲渡益を得ることも可能です。経営者が株式を保有している場合、株式の譲渡益が得られます。

会社の身売りで手に入れられる金銭は高額になるケースもあり、経営者引退と同時に身売りすることで老後の資金の確保が可能です。また、新たな事業を考えている場合、次の事業の資金としても使えます。

個人保証などの債務が解消できる

会社の身売りに成功すると、個人保証などの債務の解消が可能です。

金融機関が会社に融資する際には、会社だけでなく経営者の個人保証を求めてくる場合があります。会社が融資を返済できなくなった場合、個人保証を付けておけば、回収できる金額が多くなるからです。

経営者であり続ける限り個人保証も続きますが、会社の身売りを実行し経営者という立場から離れられれば個人保証を解消できます。

事業承継できる

会社の身売りをすれば、事業承継できて後継者不在を解消できます。

小規模事業者や中小企業では、後継者不在に悩んでいる経営者も多くいます。後継者不在のままでは会社を廃業させるしかなくなりますが、会社を身売りすることで第三者に事業承継することが可能です。

会社の身売りに成功すれば、会社を存続させて技術やノウハウなどを継承していってほしいという願いが叶います。

事業の発展が見込める

会社の身売りをすると、事業の発展が見込めます。

買手は自社事業の発展のため、シナジー効果が高い会社を買収します。シナジー効果が高ければ、身売りした会社の事業もより発展していくことが見込まれるわけです。

会社の合併による経営方針の変化により事業発展のスピードが上がることや、経営資源が増加することも期待できます。

事業の発展は社員の待遇改善にもつながるため、会社の身売りのメリットといえます。

廃業の費用を払わなくてもいい

廃業せずに会社の身売りをすると、廃業費用を払う必要がなくなります。

会社を廃業するには、次のように清算のための費用がかかります。

    • 登録免許税
    • 官報公告費用
    • 司法書士や税理士への報酬
    • 手続きに必要な書類の取得費用 など

会社の身売りをすることで、廃業に関する費用を払わなくて済みます。

また、会社が保有する資産の特殊性が高い場合、なかなか売却できないケースもありますが、会社を身売りすればすべての資産を含めた買収ができる可能性があります。

名声が得られる

会社の身売りに成功すると、経営者としての名声が得られます。

近年は会社の身売りの件数が増えてきており、身売りというマイナスなイメージが払拭されてきています。そのため、会社価値を一定以上にしたという、プラスのイメージが付くようになってきました。

プラスのイメージが付くことで、身売りに成功した経営者はステータスを有することができます。

ステータスは新たな事業を起こすときなど有利に働くため、名声が得られることも身売りのメリットといえます。

社員を守れる

会社の身売りを実行することで、社員の雇用を守れます。

後継者不在や業績低迷などにより会社を廃業することになってしまうと、社員のリストラをしなければなりません。

しかし、会社の身売りを行うと、株式譲渡が行われて買収する会社は買収される会社の権利義務を引き継ぎます。社員の雇用も権利義務に該当し、会社の身売りにともなう解雇は行われません。

会社の身売りをすれば社員の雇用が守られるため、社員にとってもメリットがあります。

会社の身売り(M&A)をする5つのデメリットや注意点

会社の身売りには、次のような5つのデメリットや注意点があります。

    • ロックアップの期間が発生する
    • 競業避止義務が発生する
    • 債務が残るケースもある
    • 社員・取引先に影響を与える
    • 他人から非難されるおそれもある

会社の身売りには多くのメリットがあるもののデメリットも存在するため、実行するときにはデメリットも考慮しておきましょう。

ロックアップの期間が発生する

会社の身売りをするときには、ロックアップの期間が発生することがあります。

ロックアップとはキーマン条項ともいわれ、M&A実行後も一定期間、消滅会社の経営者が買手会社に残って事業へ参画する取り決めです。

会社の身売りをし、すぐに引退したいと考える人がいるかもしれません。しかし、買手の会社からしてみれば、M&A直後から事業を安定させたいはずであり、消滅会社の経営者が残った方がスムーズな事業展開に移行できます。M&Aの契約条項にロックアップを定めておき、消滅会社の経営陣を一定期間在籍させます。

ロックアップの期間は2年~3年で設定されることが多いため、会社の身売りを実行しても数年は事業を行う必要があると考えておくといいでしょう。

競業避止義務が発生する

会社の身売りをする際には、競業避止義務を守らなければなりません。

競業避止義務とは、身売りした会社と同じ事業を20年間、譲渡した会社が所在していた市町村とその隣接市町村で行ってはいけないというものです。競業避止義務は、会社法第21条で定められている法的義務です。

会社の身売りを実行した資金で新たな事業を起こそうと考えている人は、譲渡した会社と同一の事業が長期間できないことには注意しましょう。

債務が残るケースもある

会社に身売りをしたとしても、債務が残るケースもあります。

会社の身売りでは買手会社が権利義務を引き継ぎ、原則すべての債務の解消が可能です。しかし、債務があまりに大きい場合や、慢性的な赤字体質の会社である場合などでは、一部の債務を引き受けないことを条件としてくるケースがあります。

また、会社全体の身売りではなく、一部事業の身売りである場合、身売りする事業に関連する債務しか引き継いでくれません。事業のみの身売りであれば経営者もそのまま残ることになり、個人保証の解消ができないことには注意しましょう。

社員・取引先に影響を与える

会社の身売りをすると、社員や取引先に悪い影響を与えるおそれがあります。

会社を身売りした場合、業績の改善が見込まれる反面、合併したことで業績が悪化する可能性も考慮しなければなりません。業績が悪化してしまうと、待遇に悪い影響を与えてしまいます。

仮に待遇に変化がなかったとしても、社員や取引先はいつ変化が起きるかが気になってしまい、モチベーションが低下してしまうかもしれません。

会社の身売りを実行する場合、社員や取引先に少なからず影響を与えると考えておきましょう。

他人から非難されるおそれもある

会社の身売りを実行すると、他人から非難されるケースがあります。

会社の身売りに対するイメージは変化してきているものの、いまだ身売りをマイナスなイメージで捉えている人がいます。会社の身売りは経営者に譲渡益が入って引退し、社員はそのまま会社に残るというイメージがあるからです。

とくに伝統的な会社を身売りした場合や、合併後に存続会社の業績が悪化した場合は非難が強くなる傾向があります。

会社の身売り(M&A)が社員に与える影響

会社の身売りが、社員に与える影響について知っておくべきことは次のとおりです。

    • 雇用契約の維持に大きな影響はない
    • 待遇面では改善されるケースもある

会社の身売りを実行するときには、まず社員への影響を考慮しなければなりません。身売りが社員にどのような影響を与えるのかみていきましょう。

雇用契約の維持に大きな影響はない

会社の身売りをしても、社員の雇用契約維持には大きな影響はありません。

買手会社は、買収される会社の権利義務を承継します。社員の雇用契約は、会社と社員の契約であり、労働力の提供への対価の支払い、労働力の提供など権利義務がお互いに発生しています。そのため、消滅会社と社員の雇用契約は、買手会社に引き継ぐことができるわけです。

会社の身売りを実行しても、社員の雇用には大きな影響を与えないと考えておけばいいでしょう。

ただし、事業譲渡の場合、事業を譲り受けた法人は従業員と再度雇用契約の締結が必要であるため、雇用が守られるかわからないケースがあることには注意が必要です。

待遇面では改善されるケースもある

会社の身売りを行うと、社員の待遇面に変化が起きる可能性もあります。

合併した効果で業績が改善した場合、社員の待遇がよくなるケースもあります。また、コンプライアンスのしっかりした会社に買収されれば、仕事環境が改善されることもあるでしょう。

ただし、合併後に業績が悪化してしまった場合は、待遇が悪くなるおそれがあります。雇用契約は維持されるものの、待遇の変化が起こる可能性があることには注意しなければなりません。

会社の身売り(M&A)を成功させるポイント

会社の身売りを成功させるポイントは、次のとおりです。

    • 自社の強みを洗い出し適当な買手を見つける
    • 社員に丁寧な説明を繰り返し行う
    • M&Aの専門家に相談する

会社の身売りは必ず成功するものではないため、成功するポイントを理解し実行していくことが大切です。

自社の強みを洗い出し適当な買手を見つける

会社の身売りをするときには、自社の強みを洗い出して適当な買手を見つけることが大切です。

会社の身売りをする際には、買手に自社の強みをアピールして正当な評価を受ける必要があります。しかし、自社の強みを知らなかったり、ブラッシュアップしていなかったりすると正当な評価を受けられません。

企業価値が高いと認識してもらえれば、買収の価格が上昇するだけでなく、M&A契約の交渉がスムーズに進みます。

社員に丁寧な説明を繰り返し行う

会社の身売りを実行する際には、社員に対して丁寧な説明を繰り返し行いましょう。

会社の身売りに対してマイナスなイメージをもつ社員、悪い影響がないか心配する社員は少なからずいます。会社の身売りについての知識がなく、身売りイコール解雇の可能性があると考える社員もいることでしょう。

社員のモチベーションは業績に影響を与えるため、不安を取り除くよう丁寧な説明をしなければなりません。また、丁寧な説明をしてもすぐに理解できるとは限らないと考え、繰り返し説明することが大切です。

社員にとって雇用や待遇は生活にかかわることであり、簡単に不安を取り除くのは難しいと考えておくべきです。

M&Aの専門家に相談する

会社の身売りをする場合、必ずM&Aの専門家に相談しましょう。

会社の身売りは準備をする段階から、税金や会計、企業評価方法など高度な知識が必要です。必要な知識を有していないと、会社の身売りの準備を開始することもできません。

また、売手会社はM&Aに必要な知識が乏しく、買手会社に有利な内容で進んでしまうケースもあります。

会社の身売りに失敗しないためにも、M&Aの専門家に相談しながら進めていくことが大切です。

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会社の身売りとはM&Aでありメリットやデメリットがある

会社の身売りとはM&Aのことであり、会社の合併・買収です。

会社の身売りは事業の発展や後継者不在を解決する方法で、会社を売却することで譲渡益を得られるメリットがあります。

しかし、会社の身売りは社員へ悪い影響を与えてしまうおそれがある、他人から非難されるケースがあるなどデメリットもあります。

また、会社の身売りをするには多くの手続きがあり、専門的な知識が必要です。会社の身売りをする際には、必ずM&Aの専門家に相談してから進めていきましょう。

専門家に相談すればデメリットを解消した上で、スムーズな会社の身売りが実現できます。

ディスクリプション

身売りとはどのような意味かわからない人は多いことでしょう。身売りとはM&Aのことを指します。身売りは悪いイメージがあるものの、メリットも多くあります。どのような手法なのか理解し事業承継をスムーズに進めていきましょう。

▼監修者プロフィール

岩下 岳

岩下 岳(S&G株式会社 代表取締役) S&G株式会社

新卒で日立Gr.に入社。同社の海外拠点立上げ業務等に従事。
その後、東証一部上場のM&A仲介業界最大手の日本M&Aセンターへ入社ディールマネージャーとして、複数社のM&A(株式譲渡・事業譲渡・業務提携等)支援に関与。IT、製造業、人材、小売、エンタメ、建設、飲食、ホテル、物流、不動産、サービス業、アパレル、産業廃棄物処分業等、様々な業界・業種でM&Aの支援実績を有する。現在はS&G代表として、M&Aアドバイザー、及び企業顧問に従事している。